【イベントレポート】
新規事業開発に立ちはだかる「5つの壁」とは?
石川明さん『新規事業ワークブック』発売記念


新規事業担当者に任命されたものの、企画をたてるのも、社内で承認にこぎ着けるのも一苦労。どうすれば新規事業をスピーディーに発案し、立ち上げることができるのか? こうした問いに答え、新規事業担当者にとって強い味方となってくれるのが『新規事業ワークブック』(総合法令出版)です。

今回は、こちらの書籍の発売を記念して開催した「新規事業立ち上げワークショップ」の模様をレポートします。講師は『新規事業ワークブック』の著者で、株式会社インキュベータ代表取締役の石川明さん。モデレーターは新規事業創造のコンサルティングや研修をおこなっている、ミレニアムパートナーズ代表取締役の秦充洋さんです。
第1部では、本書の中でも特に大事な「新規事業開発でつまずきやすいポイント」と、その乗り越え方を、石川さんに解説していきただきました。そして第2部では、参加者がグループになって、新規事業の課題とそれに対する工夫をディスカッションし、最後にQ&Aセッションで石川さん、秦さんが参加者の悩みに回答していきました。

第1部:講演 石川さん直伝、新規事業を成功に導くためのポイント

リクルートで1000件もの新規事業案に携わり、自らも「All About」創業メンバーとして事業運営に携わってきた、まさに新規事業創出のプロフェッショナルである石川さん。これまで100社、1700案件、3500人の社内起業立案者たちに伴走されてきました。
新規事業を生み出していこうと孤軍奮闘している方を応援したい。そんな思いから『新規事業ワークブック』を執筆されたそうです。前半の講演では、組織の中で事業の企画を通していくためのコツを「ここまで紹介していいの?」と思ってしまうくらい、惜しみなく紹介してくださいました。

新規事業ワークブック
新規事業ワークブック
石川 明 著
総合法令出版
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新規事業ワークブック
新規事業ワークブック
著者
石川 明 著
出版社
総合法令出版
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石川さん:ビジネススクールで新規事業の授業を担当しているのですが、卒業生を見ていると、新規事業の立ち上げがうまくいく人と、なかなか難航してしまう人がいるんです。その差は、社内で事業の企画を通す突破力があるかどうか、だと思います。いくら戦略論を取り入れても、それだけでは社内のしがらみを越えて企画を通すのは難しいですよね。
そこで、実際に企画を通すには、新規事業開発のどこでつまずくのか、それをどう乗り越えるのかを知っておく必要があります。


新規事業開発の壁は次の5つです。
(1)着想の壁:何から着想して、どういう方向へ検討していけばいいのか、最初の一歩が踏み出せない。
(2)商機の壁:自社の経営課題や市場のマクロデータの分析にばかり時間をかけ、新たな商機を発見できない。
(3)アイデアの壁:具体的な良い事業アイデアが思いつかない。
(4)承認の壁:新規事業が既存事業と競合するケースも多く、事業化を承認してもらえない。
(5)実現の壁:事業化を実現するのが難しい。


起案者目線のアドバイスを大事にする石川さん。

では、これら5つの壁を乗り越えるための「武器」は何なのでしょうか。


石川さん:まず、(1)着想の壁を越えるには、経営者と直に話して、検討の範囲を絞っていくことが大事です。経営者自身、新規事業を立ち上げる必要性を感じているものの、どんな事業を始めるべきか計りかねているケースも多いですから。対話を重ねながら、経営者の考えや想いを掘り起こしていく。そこから、フェアウェイ(検討できる範囲)、OBゾーン(これは自社ではありえないという範囲)、そして制約条件を少しずつ言語化していくのです。こうしたことも起案者の大事な仕事の一つなんですよ。

そして、(2)商機の壁を越え、(3)アイデアの壁に対処するための秘訣があります。それは「国語・算数・理科・社会」の教科になぞらえて、アイデアを出すという4段階の思考プロセス。
各教科が何を指すかというと、国語は「いつ、誰が、どんな『不』を抱えているかを洗い出す」、算数は「『不』の大きさを体積で捉える」、理科は「『不』が生じている理由を分析する」、そして社会は「『不』が存在する背景を理解する」、ということを意味します。実はこの順番がミソなんです!
アイデアを考えるときに多くの人は「算数」から始めてしまいがちです。例えば「日本の高齢者人口はこれから何千万人になる……」などど、外部環境に関する数字やデータを列挙するとか。ですが、それでは具体的なビジネスチャンスがその中のどこにあるのかがわからず、事業のフォーカスを絞りにくくなります。だからこそ、こうしたマクロな話に着目する前にまず、国語にあたる、より身近な「小さな『不』」を見つけ出しておくことが、大事なんですよ。

次に(4)承認の壁を越えるためには、既存事業を「起点」にしておいたほうがいいですね。「なぜこの領域で新たに事業化を考えるべきなのか」を周囲に納得してもらうには、既存事業と関連させて説明したほうが合意を得やすいからです。
最後に(5)実現の壁を越えるには、「最大のエネルギーを注力できるテーマを見つける」ことが必要です。そのうえで、自社のビジョンとの整合性をとって、自社の強みや得意分野を活かすこと。自分の想いを込められるテーマを選び「何が何でも実現するぞ」という強い気持ちを持てば、それが強いエネルギーになってくれます。

そのほか、「事業企画書の構成は、読み手が知りたいと思う順番で!」、「企画をプレゼンするときには、決済のステップを細かく分けて、何の『承認』を取るかを具体化する」といった、経験に裏打ちされたアドバイスをご紹介いただきました。

第2部:ワークショップ

つづいて第2部では、新規事業開発における悩みを解決するために参加者各自が工夫していることを共有しあうワークショップを行いました。
モデレーター秦さんの進行のもと、「新しいことを社内で起案しようとしたときに、どんなことが具体的な壁になるか」、「こうした壁を乗り越えるために、どんな工夫や努力をしているのか」という2つのお題に対し、白熱したディスカッションが繰り広げられました。

異なる業種の人同士で悩みを共有することが大事だと話す秦さん。

その後は、数々のアイデアの中から「ぜひ紹介したい」というものを全体で共有。みなさんの表情は真剣そのものです。

最後は参加者の質問に、石川さんと秦さんが答えていくQ&Aへ。その一部をご紹介します。


参加者:「自由に企画を考えていい」と言われても、自社のビジョンにあっているか、収益性が見込めるか、などクリアすべきポイントが多数ある気がします。そんな中、どのように事業のテーマを決めていけばいいのでしょう?


石川さん:経営者とどういうポイントを重視して進めていくのかを、すり合わせていくことが必要です。会社によって、企画を通すうえでの「クセ」があるんです。例えば、手堅い会社なら、大胆な構想を語るよりも、既存事業の内容の「5W2H」のうち一つだけ変えてみると、通りやすい。「5W2H」とは「誰が購入者か(Who)、いつ売れるか(When)」といった項目を指します。(詳細は『新規事業ワークブック』の「5W2H展開法」に紹介されています。)
ビジョンが重視される会社なら、「わが社はこういうことを大事にする会社ですよね!」と、社長に情熱で攻めるといいかもしれません。


秦さん:「起案者が『なぜこの企画をやりたいのか』という思いをしっかり持つことも大事ですが、お客さんとやり取りするなかで『それぜひやってほしい!』と要望をもらったりすると、より使命感が湧き上がって説得力が増す、ということがあります。大事なのはお客さんの支持が得られるかどうか。だから、企画の種をお客さんにぶつけてみて、具体化していくのもいいですね。


参加者:自分がやりたい企画なので、お客さんにヒアリングに行っても、こちらの望む方向に回答を無意識に誘導しがち。お客さんからリアルなニーズをつかむには?


石川さん:大事なのは主観よりも「ファクト」を集めること。試作品を見せて「これを買いますか?」とお客さんに尋ねても、差しさわりない答えしか返ってこない可能性が高いですが、行動は嘘をつかないですから。例えばお客さんが実際に「直近の1か月で何をどれくらいの頻度で購入したか」といった事実を積み上げて、「こういうニーズがある」という仮説を立てたほうがいいですね。


秦さん:お客さんへのヒアリング内容が信頼できるものかどうかをチェックするには、次の4点を聞くとよいですよ。ある商品やサービスを使うようになった「過去の経緯」、今後これをどう使っていくかという「今後の展開」、これがあなたにとってどんな意味があるのかという「意義・重要度」、そしてどんな風に使っているかという「具体例」。この4点を聞くとその企画が本当にニーズのあるものなのかが見えてきます。



その後も「最適なチーム人数はどれくらいか?」、「IoTで新規事業を考えてくれと言われたらどうするか」など、石川さん、秦さんに熱心に質問する参加者が続出でした。

心に残ったのは、実現の壁を突破していくために「最大のエネルギーを注力できるテーマを見つけよう」というお話。志や信念に沿った事業なら、どんな難局につきあたっても、周囲の人の協力を得たり軌道修正したりしながら、実現に向けて歩を進められる――。そんな風に鼓舞されるワークショップでした。

フライヤーでは今後もさまざまなワークショップ、読書会を開催予定です。開催スケジュールはフライヤーのFacebookページ(https://www.facebook.com/flierinc/)をご覧ください。フライヤーのPeatix(http://flierinc.peatix.com/)もフォローしてみてくださいね。

新規事業ワークブック
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石川 明 著
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★要約は近日公開★

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石川 明(いしかわ・あきら)さん

新規事業インキュベータ

株式会社インキュベータ 代表取締役

1988年上智大学文学部社会学科卒業後、リクルート社で7年間、新規事業開発室のマネジャーを務め、リクルート社の起業風土の象徴である社内起業提案制度「New-RING」の事務局として1,000件の事業案に携わる。2000年にリクルート社社員として「All About」社を創業し、2005年JASDAQに上場。10年間にわたり事業企画・事業運営の責任者を務める。2010年に独立し、大手企業を中心に、新規事業の創出、新規事業を生み出すボトムアップの仕組みづくり、創造型人材の育成に携わっている。リクルート社時代も含め、これまで携わってきた新規事業・企業内起業家は、100社、1,700案件、3,500人。早稲田大学ビジネススクール研究センター特別研究員、SBI大学院大学MBAコース客員准教授。著書に『はじめての社内起業』(ユーキャン)がある。



秦 充洋(はた・みつひろ)さん

株式会社ミレニアムパートナーズ 代表取締役 パートナー

ボストン コンサルティング グループ(BCG)にて既存事業の見直し、新規事業、人事組織戦略、M&A などプロジェクトマネジャーとして多岐にわたるプロジェクトを指揮する。また、医療従事者向け 情報サービス 株式会社ケアネットを共同で創業し、東証マザーズ上場。2006年に株式会社ミレニアムパートナーズを設立し、代表取締役パートナーに就任。事業開発分野における第一人者として、 体系化されたノウハウに基づいた実践的なアプローチで多くの企業や組織、起業家を支援している。 日経BP「新規事業創造塾」「中計塾」での講師実績をはじめ、大手企業の事業部門や研究開発部門 などへのコンサルティングおよび研修実績多数。またグロービス経営大学院講師を経て、現在は一橋大学大学院MBAコース(HMBA)講師。著書に『プロ直伝!成功する事業計画書のつくり方』(ナツメ社)。一橋大学商学部卒業。

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文責:松尾 美里 (2017/05/15)

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