【イベントレポート】
会社で「茹でガエル」にならないための一流マネジャーの心得
西岡塾塾長 西岡郁夫× ユーザベース社長 新野良介

一流マネジャーをめざすミドルマネジャーの必読書、『一流マネジャーの仕事の哲学 突き抜ける結果を出すための53の具体策』(日経BP社)。この本の出版を記念して、著者である西岡 郁夫さんとイベントを開催しました。

西岡さんは、シャープでノートパソコンの開発を指揮し、インテル元CEOのアンディ・グローブ氏に乞われてインテルジャパンを率いた、日本のパソコン市場開拓の立役者。現在は、マネジャー候補の方をイノベーティブなミドルに育てる、西岡塾の塾長も務めています。

第一部は西岡さんによる講演。つづく第二部では、NewsPicks、SPEEDAなどの急成長サービスを運営、昨年東証マザーズに上場した、株式会社ユーザベースの代表取締役社長(共同経営者) 新野良介さんも登壇。西岡さんとの対談から明らかになった一流マネジャーとしての心得とは? イベントの様子をお届けします!

一流マネジャーの仕事の哲学
一流マネジャーの仕事の哲学
著者
西岡 郁夫
出版社
日経BP社

みなさん、「茹でガエル」になってませんか?

一人ひとりの目を至近距離からじっと見て話すのが西岡流の講演スタイル

第一部、西岡さんの講演はいまのミドルマネジャーに対する課題意識について語るところから始まります。

西岡:本来、組織を明るく引っ張っていくはずのミドル層、特に大企業に勤める人たちの元気がない。思考停止のままパソコンの前に座っている、茹でガエルのようになっている人がなんと多いことか。上司がそんな様子では部下も安心してついてきてくれません。

では、自分が「茹でガエル」になっているかどうかはどのようにチェックすればいいのか。西岡さんは会場に向けてこんなニュースを紹介します。

西岡:Amazonは2015年にはシアトルに本のリアル店舗Amazon Booksをオープンさせました。2017年6月には生鮮食料品スーパーWhole Foods Marketを買収する計画を発表しています。この2つのニュースから、ジェフ・ベゾスの狙いは何だと推測できるか?

Whole Foods Marketの買収価格は137億ドル(約1兆5,000億円)で、これはAmazonの財務的にみても実験では済まないレベル。ひょっとしたらシアトルの店舗は実店舗活用の試金石で、今回の買収をもってジェフはいよいよ本気で勝負を挑んでこようとしているんじゃないか。最近、Amazonフレッシュという生鮮食品の配達を始めたのは、Whole Foods Marketの買収によって倉庫ではなくスーパーマーケットから食材を直接消費者の元へ届けることを構想していたからかもしれない。

こうした私の仮説が正しいかはさておき、イノベーティブな発想をしたいなら、一つのニュースや情報から、こんな風に背景や今後の動向まで想像してみることが大事。いま、電車で見かけるのはスマホをいじっている人ばかり。そんなことでは発想力は鍛えられません。

西岡さんは、こう続けます。

西岡:発想力を鍛えようとしてもすぐには成果が出ないかもしれない。ですが、明日からすぐできることもあります。それは口角を上げること。決して微笑む必要はなく、単に口角を上げることを意識すればいい。
出社したら一人一人の目を見て、口角を上げてから「おはよう」と挨拶してみてください。部下と話す前には、鏡をみて口角が上がっていることを確かめてから話してみてください。そうすれば、職場の雰囲気がガラッと変わりますから。

最後に、西岡さんは会場に熱いエールを送ります。

西岡:みなさんには、ペンギンの群れの中で率先して海に飛び込むFirst Penguinの精神で、仕事に臨んでほしい。
もちろん、ミドルが色々考えてもすぐに会社は変わらない。でも、座してだんまりを決め込むか? それとも、小さなチームからでもいいから自ら動かしていくのか? それはみなさん次第です。

面倒な上司にあたったらどうしたらいいか?

第一部でいまのミドル層への危機感を語った西岡さん。第二部は、西岡さんと新野さんがマネジャーの哲学について語り合いました。

新野:先ほど「小さなチームからでもいいから自ら動かしていく」という話がありました。私は起業する前、大企業にいながら内部から組織を変えていくのは簡単ではないなぁ、と感じていたのですが、その点についてはどう考えていらっしゃいますか? たとえば、部下をダメにするような無理難題を言う上司にあたったときは、どう乗り越えていったらいいんでしょうか?

西岡:西岡塾の塾生から、「過去の仕事で一番成長を実感できた経験」について聞いたとき、よく挙がるものの一つは海外赴任中。人が少ないから自分で責任をもって工夫して乗り切らないといけない。だから力がつく。
もう一つが「バカな上司にあたったとき」。無理難題をこなすうちに力がつくんでしょうね。
確かに、大きな組織を変えていくのは難しい。だから悪い上司の元で働くことになってしまったら、無理して乗り越えるんじゃなくて、耐えて成長の機会だと考えるしかないのかもしれません。

新野:私も不合理に膨大な仕事をふる上司に仕えたことがありますが、あとから振り返るとその期間は相当成長できたと感じます。全部こなしているうちに、上司から見ても自分がなくてはならない存在になってきて、結果自分の裁量が増えた気がします。
自分は「新野商店」だという気持ちで仕事をしていました。上司もお客さんの一人であり、お客さんを満足させる方法を考えることが仕事。そうすることが成長につながったと思いますね。

投資銀行で働いていたのは起業資金を貯めるためだったと明かす新野さん

部下にどこまで仕事を任せるべきか?


新野:上司の立場としてよく悩むのが、部下の力をどう引き出すかということ。部下に、First Penguinの精神で、目を輝かせて働いてもらいたいとは思いつつ、まだこの部下に任せるのは心配だなという葛藤を抱えるケースって多いと思うのですが、いかがですか?

西岡:これは塾生の多くも抱えている悩みですね。
西岡塾では塾生に、上司、部下、同僚からの360度評価を書いてもらう課題を出しています。すると部下からのフィードバックには「成長したいので、もっと仕事を任せてほしい」という意見が多い。つまり、上司がなんでも自分で仕事をしていることに不満を持つ部下は結構いる、ということです。

マネジャーは自分で全部やろうとせず、部下を信じて思い切って権限を委譲していくことですね。自分が優秀であることを褒められているようでは半人前です。周囲から「あのマネジャーに任せると、部下が活き活きと仕事するようになったなぁ」と思われるように動く。これがリーダーの役割です。

新野:どこまで任せるかという基準は設けていますか?

西岡:こればっかりは部下によってさまざまなので、一般解はないですね。「大きなトラブルが発生したら責任はとる。失敗してもお前のせいだとは絶対言わないし、相談はいつでも聞くよ」と伝え、部下一人一人の動きを注視していくしかない。
もちろんこれはマネジャーに人間力があってこそ。問題が起きたときにすぐ相談しようと部下たちが思ってくれるような信頼関係が前提です。


参加者A:先ほど、部下にどこまで任せるか、どこで介入するかという話がありました。新野さんの場合はどんな基準を設けていますか?


新野:経営者として頻繁に出くわす問題なので、私の場合は原則を決めています。まず最初にするのは、その任せる仕事が失敗した場合の最大リスクを自分や会社で負いきれるかどうかをみます。これを超えてしまう場合、「任せる」行為が無責任になってしまうからです。
そうして失敗の最大リスクがコントロール可能であれば、まずは任せますね。かりに失敗してしまったとしたら2回目は私も一緒にやる。そこで部下の成長角度が1回目からあまり改善していないようなら、この領域は向かないのではないか、部下の得意な領域は別にあるんじゃないかと考えて、違う仕事を任せていくようにしています。
もちろん部下それぞれに個性がありますし、ケースバイケースなところもあるので、あくまでガイドラインとして考えています。

仕事で伸び悩みを感じたらどうしたらいいか?

参加者B:新しい部門にきて数年が経ち、バリューを出そうと頑張っていますが伸び悩みを感じています。後輩のほうが成果を出しはじめたので焦っていて……どうすれば打開できるんでしょうか?

西岡:一流のマネジャーには人間力も大事ですが、明らかに成果がでていないようなら、そもそも基本的な技術力、専門知識が足りないと考えたほうがいい。
もしくは、それは「勉強したくて仕方がない」仕事なのかと自分に問いかけてみる。もし目の前の仕事にそう思えないのなら、他の領域に目を向けるべきときかもしれません。

新野:この悩みは非常に普遍性があるテーマ。立ち返るべきは自分の目的は何かということです。それが「幸せになること」だとしたら、必ずしも仕事でトップになる必要はないかもしれない。能力は幸せになるための手段なので。
もし仕事で空回りしているのなら、その状況を相対化してフラットに見てみる。「でもまぁ、クビにはならないな」「家族と仲良く過ごせているなら、部下のほうが自分より優秀でもいいか」と思えてくるかもしれません。

私は、自分が夢中になれるもの、「これなら苦じゃない」と思えるものに、寄り添っていく姿勢が必要だと思っています。
自分のコア・コンピタンスって、自分ではなかなかわからない。でも周囲が自分に対して「なぜかこの人といると元気になる」とか、「ここがいいよね」と思っているポイントは必ずあります。それが結局、得意で好きな領域だったりする。この強みを見つけることが大事なんです。

私の場合だと、「しつこいこと、内省的なこと、心配性」の3つが強みです。これらは一見マイナスに聞こえるかもしれない。でも、しつこさは、何が何でもあきらめずにやり抜くという強みにもなるんです。もしも泥の中を進み続けるレースがあったら、負けない自信がある。

誰にでも必ず固有の強みがあるし、ひょっとしたらその分野では世界一かもしれない。「明るさだけは負けない」のなら、それを追求したらいい。減点式じゃない形で勝負されたほうがいいと思います。

西岡さん、新野さんからの力強いメッセージに、参加者の皆さんもパワーがみなぎってきた、と口々に話していました。

フライヤーでは今後もさまざまなイベント、読書会を開催予定です。開催スケジュールはフライヤーのFacebookページ(https://www.facebook.com/flierinc/)をご覧ください。フライヤーのPeatix(http://flierinc.peatix.com/)もフォローしてみてくださいね。

一流マネジャーの仕事の哲学
一流マネジャーの仕事の哲学
著者
西岡 郁夫
出版社
日経BP社

西岡 郁夫(にしおか いくお)

株式会社イノベーション研究所 代表取締役社長。丸の内「西岡塾」塾長。

1969年、シャープ株式会社入社。CADセンター所長、技術本部コンピュータ・システム研究所長、情報システム本部コンピュータ事業部長、同副本部長を歴任。1981年、CADの研究で大阪大学から工学博士を取得。1992年、インテル株式会社に転身。1993年、同代表取締役社長、米国インテル本社営業担当副社長。日本にパソコン、電子メール、インターネットを普及させる活動にまい進するとともに、通商産業省(現:経済産業省)のITSSPプロジェクトに参画し、中堅・中小企業のIT経営化の普及活動に指導的役割を果たした。1997年、同代表取締役会長。1999年4月退任。

1999年、モバイル・インターネットキャピタル株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。ベンチャーの経営指導に注力する。2001年、大企業のトップがベンチャーを支援する組織「ベンチャーを支援するベテランの会(現・ベンチャーを支援するベテランとベンチャーの会)」を設立。現在、世話人。2002年、ビジネスプロフェッショナルを育てる「丸の内ビジネスアカデミー(現・丸の内『西岡塾』)」を設立。大阪大学ヒューマンウェアイノベーション博士課程プログラム国際アドバイザリー委員会委員、野村アクセラレータープログラム「VOYAGER(ボイジャー)」メンターなど歴任。

著書に(ダイヤモンド社)、『ITに関心のない「経営幹部」は今すぐ辞めなさい 情報利用戦略のすすめ』(かんき出版)。

丸の内「西岡塾」ウェブサイト http://nishiokajuku.com/



新野 良介(にいの りょうすけ)

株式会社ユーザベース 代表取締役社長(共同経営者)

三井物産生活産業セグメントにおいて事業投資部隊に所属し、国内中間流通戦略の立案、事業投資の実行、企業再建に従事。その後、UBS証券投資銀行本部にて消費財・リテールセクターを担当し企業の財務戦略アドバイザー業務に従事。2008年に株式会社ユーザベース(UZABASE,INC)を設立し、代表取締役社長(共同経営者)に就任。企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA」とソーシャル経済ニュース「NewsPicks」を展開。東京、大阪、シンガポール、香港、上海、スリランカに拠点を構える。

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文責:松尾 美里 (2017/08/16)
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