『遅いインターネット』を通して問いかけたかったこと
荒木博行(以下、荒木):高津さんは、flier book laboの第1期パーソナリティとして、「Day1」から「Day8」の全8回にわたる「TALK」と1回の「LIVE」をご担当くださいました。
「TALK」では、パーソナリティが「問い」を投げかけ、labo会員の皆さんがそれに答える形で感想を書き込むという流れになっています。今年の5月から2週間に1度、4か月にわたって放送していただきましたが、Day3のあたり、6月頃には選書の方向性が少し変化しましたよね。
高津尚志さん(以下、高津):当初は、5月に放送した「Day1」で比較的どなたにもわかりやすい入り口を作り、「Day 2」で古典を扱い、次第に芸術文化・国際問題方面へと展開していくつもりだったんです。
ところがDay3、Day4のあたり、6月頃には新型コロナウイルスの感染拡大が進み、私自身が読みたい本、知りたい情報に変化があったんですね。そこで方向性を変え、Day3では、『
遅いインターネット』(幻冬舎)と『
世界史の針が巻き戻るとき』(PHP研究所)を取り上げました。
荒木:毎日「今日の東京の感染者は●●名」というニュースが流れてきて、それに一喜一憂していた頃でしたよね。
高津:
そうでしたね。私も含めた誰もが断片的な情報に踊らされ、右往左往する。いわば情報にハックされ、思考を奪われている状態に危機感を覚えました。
そこでこの2冊を読んで、「情報に対して即座にリアクトするのではなく、一度立ち止まってじっくり深く考えたほうがいい」と改めて確認したのです。それが皆さんへの問いかけになりましたし、同時に自分自身に対する戒めにもなりました。
slowなアクションで学びを「結晶化」する
荒木:『
遅いインターネット』のタイトルにもありますが、「遅さ」という概念は今、非常に重要なものになっていると思います。流れてきた情報を単純にリツイートするのではなく、一度自分の中でため込むこと。これは、高津さんの「TALK」の大きなテーマになったのではないかと思っています。
高津:まさに。「TALK」に取り上げる書籍に関しては、flierの要約を読むだけでなく、書籍を購入して通読すると決めていました。ここには「本を読む」という「遅い」時間があります。
さらに20分の短い「TALK」にしていく過程で、数時間かけて内容をまとめていきました。語る前に、しっかり「書く」ことを実践していったのですが、その過程で、自分が感じたこと、考えたこと、問いかけたいことがだんだん結晶化されていきました。「遅さ」の重要性は、TALKの制作と配信を通して自分自身が経験したことでもありますね。
荒木:なるほど。要約を読むだけでは、情報は流れていってしまいかねない。自分なりに問いを立てて発信することで、要約や本から受け取った情報を確かなものにしていく、slowなアクションこそが重要ですよね。
高津:おっしゃるとおりだと思います。今回、flierの要約がなければ出会わなかった本は多いです。またfastな情報収集で十分、という局面もあると思います。ただ、自分の考えを結晶化したいなら、じっくり時間かける必要もあると思います。
“Stop thinking”から“Stop to think”へ
荒木:抽象的な問いは、どうしても具体的な問いに流されてしまいがちですよね。「どう生きていくか?」「自分のミッションは何か?」という問いにはすぐに答えが出ないから、「このメールに返信しなくちゃ」「提案資料、どうしよう」という問いが優先されてしまう。
それでも、抽象的な問いについても、立ち止まって考えてみる必要があるんだと思います。
高津:Day6で「新しい世界を作る主人公として、あなたの望まない未来は何か? それを回避できる方法があるとすれば何か?」という問いを投げかけたのも、まさに立ち止まって考えることの大切さを伝えたかったからです。
Day7では「週に3回有酸素運動をしよう」と語りましたが、これは実際、私が習慣にしていることでもあります。情報にハックされない時間や空間を確保して「タメ」をつくること、保留(suspend)することの重要性を伝えたかったんですよね。
荒木:“Stop thinking”から“Stop to think”へというのは、ユヴァル・ノア・ハラリ氏と高津さんに共通するメッセージだと思っています。
いかにして「あるべき姿」を考えるか――laboのパーソナリティを務めていただいた数カ月間を通して、このテーマを高津さんと一緒に考えてきたように思います。
学びの場としてのコミュニティ
高津:私の所属するビジネススクール、IMDでは、IMDでの学びに参加する経営幹部には3種類いる、とよく言います。社長や人事に言われたから仕方なく来た “Prisoner(囚人)”、物見遊山、お手並み拝見、という “Tourist(観光客)”、そして“Learner(学習者)”です。
一番歓迎したいのは、“Learner”。問題意識を持って学びに接して、自ら問いを立てて考え、他者とも共有できる人。そして学びを職場に持ち帰って、何らかの行動を起こしてくれる人です。ビジネススクールに限らず、今、「学習者」として生きられるかどうかが問われる時代になっていると感じます。
荒木:まさにそうですよね。とはいえ、Learnerであり続けるのは、簡単なことではありません。高みの見物のままでは、傷つかないで済む代わりに、学びは得られない。まずは、当事者意識を持つ必要があります。
高津:flier book laboも同じですよね。最初は与えられたコンテンツに「いいね!」を押すだけだった人も、回を重ねるごとに学びを深めていきます。その学びが共有され、お互いに刺激を与え合ってまた学びが深まり、「CLUB」のような自主活動も盛んになっていく。
そんな様子を拝見して感じたのは、よい学びのコミュニティとは、LearnerがLearnerに魅力を感じ、感化しあって、結果としてみんなのLearner度合いが高まっていく、という過程そのものなのだ、ということでした。
荒木:flier book laboを、まさにそんな場にしていきたいと思います。高津さん、ありがとうございました!
flier book laboプランに登録すると、今回紹介した書籍の要約を含め、flierで公開されているすべての要約が読み放題になるだけでなく、「TALK」「LIVE」「CLUB」のコンテンツをお楽しみいただけます。この機会にぜひご利用ください。
「flier book labo オープントークセッション」は、今後も定期的に開催予定です。次回もお楽しみに!