【伊藤羊一推し本】『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.』
コロナ禍でも「熱狂するコミュニティ」を築くには?

2020年5月から始まりました、フライヤーが主催するオンラインコミュニティflier book labo。さまざまな地域、年齢、職種のメンバーが、書籍の要約から得た気づきや学びを語り合います。
コミュニティの目玉の1つは、オンライン上で書籍について語り合う読書ワークショップ「LIVE」。第1弾のゲストスピーカーは、ヤフー株式会社のコーポレートエバンジェリスト、伊藤羊一さん。
伊藤さんのおすすめする一冊は、『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE.』(幻冬舎)。本書には、「熱狂するコミュニティ」を築くためのヒントがちりばめられており、実はマネージャー層にこそおすすめしたい一冊だといいます。伊藤さんに、いまこの本を読むべき理由やその魅力についてお聞きしました。
熱狂、マネジメント、ファン・マーケティング……。すべての土台に「心理的安全性」がある
伊藤羊一さんは、Yahoo!アカデミア学長でもあり、グロービス経営大学院でリーダーシップ系科目の教壇に立たれています。社内外のあらゆるビジネスパーソンの心に火をつけ、熱狂する場やコミュニティを築いてきた伊藤さん。『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE.』をどんなきっかけで手にとったのでしょうか。伊藤羊一さん(以下、伊藤):本書を手に取ったきっかけは、著者で稀代の編集者である佐渡島傭平さんがどんなことを考えているのかを知りたかったから。実際に読んでみると、ものすごく考えさせられる本でした。熱狂の生み出し方、マネジメント、顧客をファンに育てるファン・マーケティング。これらはみんな別物として捉えてきましたが、その土台としていずれも「心理的安全性」が重要になるんだなと。この本のおかげで、いままで自分がバラバラに考えていたものが、すべて一本の線でつながっていったんです。
今回の読書ワークショップ「LIVE」では、参加者の方々がこの本に関連した体験や気づきを数多くシェアしていただきました。たとえば、「みんなで掃除をすることで自分なりの役割が見つかり、心理的安全性が生まれやすくなる」というのは、まさにそうだなと。この一冊をベースに、これほどディスカッションが発展して、学びが広がっていくのかと驚きましたね。




伊藤:実は『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE.』は、組織のマネージャーにこそおすすめしたい一冊なんです。コミュニティづくりに限らず会社のマネジメントにも活かせるヒントがつまっているので、自分のチームをコミュニティに置き換えて読んでほしいですね。
もちろん、コミュニティづくりとマネジメントは直結しているわけではないので、腹落ちするまで悶々と悩むかもしれません。でも、こうして色々と考えることが大事で、「そうか、こういうことだったのか!」と心が大きく動かされる瞬間が訪れる。いわば「アハ体験」によって、インプットが真の「気づき」に変わります。
コロナ禍はコミュニティづくりの「当たり前」から解放されるチャンス
現在コロナ禍により、多くの会社やコミュニティで「直接メンバーと会う機会が減り、ビジョンの共有や心理的安全性の担保が難しくなった」という悩みが増えていると聞きます。こうした制約をどう乗り越えていくのか。伊藤さんからはこんなアドバイスをいただきました。伊藤:直接会えないことで制約に感じる場面もありますが、現在の状況は、これまで足かせになっていた「当たり前」から解放されるチャンスでもあるんです。まず「ビジョン」については、これまでの常識が打ち砕かれたことで、本当に自分たちが目指したいものを自由に考えることができます。
個人の関係性においても、zoomなどのツールが日常的に使われるようになり、「オフライン(対面)>オンライン」「密集>拡散」といった当たり前からも自由になった。今後は、対面とオンラインのどちらがいいのか、状況に応じてフラットに選択できるようになります。
そのうえ、移動が減った分、自分の部屋でじっくり内省する時間が増えてきました。これは、自分自身が本当に熱狂できること、大事にしたい価値観は何なのかと、考えを深める機会になる。これは、僕が常々リーダーシップを発揮するうえで大事だと語っている“Lead the self”(=自分自身をリード)につながっていきます。
安心・安全のもとで精神的つながりを感じられる場というと、読書コミュニティflier book laboがまさにめざしているものですよね。これを実現していくには、参加者一人ひとりが自分にできそうな役割を見つけて、何か1つでも行動してみるといいと思います。自分の経験をシェアするだけでも、充分コミットしていることになりますから。焦らず、瞬間瞬間の気づきを大事にしながら、楽しんでいただきたいと思います。



伊藤さんはflier book laboでは「常識破りのリーダー論」という音声コンテンツを配信してくださっています。今回のお話を通じて、「常識」「当たり前」から解き放たれることがコミュニティづくりでもマネジメントでも重要になるというメッセージを届けてくださいました。この学びをもとに、『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE.』とじっくり向き合ってみたいと思います。
LIVE第2弾以降も、さまざまなゲストスピーカーがおすすめの本を紹介してくださいます。お楽しみに!
伊藤羊一(いとう よういち)
ヤフー株式会社コーポレートエバンジェリスト、Yahoo!アカデミア学長。株式会社ウェイウェイ代表取締役。1967年、東京都に生まれる。東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行に入行。2003年、プラス株式会社に転じ、事業部門であるジョインテックスカンパニーにてロジスティクス再編、事業再編などを担当し、2011年より執行役員マーケティング本部長、2012年より同ヴァイスプレジデントとして事業全般を統括する。2015年にヤフー株式会社に転じ、次世代リーダー育成を行うだけでなく、グロービス経営大学院客員教授として教壇に立つほか、大手企業で様々な講演・研修を実施している。著書には、『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』『「わかってはいるけど動けない」人のための 0秒で動け』(ともにSBクリエイティブ)、『やりたいことなんて、なくていい。将来の不安と焦りがなくなるキャリア講義』(PHP研究所)などがある。