【ワーママはるの推し本】『知的生産術』
「引き算」すれば、大事なことが見えてくる

フライヤーが主催するオンラインコミュニティflier book labo。さまざまな地域、年齢、職種のメンバーが、書籍の要約から得た気づきや学びを語り合います。
コミュニティの目玉の一つに、オンライン上で書籍について語り合う読書ワークショップ「LIVE」があります。第11弾のゲストスピーカーは、Voicyのワーママはるラジオでもおなじみのワーママはるさん。
ワーママはるさんがおすすめする一冊は、『知的生産術』(日本実業出版社)。立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明さんが「個人の知的生産性向上」について指南してくれる一冊です。
『やめる時間術』を上梓され、「理想の時間の使い方」についても多数発信されているワーママはるさんに、『知的生産術』の魅力をお聞きしました。
「最小限の努力で最大限の効果をもたらす生き方」の指南書
『知的生産術』を紹介したいと思った理由の1つは、著者の出口治明さんが、自分の軸をブラさずに発信されている姿勢に、尊敬を寄せているからです。たとえば「知的労働のインプットは人・本・旅である」、「数字・ファクト・ロジックが大事」といった発信は、とても明快で、私の行動指針にも影響を与えています。
2つめの理由は、自分の時間が限られている人にとって役立つアドバイスが満載だから。私の場合、ワンオペで2人の子育てをするようになって、強制的に自分に使える時間がなくなりました。他人軸にふりまわされているような状態でも、「最小限の努力で最大限の効果をもたらす生き方」をするにはどうしたらいいか。そのヒントを体系立てて得られるのが本書の魅力です。人生100年時代のいま、体力という資本が衰えていくなかでも自分軸で働き続けたい方にピッタリの一冊だと思います。


まずは「やめること」を決める
1日は24時間しかありません。「あれもこれも」とやることを詰め込むと、充実感を味わいにくくなってしまう。だから、出口さんが「世の中の物事はトレードオフである」とおっしゃるように、新たに何かを得たいなら「やめること」を決めるのが重要です。人生から優先度が低いものをどんどん「引き算」していく。そうすれば迷う時間も減っていき、自分にとって大事なものが見えてきます。
これまでの習慣をやめるとなると、過去の自分の選択を否定しているかのように思うかもしれません。ですが、「いまの自分に合うように選び直しただけ」と思うと、気が楽になるのではないでしょうか。
時間術もアンガーマネジメントも「小さな一歩」から
ポイントは「小さく引けるもの」を探して引くことです。生産性を上げるとなると、一番インパクトが大きい部分に手をつけたくなるかもしれません。全体の数値の大部分はその構成要素の一部が生み出しているという「パレートの法則(2:8の法則)」があるくらいですから。でも、まずは小さく行動して、その成果を体感してみる。「直近の30分間の過ごし方をメモして、そこからやめたいものを考える」といった内容でかまいません。
そもそも人間は「具体的なアクション」しか覚えられない生き物です。たとえばアンガーマネジメントで、「怒りそうになったら水を飲む」と決めていたとします。じつは、これでもまだまだアクションの抽象度が高いのです。最初の一手は、「鞄のなかのペットボトルを取り出す」くらい、具体的に決めておきたいところ。スモールステップならその通りに動けて、「自分でコントロールできた」と、自己効力感が高まっていく。その結果、今度はさらに一段上のアクションを踏み出せるようになります。
この具体的な初動は、心が安定した「ニュートラルポジション」にあるときに決めておけるといいですね。時間術もアンガーマネジメントと同様です。多忙の真っただ中にあるときは生産性向上どころではないので、落ち着いたときに「時間の引き算」を試してみるといいと思います。
flier book laboは「多様性に富んだ思考」にふれる絶好の場
LIVEに初めて参加してみて、「こんなにゆったりとみんなで対話できるスタイル」なのかぁと穏やかに過ごせました。ファシリテーターの荒木さんは水先案内人のような存在で、labo会員の方々が知的探究心をもとに、自ら問いをもって臨んでいるのが印象的でした。チャットを通じたコメントへの応答も、一人一人に向けられていて、だからか参加しやすく、当事者意識をもちやすいと感じました。
対話を通じて得た大きな収穫は、「生産性」について新たな視点をみんなで共有できたことです。生産性というと、他人との比較、つまり相対評価だと思いがち。ですが「自分にとっての生産性」という絶対評価で測ることができるという話に広がっていきました。一冊の本をベースに対話を深めるなかで、こうして価値観がアップデートされていく瞬間に立ち会えたのが面白かったですね。
出口さんは知的生産性向上において、「人・本・旅」が大事だとおっしゃっています。これは出会う人の数などの「量を増やそう」という意味だけでなく、「多様性に富んだ思考にふれよう」という意味も込められているととらえています。flier book laboは多様な年齢、地域、背景をもつ方とつながれるので、「人・本・旅」の骨子を実現するのに最適な場ではないでしょうか。
【編集後記】
ワーママはるさんは、2021年1月から「自分を主体的に生きる」というテーマのもと、「キャリア観」「仕事とお金」などに関する本を紹介する音声コンテンツを配信してくださっています。今回のお話を伺って、「やらないこと」を決めること、「小さな一歩」を踏み出すことの重要性をひしひしと感じました。
今回紹介した『知的生産術』や、ワーママはるさんのご著書『やめる時間術』を通して、人生で本当に大事にしたいものを自問してみてはいかがでしょうか。
LIVE第12弾以降も、さまざまなゲストスピーカーがおすすめ本を紹介してくださいます。お楽しみに!




尾石晴(ワーママはる)(おいしはる)
外資系メーカーに16年勤務し、うち6年は管理職として活躍。長時間労働が当たり前の中、「分解思考」で時間を捻出。ワンオペ育児をこなしながら残業0時間を達成し、チームを社内表彰に導く。その傍ら、発信業・不動産賃貸業・ヨガインストラクター・メンタルオーガナイザー®・ライフオーガナイザー®など、会社員以外での収入経路を次々と確保。2020年4月に会社員を卒業し、サバティカルタイムに突入。音声メディア「Voicy」では1000万回再生超えを記録し、トップパーソナリティとして活躍中。
その他、「note」や「Twitter」でも日々発信している。SNSの総フォロワー数は約5万人。2020年にはヨガスタジオ「ポスパムfukuokaスタジオ」を立ち上げ、代表を務める。2児の母。
ツイッター:@wa_mamaharu
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