
フライヤーが主宰するオンラインコミュニティflier book laboでは月に一回、オンライン上で書籍について語り合う読書ワークショップ「LIVE」を行っています。2021年4月のゲストスピーカーは、『天才を殺す凡人』や『これからの生き方。』でおなじみの北野唯我さんです。 今回の一冊は、老化を病気の一種と再定義する『LIFESPAN(ライフスパン)』。老いが治療可能となる世界は、私たちに「生きる」とは何かという本質的な問いを突きつけます。LIVE終了後の北野さんに、人生を楽しみ、学び続けるために重要な、「生産する娯楽」を育てるという考え方についてお伺いしました。


今回の読書会のテーマである『LIFESPAN』は、老いというのは病気であるという再定義自体がとても面白いなと思いました。LIVEでは、おそらく「生きたいか、生きたくないか」「もし健康寿命が延びたら何をするか」という問いが出ると予想していました。きっとみんな、自分に引き寄せて考えるだろうと。自分の人生がどう変わるか、もし老いが治療可能になったら自分はどうするのかと、今から考えておくことは重要なことです。実際、そのような話題になりましたよね。
150年もの間健康的に生きられるとしたら生きたいか、そもそも「生きる」「死ぬ」とは何なのか。そうした哲学的な問いが、企業内哲学の重要性につながっていったことは予想外でした。企業が偉大なプロダクトを生み出すには、機能的に優れ、造形が美しいだけでなく、哲学が必要だといわれています。日本の企業に足りないのは哲学という指摘もあります。社会にとって役に立つものを生み出すには哲学が欠かせません。実際、GAFAでは、企業専属哲学者が雇用され、哲学的な視点が経営に生かされていると聞きます。150年も健康的に生きられるとしたら生きたいのか、生きたいとしたら生きるというのは何なのかという問いは、企業内の哲学の重要性と重なるのだと感じました。
人生を充実させるためには、「生産する娯楽」を少しずつでも育てていくしかないのではないかと考えています。たとえば、平日は仕事に忙殺されて疲れ果ててしまったとき、ストレス発散のために「消費する娯楽」として5,000円のエステに行ったとします。これを10倍の5万円のエステにしたところ、自分の資本が10倍回復するわけではないですよね。「消費する娯楽」ばかりをしていると、その中で永久に働かざるをえなくなってしまいます。働くことが苦役であるという前提に立つと、150年まで生きなければならない、120年くらい働かなければならないというように、苦しい時間が延びる感じがしてしまいますよね。
だから、労働が大変だからそのために息抜きとして娯楽をするという、仕事に対する感覚自体を少しずつでも変えていく必要があります。文章を書くのが好きな人であったら、文章で最初は1万円でも2万円でもいいから稼げるようにして、それを少しずつ大きくしていくことで、「生産する娯楽」を育てることができます。これだと、基本的には好きなことをやっているわけですから、疲れる度合いが明らかに小さくなります。「生産する娯楽」がどこかで損益分岐点を超え、自分が生きていくための生活費を稼げる本業になったら、そこからはそのループで生きていけるわけです。
私は、「生産する娯楽」ばかりやっています。本を書く仕事も私が好きだからやっている趣味のようなもので、なおかつ世の中のためにもなることだと思っています。今の会社で働いているのも、友達に会いに行って、いっしょに世の中のためになることをやって、ある程度評価していただいて、お金ももらえるという感覚です。まさに今日のflier book laboでのLIVEも、他の方と話して自分が普段考えていなかったようなことが引き出されて、それが会員の皆さんにも少し還元できるという、「生産する娯楽」でした。このflier book laboの運営自体も、「生産する娯楽」のようですよね。楽しいからコミュニティを運営していて、それが誰かのためになってお金がもらえる。「生産する娯楽」を育てるということは、これをちゃんと大きくしていくということだと思います。
LIVEでは「学び続けなければならない」というプレッシャーを心配する声がありましたが、そういう意味でも「生産する娯楽」を育てるという視点は重要です。野球するのが好きだったら野球に関するインプットは嫌じゃないはずだし、文章を書くことが好きだったら文章術の本を読むのは苦にならないと思うんです。だけど、やらなければならない大変なことをやるためのインプットだったら、しんどくてたまらないですよね。「学び続けなければならない」という構造を危機に感じるよりも、どうしたら自分の学びを楽しくできるかと考えたほうが建設的です。本を読むのが苦痛だとしても、友達と一緒に読んだり、まさにflier book laboのようなコミュニティに参加したりして、フライヤーを通して出会った人と話すのが好きになれば、本を読むことに対する苦痛もちょっと減りますよね。そうした工夫が、本質的には「知恵」だと思うんです。
時代の感性に取り残されないためには、若い感性やセンスを学んで常にアップデートしていく必要があると思っています。職場や家庭は同質性がとても高いので、意識的に新しいコミュニティとコミュニケーションしていかないと、一瞬でタコツボ化してしまうのではないかという危機感を持っています。だから、私は自分よりも若い人から学ぶために、仕事を発注してお金を払うこともあるんです。若い人にセンスや感性を発揮してもらい、私はそこから学ぶ。こういう話をすると、「北野さんもまだ若いのに、年下の人にお金を払って教えてもらうってどういうこと?」と、私のやっていることは「異様」だと言われることも多くあります。たしかに異様かもしれません。でも、現実的に、そうした方が自分の生存確率が上がる。かつては時代の感性をとらえていたはずの人でも、時代遅れの発言をしてしまうようになるのは、若い人から学ぶという姿勢がないせいです。
私がお金を払ってでも若い人から学んでいると発信することで、「北野さんもやっているんだったら」と同じように考える人が増えてくれたら嬉しく思います。私は自分のできる範囲でみんなに役立つことを伝えていきたい。だから、行動で示すことや、LIVEのような場で自分の取り組みを発信することは重要だと考えています。若い人から学ぶということに抵抗がある方もいるかもしれません。私にもプライドはあります。だけど、それよりももっと大きなことが成し遂げたいという気持ちの方が強ければそんなプライドはどうでもいいものになる。
私は異常なほど学ぶことが好きなので、いつまでも“Stay hungry, stay foolish”でいたいと思います。私も学び続け、貪欲に吸収し続けています。学びを義務だととらえてしまうと辛くなってしまいますが、楽しくあるために学び、楽しみながら学ぶということをみなさんと共にできたら嬉しく思います。やりたいことは山ほどありますから。








北野唯我 (きたの ゆいが)
Twitterアカウント:@yuigak
兵庫県出身。実業家・作家。博報堂、ボストンコンサルティンググループなどを経験し、現在、ワンキャリア取締役として、戦略領域・人事領域・広報クリエイティブ領域を統括。また作家としても活動し、30歳のデビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)が20万部、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)が12万部、同時発売の『分断を生むエジソン』(講談社)、『OPENNESS(オープネス) 職場の空気が結果を決める』(ダイヤモンド社)で、著者累計35万部を突破。最新作に『これからの生き方。』(世界文化社)がある。1987年生。