「疑うこと」から信頼と未来は生まれる
【ピョートルの推し本】『NINE LIES ABOUT WORK』

フライヤーのコミュニティflier book laboの目玉は、オンライン上で書籍について語り合う読書ワークショップ「LIVE」です。2021年7月のゲストスピーカーは、プロノイア・グループ株式会社代表取締役のピョートル・フェリクス・グジバチさんでした!

人材育成にまつわる著書を多く書かれていますが、なかでも『ニューエリート』は、変化に強いこれからの「成功者」になるための秘訣を明らかにしたものとして、多くの人が手に取っています。

ピョートルさんがLIVEでとりあげた一冊は、『NINE LIES ABOUT WORK』(マーカス・バッキンガム、アシュリー・グッドール著、サンマーク出版)。本書は、職場で長らく「真実」とされてきた事柄の「虚構性」を暴き出しながら、働く人たちのさらなる成長を支えようとするものです。これに関連して、ピョートルさんは何を「疑って」いるのか、そしてそれがどう豊かで楽しい仕事へとつながっていくのか、この本の魅力とともにうかがいました。

「前提を疑う」ことの意味

本はふつう正しいものを伝えようとしますが、『NINE LIES ABOUT WORK』は仕事の真実ではなくて「ウソ」と書いていることに惹かれました。よいと思って導入されたはずのものでも「ウソ」になってしまうというパラドックスは、毎日我々が直面していることです。こうして前提を建設的に疑うことは、効果的な世界の見方を見つけるための方法でもあります。

ただ、虚構の真逆が必ずしも正しいとは限りません。この本では、一見すると相反するものが出てきます。会社を選ぶのではなくてチームを選べ、など。たしかに、いい会社に入っても非建設的な環境にたどりつくことはあり得ます。一方で、とても悪い会社なのにとてもいいチームにたどりついたということは、おそらくないでしょう。

ここで大事なのは、仕事の定義や生き方の意味、何を大切にするかといったことを自分のなかできちんと考えておくことです。いい会社に入っても、自分がやりたいとは思えない仕事をしながら給料をもらうのは、非建設的です。

社会の表面のレベルで常識だと思われていることを疑う、そうした挑発的な部分がこの本のよいところでしょう。それによって、さまざまな選択肢や解釈があるということを考えられるようになるのです。

NINE LIES ABOUT WORK
NINE LIES ABOUT WORK
マーカス・バッキンガム,アシュリー・グッドール,櫻井祐子 (訳)
サンマーク出版
本の購入はこちら
NINE LIES ABOUT WORK
NINE LIES ABOUT WORK
著者
マーカス・バッキンガム アシュリー・グッドール 櫻井祐子 (訳)
出版社
サンマーク出版
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「真実」がウソに変わるとき

ぼくは共産主義政権下のポーランドに生まれました。1989年に鉄の壁が消滅し、いきすぎた共産主義から資本主義の世界に変わりました。

子どものころから歴史が好きで、ポーランドは2カ月間の夏休みに読む本をもらえるので、それをむさぼるように読みました。でも1988年6月に、それまでもらった歴史と社会学の本を返せと言われて、新しい本が支給されたんです。そこには、それまで習っていたのとは真逆の歴史が書かれていた。ソ連、共産主義はいいという内容だったのが、資本主義、自由主義は正しい、ソ連は味方ではなくて敵だったという話に変わった。

歴史は簡単ではないのです。ぼくの祖父は第二次世界大戦で、ドイツからの攻撃で足を悪くしたと聞かされていました。でも実際は、ソ連軍に撃たれていた。

社会とは政治的なもので、歴史は誰からもたらされるかで変わってくるということを、14歳くらいに知ったのです。

だから、社会の前提を建設的に疑うことには、とても意味があると考えています。多くの会社は「不自然な環境」で、いらない「虚構」に基づいていらない話をせざるを得ない部分がたくさんある。それをなくしていきたいから、ぼくはいまの仕事をやっているようなものですね。

日本企業は採用基準が「やさしい」

仕事の「常識」となっていることがパラドックスになっている例として、採用の問題が挙げられます。日本企業は管理しやすい、枠にはめやすい人を採用する傾向がある。その結果、賢い、とがった才能のある人が少なくなってしまう。

当時のGoogleでは、採用基準を決して妥協しません。自分より強い人、優秀な人を採用することはマネジメントの責任です。天才的な人のつくるプログラムはほかの人を100人集めてもつくれない。そういう人に圧倒的な責任をもたせて、自由にその人の力を発揮できるようにする。人材育成とは、そうした環境づくりと関係づくりの側面が強いのです。

ぼくは、採用にあたって2つの基準をもっています。1つは、自分が「惹かれる人」を選ぶこと。自分がもっていないものをもっている相手という意味で。専門知識が豊かだったり、純粋に学ぼうとする姿勢、エネルギーが人一倍強かったり。もう1つは、チームのパフォーマンスを総合的に高め続けられることですね。この2つのバランスを考えます。

ぼくは、オールラウンダーではなくて「問題児」が好きなんです。とてもシャイで無口だけれど、後ろでとてつもなくがんばってくれる天才。ぽろぽろこぼしがちだけれど、この人がいるとチーム全体が楽しくなるという人。とんがっている人はいろんな問題を起こしてしまうけれど、それよりも残す成果のほうが大きいと思っています。

信頼が建設的な未来を生む

人を評価する際はもちろんですが、他人とやりとりするときに一番問題になるのは、ラポール(信頼関係)や心理的安全性をつくれていないことです。そこではまず、自分の感覚と同時に他人の感覚も疑います。決めつけずに探る段階が必要なんですね。

大切な事柄について対立する前に、小さくいっぱい対立しておくことが大事だと思います。もしお互いに妥協できない場合は、価値観の違いがあるからこそ我々はケンカし続けるんだ、でもそれは良い結果を出すための対立なんだと約束し合わなければいけません。

ぼくは、仕事中に社員のいろいろなボタンを冗談や挑発の気持ちで押すんです。そこでムッとされたら、これはやりすぎたんだなあと反省する。自分の言動が「ハラスメント」と誤解される前に、お互いの価値観を理解しておけるんです。ケンカは、お互いの価値観を建設的に共有する機会と言えます。

どうしてぼくがそういうラポールの築き方を身につけたかというと、山の農家で生まれ育ったことが背景にあるかもしれません。7歳くらいのとき親に頼まれて、ひもを引っ張りながら牛を餌場まで連れていくことになりました。そのときぼくは、たぶん体重30kgくらいの子ども。対する牛は500kgくらいです。ちょっと考えたら怖いですよね。でも、誰もどう連れて行けばいいのか教えてくれない。無理に引っ張っても来てくれない。牛がぼくと楽しく歩いている状態をつくる必要があるんです。つまり、自分より力をもっているものと、いかにラポールを築いておくかをそこで学びました。

あなたが犬を飼っているとして、仕事から帰ってきたときに、「ポチさんお疲れさまでした、今日のゴールはなんでした?」などと話しかけませんよね。「ワンワンワン~!」みたいな感じで、ポチさんに合わせたコミュニケーションをとると思います。

マネジメントもこれと一緒ではないでしょうか。まずは「ポチさん」が落ち着く状態をつくる。根本的な部分で安全領域をつくってあげることが大事です。相手に本音を投げかけるのは、そうしてラポールを築いたあとでなくてはいけません。

攻めのD&I

企業内で心理的安全性を確保するうえで、大事な取り組みとなるのがダイバーシティ&インクルージョン(D&I)です。ジェンダーなどの違いもあれば、人生のさまざまなタイミングも含まれます。

最高の成果を出すためには思考のダイバーシティが必要です。いろんな立場の話を聞くことで勉強になるし、脳も活性化する。すると、選択肢が増えていくことにもつながります。意思決定の範囲、深さも違っていきます。ダイバーシティがないと、意思決定の能力は低くなるでしょう。

ダイバーシティは周囲の人に影響を与えるファクト、インクルージョンはそれをどう建設的に解決できるかという方法のレベルを指しています。人の価値観の違いをどう建設的にまとめるか。違いのいずれも大切にして、一見すると相反する違和感に向かい続けるのがダイバーシティの経営です。

ただ、ジェンダー、国籍などのファクトだけを見て対応を決めるのは、真のD&Iではないと思います。人の価値観や生き方、特質がどう仕事と関係をもち、チームとしてのパフォーマンスを良くするポイントがどこにあるかを考えなくてはいけません。それにはまず、相手の話を聞いて、関心、思いやりを示すことが大事でしょう。

経営、マネジメントとはシンプルで、メンバーに対して承認、感謝を示しながら、ゴールにたどりつくまでの道を一緒に歩くことです。

遊び場としてのlabo

今回参加したflier book laboも、ジェンダーや年齢層といった意味でもう少しダイバーシティがほしい印象はもちました。

ただ、日本の男性には「ルネサンス」が来ている気はしています。今回の「LIVE」でも、30~50代の男性が多かった。コロナで巣ごもりが増えた「おかげ」なのか、彼らのあいだでは、会社以外のコミュニティに所属したいという気持ちがわいているように思います。誰かと本質的なつながりを得て、何らかの貢献をしたいと感じている。彼らが仕事以外のことで社会に貢献してくれると、世の中はいろいろ変わってくるでしょう。

ステレオタイプな捉え方かもしれませんが、日本の30代以上の男性はタテ社会に慣れていますよね。がんばれば昇進できる、役職のようなステータスシンボルがすべてになる、というか。

みなさんがlaboに参加しているのは、ステータスシンボルに関係なく意識が近い、あるいは価値観が真逆な人と接することができるからです。しかも、そのコミュニティには自分の選択で所属できる。この場では評価される、努力する、かっこいい自分を見せつけるという意識はいりません。ただ楽しんでいる。その雰囲気はとても心地良いものです。



【編集後記】

flier book laboでピョートルさんがお届けくださった音声コンテンツは、「世界を変えるニューエリートの思考法」です。これからの未来をつくっていく一人になるためのヒントがちりばめられています。

「ニューエリート」は、変化の激しい現代において、ひとつの常識や慣習にとらわれることはありません。その背景や意味を問うことは、いまの自分を守るためにも大切であることを学びました。次回のLIVEもお楽しみに!



いま私たちが直面している「パラダイムシフト」についてお伺いしたインタビューは、こちらをご覧ください。

ピョートルさんのご著書の要約はこちら
要約:『パラダイムシフト』
要約:『ニューエリート』
要約:『PLAY WORK』
要約:『世界最高のチーム』
要約:『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』

ピョートル・フェリクス・グジバチ

プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役。連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。ポーランド出身。モルガン・スタンレーを経て、グーグルでアジアパシフィックにおける人材育成と組織改革、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。ベストセラー『ニューエリート』(大和書房)ほか、『パラダイムシフト』(かんき出版)、『0秒リーダーシップ』(すばる舎)、『PLAY WORK』(PHP研究所)など著書多数。

プロノイア・グループ株式会社

ギリシア語で「先読みする」「先見」という意味を持つ「プロノイア」を社名に掲げるプロノイア・グループは「誰もが自己実現できる社会」をつくる未来創造企業。心理的安全性をベースに「遊ぶように働く(PLAY WORK)」 「前例を創る(IMPLEMENT FIRST)」「予期せぬ価値を生み出す(OFFER UNEXPECTED)」をコアバリューとして持ち、経営戦略・組織開発・人材育成をはじめとする「人に焦点を置いた」チェンジマネジメントを支援している。

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文責:石田翼 (2021/08/27)

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