
フライヤーの読書コミュニティflier book laboの目玉は、オンライン上で書籍について語り合う読書ワークショップ「LIVE」です。第19弾のゲストスピーカーは、株式会社クロスリバーの代表であり、『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』をはじめ、多くのベストセラーを生み出してきた越川慎司さん。
越川さんがLIVEのために選んだ一冊は、『セキュアベース・リーダーシップ』(プレジデント社)。リーダーが安全基地(セキュアベース)となり、フォロワーと心でつながるからこそ、フォロワーは限界に挑戦できると説いた、リーダーシップの名著です。越川さんのご経験や研究結果をもとに、トップ5%リーダーの習慣との共通項についてお聞きしました。
『セキュアベース・リーダーシップ』の翻訳書は、2018年の発刊当時に何度か読んでいました。ウィズコロナになってから『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』を執筆してみると、驚くことに、トップ5%リーダーの習慣と「セキュアベース・リーダー9つの特性」との共通項が多い点に気づきました。
具体的な共通項は、(2)人として受け入れる、(4)傾聴し、質問する、(7)リスクをとるよう促す、(8)内発的動機で動かす、そして(9)いつでも話せることを示す、でした。この共通項についてflier book laboのみんなと掘り下げていけば、面白い対話ができるのではないかと思ったんです。



共通項のなかでも特に印象的だったのは、(7)リスクをとるように促すことです。これまで多くの日本企業では、挑戦して失敗するとマイナス評価につながってしまうため、「失敗しないこと」がよしとされていました。
ところが現在は、コロナの影響もあって、何が正解なのかがわからない時代になっています。変化の時代を生き抜くには、行動の選択肢をいかに増やすかが大事ではないかと、多くの人が気づき始めているのです。働き方一つとっても、リモートワークもあればワーケーションもある。さらには週休3日制という選択肢まである。そんななかで、自分や自分たちのチームに合った道を探すには、とにかく行動実験して腹落ちすることしかないと思うんですよね。
5%リーダーはとにかく「小さな行動実験」が多い。かすり傷程度の失敗ならすぐに修正できる。だから失敗してもいいから行動しよう、と呼びかけます。そして良い結果なら続けるし、良くない結果なら修正すればいい。あくまでベースには、成功と失敗は完全に分かれているのではなく、失敗の先に成功があるという発想があります。
とはいえ「べき論」をふりかざしても人は動きません。大事なのは、PDCAのPを小さくして、PDCAサイクルをどんどん回していくことです。
たとえば「明日から社内のメールをビジネスチャットに変えよう!」と呼びかけても、抵抗勢力ばかりになるでしょう。ですが「毎週金曜日の午前中だけメールのかわりにチャットを使ってみてください」と呼びかけるとしたら、周囲も試しやすいと思いませんか? すると、「ビジネスチャットのほうが社内のコミュニケーションが効率よく進む」という経験をチーム内に蓄積できる。こうして「意外とよかった」という経験を積み上げていくことが、行動変容を促すうえでカギになります。
リーダー自身が試行錯誤を続けていれば、その背中を見たメンバーも「こんな小さな挑戦でいいんだ!」と安心して行動実験を行うことができます。めざすのは「ハイリスク・ハイリターン」ではなく「ローリスク・ローリターン」。これが「思いやり」と「挑戦」で人の限界を超えさせるセキュアベース・リーダーの姿そのものだと思います。
職場やプロジェクトにおいて壁にぶつかったり葛藤を抱いたりしながらも、セキュアベース・リーダーへと成長・成熟していくためにはどうしたらよいのか。これってなかなか難しいことですよね。私自身、9つの特性の1つめにある「冷静でいること」すら難しいなと感じています。
そこでキーワードになるのは「手放すこと」。何か新しい挑戦をしたら、外から批判されることもあるかもしれません。ですが、自分のコントロールできないところにエネルギーをとられるのではなく、コントロールできるところにフォーカスするんです。
自著『新しい働き方』でも、キャリア形成において、自らコントロールできる領域の「内円」と、コントロールできない領域の「外円」の二重円を描き、両者のギャップをできるだけ小さくしようと書きました。社会人1年目であっても、業務上15%は自分で時間の使い方をコントロールできるといいます。自分でコントロールできる部分で効率よくインパクトを出す働き方を積み重ねていくと、「内円」が大きくなっていく。その結果として、自由と責任の幅が広がり、より成果が残せるし、働きがいも高まっていきます。パワーは有限なので、力の及ばないものはどんどん手放して、コントロールできる範囲を少しずつ増やすという発想を大事にできればいいなと思います。それがセキュアベース・リーダーシップの発揮にもつながってくるのではないでしょうか。




越川さんは「flier book laboもセキュアベースを体現した場」だと語ります。フラットで互いの多様性や異質な面を受け入れ合う場だからこそ、安心して自分の意見をいうことができる。そして、それに触発されて新たな発想が生まれ、「共感・共創」の輪が広がっているのだそうです。
越川さんの取材を通じて、失敗してもその試行錯誤が周囲の人の挑戦の後押しになるというメッセージに勇気づけられました。行動実験を増やすことの意義をかみしめながら、『セキュアベース・リーダーシップ』を多くの方におすすめしたいという気持ちでいっぱいです。




越川慎司(こしかわ しんじ)
国内通信会社および外資系通信会社に勤務などを経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者。2017年に働き方改革を支援する株式会社クロスリバーを創業。メンバー全員が週休3日・テレワーク・複業を実践しながら、約17万人の行動履歴を調査・分析。これまで述べ800社以上に改革人材の育成講座や管理職教育プログラムを提供。
著書17冊。『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「普通」に見えるあの人がなぜすごい成果をあげるのか』(KADOKAWA)など。