【これからの本屋さん】
【天狼院書店】日本初ビジネス書専門書店「STYLE for Biz」の魅力
ファンを惹きつけてやまない本屋さんは何が違うのか?

【天狼院書店】日本初ビジネス書専門書店「STYLE for Biz」の魅力

知の範囲を広げていく「知の探索」と、特定分野の知を深めていく「知の深化」。経営学の世界では、両者をバランスよく進めることが、イノベーションの条件とされます。ビジネスパーソンにとっても、人生100年時代を豊かに過ごすうえで、新たな知にふれ続けることの重要性は高まる一方です。

事業をドライブするイノベーションの種を得たい――。そのために「知の探索」をする最適な場所の1つとして、書店員のこだわりが伝わる「本屋さん」があるのではないでしょうか。

ビジネスパーソンの英知の新たな源泉となり、既存の「本屋」の常識を超えていく。そんな「これからの本屋さん」と、その場を生み出す「中の人」にスポットライトをあてていきます。

第一弾は、2018年4月に池袋にオープンした、天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Biz。日本初、おそらく世界でも類を見ないビジネス書専門店です。店長の木村保絵さんに、STYLE for Bizがどんな世界観をめざしているのか、そして、ファンが次々に生まれていく天狼院書店の魅力の源泉についてお聞きしました。

めざすのは、ビジネスパーソンが通う「秘密結社的な場所」

── STYLE for Bizのコンセプトを教えてください。

STYLE for Bizのコンセプトは、ビジネスパーソンが通う「ファイナル・クラブ」です。「ファイナル・クラブ」というのは、そこでしか得られない最新の情報にアクセスできる、いわば秘密結社的な場のこと。ザッカーバーグがハーバード大学の男子学生によるファイナル・クラブに入れず、それを見返すためにフェイスブックをつくった、という話も有名です。
このファイナル・クラブのように、「ここに来ればビジネスに関する役立つ情報、重要な情報が手に入る」という場として、ビジネス書を専門的に販売する店舗をつくること。それが、天狼院書店代表の三浦崇典が1店舗目をオープンさせたとき以来の悲願でした。

ライター志望だった木村さんは、受講者が3000人を超える天狼院名物講座「ライティング・ゼミ」に参加していた。天狼院書店が大好きになり、1年前に入社。ビジネス書好きを評価され店長に抜擢された。

インターネットの普及前は、何か知りたいことがあれば、本屋に行くのが普通でした。ですが、インターネットが浸透して情報が膨大に増えた今、紙の書籍にのみ頼らなくてもいい時代になっています。それでも、「お客様に情報提供する」ことは、本屋の役割であり続けるのではないか。

そうした考えのもと、『READING LIFE』2017夏号で、本の「再定義」を行っています。本というと紙の書籍をイメージしますが、本来の「本」とは、「有益な情報」のことではないか、という提案です。著者に直接話を聞くとか、動画、ワークショップなど、形態はもっと様々であっていいはず。だからこそ、その情報を一番求めているであろうお客さんに向けて、一番伝わりやすいアウトプット方法を選ぶというスタンスでいます。

ライティング・ゼミ、マーケティング・ゼミのように、その道のプロから学ぶゼミや、著者を呼んだイベントのような「LIVE」。フォト部のような、体験型の「部活」。これらの活動も、「有益な情報」とビジネスパーソンをつなげるにはどうしたらいいかを考え抜いて生まれた形態なんです。STYLE for Bizで、著者イベントや読書会を開催しているのも、その一環です。

2017年の夏に発刊した、天狼院書店初の雑誌『READING LIFE』。コンセプトは「人生を変える」雑誌。

「20代の女性客がコトラー&ケラーの大著を買っていく」

── ビジネス書専門というのが斬新ですよね。日本では、年間約6000冊もビジネス書が出版されていますが、今までビジネス書専門の書店に挑戦していなかったのはなぜだろう、と気になりました。

一般的に、大型書店も含めて、書店の売上を支える主力商品は、小説や雑誌、コミック。ビジネス書単体で売上を立てるのは、なかなか難しいといわれています。そもそもビジネス書を販売できるのは、基礎体力がある書店だといえます。天狼院書店の場合も、まずはジャンルを絞らない店舗をいくつか出し、事業展開を進めてからビジネス書専門の店をオープンするに至りました。

── お客さんはどんな方が多いですか。

オープン前は、スーツを着た30~40代男性が多いかと思いきや、意外に20代の女性客が多いんです。女子大生が、1000ページにも及ぶマーケティングの名著、『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』を買っていって、驚いたこともあります。

元々ビジネス書を読むのが好きな人ももちろん来られます。ですが、「ビジネス書って敷居が高いと思って試す機会がなかったけど、駅前にこんな場所があるなら、一歩を踏み出してみよう」という人も、それと同じくらいいらっしゃるんです。

「コンテンツ1つ1つの質を高める」ことにとことん注力

── STYLE for Bizを含めて天狼院書店は、イベントからスピンオフで部活ができるなど、熱狂的なファンが多いと思っています。書店業界を取り巻く環境が厳しさを増すなかで、これだけの存在感を放っている秘訣は何なのでしょうか。

一貫して大事にしている方針は、「提供するコンテンツ1つ1つの質を高める」ことに注力しようというものです。天狼院は小さな店ですし、スタッフが豊富というわけでもない。選書ももっともっと磨き上げないといけません。
あくまで起点は、お客さんに喜んでいただくこと。そして、お客さんの人生が変わるきっかけになる本屋さんであり続けることだと考えています。

── コンテンツの質を高めるために、どんな工夫をしていますか。

まずは「ファイナル・クラブ」に見合うだけの選書を強化していきたいと思っています。2018年1月には、PHP研究所でビジネス書の編集を100冊以上手掛けてきた池口祥司が天狼院書店にジョインしました。彼の編集の知見によって、選書の厚みが出ていると思います。
本屋づくりは広義の「編集」。本屋にくる人のワクワク感をかきたてるように、書棚にどんな本を、どう並べていくか。たとえば、新刊の売れ筋ばかり並べるのではなく、ビジネスパーソンが読んでおくべきビジネス書の古典や王道となる既刊本を、どうアピールしていくのか。こうしたことを考えるのは、本の魅力をいかに読み手に届けるかを追求してきた編集者の目線と非常に似ているのです。

一冊一冊の本の“熱量”を届ける方法を考え抜く

── 著者イベントなどリアルな場を成功させるための工夫も知りたいです。

もうほんとに一冊一冊、魅力が違うので、それにあった伝え方もさまざま。逆に「こうしたらうまくいく」などとパッケージ化してしまうと、本それぞれの熱量が薄れてしまうかもしれない。だから毎回、試行錯誤です。

具体例としては、直近だと『暗闇でも走る』(講談社)の著者イベントがあります。著者の安田祐輔さんは発達障害を抱え、うつ、ひきこもりの経験から、「何度でもやり直せる社会をつくりたい」というビジョンをもつようになった。そして不登校・中退者向けの進学塾を運営されています。この本にはそんな安田さんの情熱があふれ出ていて、私の大好きな作品です。

暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由
暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由
安田 祐輔
講談社
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暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由
暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由
著者
安田 祐輔
出版社
講談社
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※要約は9月下旬公開予定!


ではお客さんにこの感動を心底感じてもらうには、どうしたらいいのか。直接安田さんの話を聞くだけでは、自分事として捉えてもらうには今一歩。そこで思いついたのが、参加者にも自分の経験を物語化して、発表してもらうというワークショップ形式でした。

ヒントになったのは、書籍に「人は自分自身の過去の体験を物語にすると、前に進める」と書いていたこと。そこでまずは誰にも見せないという前提で、挫折を乗り越えた経験などを、参加者の方に、手を動かして自由に書いてもらいました。そのうえで、他人に話してもよい内容に絞って、他の参加者や安田さんに発表してもらう。こういう時間を設けるほうが、安田さんが大事にしている世界観が、参加者にとって、より自分事になると思ったのです。当日は、閉店間際までお客さんが話し込んでいるほど盛り上がっていて、嬉しかったですね。

「悩んでいても、本屋に行けば“答え”がある」

── 木村さんが参加者のために、こんなにも力を注ぎ続けられる理由が気になります。

お客さんの反応を目の前で見られるからでしょうか。たとえば、お客さんがイベント終了後すぐに帰られたとします。「あぁ、あの人に響くイベントにするには何が必要だったんだろう?」と振り返る。天狼院の他のスタッフたちにも相談しますし、毎日が作戦会議です。

あとは、私自身、経営者の自伝や自己啓発など、ビジネス書を読むのが学生時代から好きだったんです。著者のイベントにはよく参加していて、そこでの数々の出会いが人生に大きな影響を与えてくれたんです。

── どんな出会いだったのでしょう?

例を挙げると、『トヨタで学んだ「紙1枚! 」にまとめる技術』(サンマーク出版)などの著書がある、浅田すぐるさんのイベントですね。心に刺さったのが、「動詞にごまかされずに動作に落とし込め」という教え。

たとえば「お客さんの立場で考えよう」「~~を意識しよう」と、抽象的な動詞でまとめると、聞こえが良いし理解した気になりがち。ですが、具体的なアクションが不明瞭なので、結局何も変わらないこともしばしば。そこで浅田さんは、目標などを「意識しよう」で終わらせず、「エレベーターに乗ったら必ず目標の紙を見る」という動作に落とし込んだ。この動作を実践し続けることで、次々に目標を達成していったそうです。

こんなふうに、仕事はもちろん人生全体においても、本やその著者からのアドバイスに支えられてきました。何か悩みがあっても、本屋に行けば答えがある。今度はそれを、多くの人に届ける番に回りたい、そういう想いが強いのかもしれませんね。

トヨタで学んだ「紙1枚! 」にまとめる技術
トヨタで学んだ「紙1枚! 」にまとめる技術
浅田すぐる
サンマーク出版
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トヨタで学んだ「紙1枚! 」にまとめる技術
トヨタで学んだ「紙1枚! 」にまとめる技術
著者
浅田すぐる
出版社
サンマーク出版
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── 最後に、ビジネスパーソンに向けて、木村さんのおすすめの本を教えてください。

お客様におすすめを聞かれて最初に紹介しているのは、リアル『下町ロケット』とも言われる植松努さんの『空想教室』(サンクチュアリ出版)。

こんなエピソードがあります。植松さんは外国のパーティーで趣味を聞かれ、「読書」と答えた。すると「君の書いた本を読ませてよ」と。いやいや読む側なんだと訂正したら、「自分の手でアウトプットを出していないなら、それは趣味でなくて単なる消費だ」という答えが。その考え方に衝撃を受けた植松さんは、「既存のものを消費するだけでは、真の満足は得られない。新しいものを自らの手で生み出していこう」と心に決め、自分でも本を書くようになったそうです。

私も何か新たなものをつくり出したい、文章を書くという専門性を磨きたい――。この本に後押しされ、天狼院のライティング・ゼミに参加したという経緯があります。
STYLE for Bizの店長としても、この考え方を大事にしながら、最先端の情報を求める人が集まり、その情報の質も上がり続ける場をめざしていきたいですね。




天狼院書店店主、三浦崇典氏の著書。小説仕立てでマーケティングの本質を学べる斬新な一冊! まずはその魅力の一部を要約で。

殺し屋のマーケティング
殺し屋のマーケティング
三浦崇典
ポプラ社
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殺し屋のマーケティング
殺し屋のマーケティング
著者
三浦崇典
出版社
ポプラ社
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木村 保絵(きむら やすえ)

北海道函館市出身。大学卒業後、フィリピンでNGO団体に所属し2年間活動したのち、帰国。北海道で国際交流センター職員やラジオ局のパーソナリティの仕事を経て、2014年に上京。2017年に天狼院書店に参画し、現在は2018年4月に池袋にオープンした「天狼院書店 Esola池袋店 STYLE for Biz」の店長を務めている。

天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Biz

所在地 〒171-0021 東京都豊島区東池袋1-12-1 Esola池袋2F

営業時間 10:30〜21:30

天狼院書店 公式サイト

天狼院書店 「Esola池袋店」STYLE for Biz 公式サイト

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文責:松尾美里 (2018/08/27)

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