会社の母子手帳で世界展開! 創業手帳・創業者 大久保 幸世氏の読書術
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会社の母子手帳で世界展開! 創業手帳・創業者 大久保 幸世氏の読書術

起業家向けガイドブック『創業手帳』を発行するビズシード株式会社代表取締役の大久保 幸世氏。

『創業手帳』とは、会社を起ち上げた時、誰もがまず取り組むべき資金調達、営業、経理、ITツールに関するノウハウが詰まった冊子のことで、毎月すべての創業者に無料で配布されます。創業の成功率を上げ、挑戦する人が増えることで、日本経済が活性することを目指しています。

インタビューを通じて、彼の経営者としての志と読書観に迫りました。彼の人生観・戦略眼に影響を与えた本は何だったのでしょうか?

起業に必要なノウハウは意外と同じ

起業までの経緯を教えてください。

大久保 幸世氏(以下、大久保):元々、大企業のノウハウをベンチャーへ移植するビジネスをやろうと思っていました。まずは、視野を広げ、ノウハウを学ぶために、保険のダイレクトマーケティングの世界に飛びこみました。その後、元々興味のあったITベンチャーを志望。色々な会社を受けたなかで、当時一番クレイジーだったのがやっぱりライブドアでしたね。面接ではガングロの副社長が出てきて、最終面接が堀江さんでした。当時のライブドアは非常に伸びていたし、整備されていない点が多い会社のほうが、これまでのノウハウが活きるだろうと考えました。整備されている会社のノウハウを、若いけれどもいろいろな仕組みが無い会社に持ち込んだら面白いんじゃないかと思ったんです。

ただ、想定外に整備されていなくてああいうことになったわけですが(笑)、現場の人たちは若くてエネルギーあふれていて面白い会社でした。

eコマースの事業部門に入ったものの、半年後にライブドア事件が勃発。会社の看板を一気に失うという経験をしました。ブランドがゼロどころかマイナスになってしまったんですが、起業するときもブランドは全くない状態からスタートするわけですから、この経験を会社員のままできたのはよかったですね。

その後、入社したのはネット通販の開業・運営支援を行うGMOメイクショップ。面接では履歴書だけでなく30ページくらいの事業提案書を持って行って社長にプレゼンしました。取締役として様々な事業や会社の仕組みを作りました。保険会社、ライブドアで培ったノウハウが活きたと思います。今では2万2000社が利用し、流通総額1400億円、法人向けのECパッケージでは日本一のサービスへと成長しました。

『創業手帳』を始めようと思ったきっかけ、課題意識はどういったものでしたか。

大久保:色々な起業家と話して気づいたのは、彼らは「自分が特別な苦労をしている」と思っている方が多い気がしました。確かにそういう面もあるのですが、実際には困っていることの本質は創業期には、どの会社も似ていたりします。すごく独創的なアイデアを持っているスタートアップだったとしても、例えば資金調達、販促、採用のノウハウなどは、他社とも共通している部分が多いです。

企業が存続するには、致命的な弱みをなくさなくてはいけない。事実、創業1年で会社の約3分の1がつぶれていく。本来すごく価値のある会社が、ノウハウがないゆえにつぶれるのは、もったいない。通販業界では「係数がゼロだと、いくら他が良くても掛け算がゼロになる」という方程式があるのですが、この発想をあらゆる業種に適用することで、明らかにゼロになりそうな係数をつぶせると考えました。

ゼロ×100はゼロなのですが、コンサルをする時に手っ取り早いのが、ゼロの係数をつぶすことなんですね。

子どもが産まれたときには母子手帳が配られますが、会社を設立したときにガイドブックが配られることはありません。そこで「会社の母子手帳」という形で『創業手帳』を毎月約1万社立ち上がるといわれる法人に向けて配布しようと考えました。当社ではWEBやソーシャルのメディア、セミナーもやっていますが、紙媒体は依然として強力なメディアなので、あえてWEBの時代に紙で届けているというのがあります。

「メディアでありながら、メディアではない」理由

創業手帳を配るなかで、起業家の方々からどんな反応を得ていますか。

大久保:ありがたいことに「素晴らしいですね」という反響をいただくことが多く、アンケートや資料請求、全国セミナーなどレスポンスを取る仕組みがあり詳細に意見を聞いています。しかし、普通の出版社よりも読者の声を聴いていますが、一方で「おもしろかったかどうか」という評価はそこまで気にしていません。マスコミは自分たちの出版物が「(自分たちのコンテンツが)いかに多くの人に面白いと思ってもらえたか」「結果として売れたか」という指標を大事にするのに対し、『創業手帳』はあくまで私たちが伝えたノウハウがいかに創業者の行動に結び付いたかどうかを成果の指標にしています。極端なことを言うと、読者の評価が良くても悪くてもかまわないですが、そのノウハウで創業成功率が上がれば目的は達するわけです。

もちろん、読んでいただくために面白い内容にしていますが、「どれだけ創業の成功率アップにつながったか」「行動につながったか」を重視しています。そういう意味では『創業手帳』は「メディアでありながら、メディアではない」といえるのかもしれません。

本誌やサイトには、経営者や財務・法務・PRなどの各分野の専門家が続々登場されています。こういった専門家が協力してくれる秘訣は何だとお考えですか。

大久保:創業というのは社会全体で盛り上げないといけないことだと思います。日本は特に創業が少なく、このままいくと経済的に外国において行かれてしまいます。そういう危機感は知見が高い、最先端の方ほど持っており、創業成功率を上げるという創業手帳の発想が面白いので乗っていただいているということはあると思います。あとは、大手資本でもない完全独立資本のベンチャーの弊社が全ての創業者にリアルに印刷して配布して日本中で研修して回るという、とてつもなくお金と労力がかかることをやっている、ということも意気に感じてご理解、ご協力をいただくケースが多いのかもしれません。

使命感と、社会的価値は車の両輪なのですね。御社は2014年11月にフィリピン・セブ島に海外支社を立ち上げ、2015年1月から「Founders guide」を開始されましたね。その狙いについてお聞かせください。

大久保:「Founders guide」は、英語圏の人が英語圏で起業するときに役立つノウハウを伝えるメディアで、世界の起業成功率を上げようというのが狙いです。私たちのように起業のノウハウを紹介している冊子は海外でも他になく、オリジナルで革新的なものは海外でも十分通用するだろうと。

アメリカでは月間50万社が創業しているといわれ、英米の人口を考えると、マーケットサイズは日本の約6倍にも及びます。このマーケットサイズという観点は、非常に重要な観点で、英語圏に展開することで、私たちのコンテンツをより多くの人に届けることができます。

「なぜフィリピンのセブ島に拠点をつくったの?」とよく聞かれるんですが、戦略的にフィリピンしか考えられません。アジアにある英語圏の国はフィリピンとシンガポールだけ。フィリピンは1億人もの人口を有し、日本から4時間で行ける親日国家です。

またフィリピンのトップ層は非常に優秀で、当社のセブ支社には4か国語を使いこなす人もいます。セブ島に支社を置いたのは、こうしたフィリピンの優秀な人材の雇用を作りだす目的もあります。

現在、WEBメディアで展開していますが、facebookファンは3万人を超え、北米を相手にした日本のメディアとしては異例の成功をおさめています。

マーケットサイズという観点も海外進出では大事になるのですね。

あえて異分野にふれ、歴史の本から「人間関係の力学」を学ぶ

大久保さんはたくさん本を読まれると伺いましたが、どんなジャンルの本を読まれますか。

大久保:一般教養の本など、できるだけ幅広いジャンルの本を読みますね。例えば歌舞伎の本のように、ビジネスとは全然違う本を読んだほうが視野を広げられるんです。本は、何かに人生を賭けた著者の生き方や、彼らが一生をかけて得た知識の集大成。それを数時間で深く学べるのだから、こんなに得なものはない。一流の歌舞伎役者の本を読むことで、普通に生きていたら交わらない人の考えを知れるのは素晴らしいと思います。

これまで読まれた本のなかで、人生に大きな影響を与えた本は何ですか。

大久保:高校生の時に読んだ、ヘンリー・フォード(※1)の『藁のハンドル』ですね。この本は、ビジネスと社会貢献がリンクすることを教えてくれましたし、起業のきっかけになりました。

起業前は1年ごとに読書のテーマを決めて、司馬遼太郎を全巻読破する「司馬 遼太郎イヤー」、塩野七海を全巻制覇する「塩野 七生イヤー」ということもやりました。塩野さんの『ローマ人の物語』を読めば、ローマの歴史から視野を広げることができます。

テクノロジーは変わりますが、人の行動や感情、行動の力学はそうそう変わりません。こうしたものを学べるのが歴史の本。仕事で上のステージに行けばいくほど「広い視点」を養うことが重要になってきます。

(※1)自動車会社フォード・モーターの創設者であり、アメリカの中流階級の人々が購入できる初の自動車を開発・生産した。

「7冊同時読み」で「知恵の融合」を起こす

本の内容を血肉にするために工夫されている点はありますか

大久保:線を引いたり付箋を貼ったりという特殊なことはせず、ただ集中して読むようにしています。あとは、色々なジャンルの本をまぜて、7冊同時に読む方法を実践しています。本って当たりはずれがあると思いますが、7冊も読んでいたら1冊くらいは面白い本に出会えますよね。あとは同時に読んでいると読書の期間が延びるという効果もあります。1日で1冊を読み通すより、あえて切り替えずに1週間で7冊読み続けたほうが、それぞれの本の内容が融合し、新しい発想が出てくる気がします。

頭のなかで化学反応が起こりやすそうですね! 最後に、フライヤー読者にお薦めする本を教えてください。

大久保:お薦めの1冊目は、松岡 修造さんの『日めくり まいにち、修造』です。元気がないときにぜひ読んでください。

2冊目は元スターバックスCEOの岩田 松雄さんの『リーダー絵ことば イラストでわかる人の動かし方』で、これからリーダーになるエッセンスを身につけたい人にはピッタリです。

3冊目は吉越 浩一郎さんの『社長の掟』です。吉越さんは トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社の代表として19年連続増収増益を達成するだけでなく、時間外勤務をほぼゼロにしたことで有名です。「人生は仕事だけではない。色々なことを実現するのが人生だ。そのためにスピードを上げることが大事」ということを教えてくれます。

最後のお薦め本は、ライブドア再建という難業を成し遂げた平松 庚三さんの『君は英語でケンカができるか?』です。海外とビジネスでやり合うにはタフな交渉力が不可欠になります。そうした英語力を身につけられるのはもちろん、平松さんご自身のビジネス裏話も面白い。フライヤー読者の方々にぜひ読んでほしい一冊ですね。

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文責:松尾 美里 (2015/08/21)

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