21世紀のリーダーは英語やMBA よりも「コーチング」を身につけよ
元インテル株式会社 執行役員 板越 正彦

21世紀のリーダーは英語やMBA よりも「コーチング」を身につけよ

フライヤー×サーキュレーションの「知見と経験の循環」企画第5弾。

経営者や有識者の方々がどのような「本」、どのような「人物」から影響を受けたのか「書籍」や「人」を介した知見・経験の循環についてのインタビューです。

今回登場するのは、元インテル株式会社 執行役員の板越 正彦さん。

インテルに21年間在社された経験を活かし、2012年にBCS認定ビジネスコーチングの資格取得。経営者だけでなく、学生や若い起業家にもコーチングやワークショップを行ない、現在はエグゼクティブ・コーチングを行うビジネスコーチ株式会社の顧問や、インターネット広告のベンチャー企業である株式会社ヒトクセのアドバイザー、新規事業開発のメンターなどを兼任。これまでの受講者・コーチングクライアントは累計で約700人を突破し、絶大な支持を集めておられます。

「英語やMBA よりも、コーチングが21世紀には重要」「コーチングは訓練次第で身につけられるスキル」と語る板越さん。

コーチングがなぜ重要なのでしょう? ビジネスパーソンがコーチングの考え方を人生に活かすにはどうしたらいいのでしょうか?

コーチングは漫才に似ている 相手の心が動くポイントを見極めるには?

「英語やMBA よりも、コーチングが21世紀には重要」とおっしゃっていますが、その理由をお聞かせいただけますか。

板越 正彦さん(以下、板越): 英語もMBAももちろん必要ですが、多様性の時代において、自分とタイプや価値観が違う相手とチームと一緒に、どれだけ気持ちよく仕事ができるかが一番大事になってきたんです。相手のタイプに合わせて対処することが求められるようになった。その人がどんな性格で、何が好きで、どんなときにモチベーションが上がるのか。それを知ってはじめて信頼関係を築けます。

日本人の場合、コーチングのスキルをちょっと勉強するだけで、相手に気づかせる質問する力が伸びやすい。日本人は人の話を聞きますから。アメリカ人も中国人もインド人もなかなか聞かないでしょ(笑)相手の話を、相手の理解しやすいアナロジー(たとえ話)に言い換えたり、具体論や抽象論をまじえたりして整理してあげると、相手は喜ぶし、話に説得力がでるんですよ。

コーチングは漫才と似ているところがあって、「あ、これはこういうオチかな」とパターンがわかると、返しがはやくなる。若いうちから意識してやれば、対応できるパターンが増えていきます。世の中の人はいくつかのタイプに分かれます。成果を求める人、データを求める人、新しいことが好きな人。色んな人がいますが、日本人の6割は「相手やチームを幸せにできることが自分も幸せ」というタイプです。このポイントを見極めて、どうチームをつくっていくかが大事なんです。

そうした力を高めるにはコーチをつけるのが一番だと思いますが、20代の若手にはなかなか敷居が高そうです。そんなときには、どうやって鍛えればいいのでしょうか。

板越: コーチングのスキルは、英語力や雑談力と同じように、「試す」ことで自分でも身につけることができます。ポイントは、相手が何に関心があるのかを、色んな着眼点から探っていくこと。これは就活でも営業でもクレーム対応でも非常に効果的です。面接官に「今までの仕事で何が面白かったですか?」と質問をふって、反応を見ればいいんです。

昨年、地元の地域の区長をしたんですが、地域のルールを守らず、近所の人が手を焼いているおじいさんがいました。僕はまず相手の話を聞きにいったんです。そしたら、そのおじいさんが過去に柔道をしていたことがわかり、「柔道、強かったんですね~!」と話すうちに打ち解けて、最後は地域のルールを守ってくれるようになりました。

リーダーは「テフロン」を身につけよ

仕事だけでなく地域の活動でもコーチングを活かしておられるって、素晴らしいですね! 人を動かす場面では非常に役立つのですね。

板越: 誰かに何かをやってもらうには、相手のモチベーションが上がるポイントを探ることが大切です。そのためには、まず自分から相手に質問して、話を聴かないといけない。

ですが、人に近づくことを恐れている人が多いですね。昔は飲んで悪口を言ってもそれっきりでしたが、今はSNSの時代だから、悪口が文字で残り、それを見た本人は心を痛め続けるわけですよ。僕なんて嫌なことを書かれたらすぐ「ブロック、削除、拒否、フォローしない」だから(笑)建設的でない嫌な批判は自分から遮断しないとね。

今後リーダーになっていく人は、「テフロン」を身につけていったほうがいいですね。テフロンというのはテフロン加工という言葉のとおり、「何を言われても傷つかない」という意味。特に女性には、相手の言葉を気にしすぎる人や、完璧主義を目指す人が多い。女性のリーダーのコーチングでは、「人の言うことをいい意味で気にしないで」「自分の意見を言う勇気をもってポジションをとろう」というメッセージを伝えています。この二つを意識してできることをコツコツするだけで、すごく自信がついて、伸びる人が多いです。

どれだけトレーニングをしても、変わらない人もいらっしゃるんですか。

板越: もちろんいます。時間をかけて、相手の成功体験や長所を探し、「できましたね!」と伝えるようにします。ただ、中には、どうしても変わらない人もいます。高齢の親にいくら「健康に悪いからタバコやめて」と注意しても変わらないでしょ?(笑)でも、もしかしたら「タバコやめないと孫に嫌われるよ」と言えば響くかもしれない。そのポイントをいかに試行錯誤して見つけ出すかという長い旅ですよ。

バケットリストで常に未知の世界へ飛び込む

相手に響くポイントを探ることが大事なんですね! 板越さんが新しいトレンドをつかむために実践されていることは何ですか。

板越: バケットリスト(※注)をつくって、常に新しい挑戦をするようにしています。例えば今週末はhtml/CSSのスパルタキャンプに行きます。IT業界を目指す人にとって、なぜhtmlを学ぶのが大変なのかを知りたいと思って。2週間に1回くらい、無理のない程度に新しいことをやってみるのが秘訣です。

(※注 「死ぬまでにやりたいことリスト」のこと。棺桶リストとも呼ばれる。)

無理のない程度に新しい世界に飛び込むのが、挑戦を楽しむコツなんですね。こうした挑戦を続けていて、ご自身にどんな変化がありましたか。

板越: 変化はいっぱいありますね。僕は毎年目標を立てていて、富士山に登るとか、違うタイプとゴルフするとか、伊勢神宮のそばで滝に打たれるとか、色々やっています。例えば、これまで地味な安物•ダブダブの服ばかり着ていたので、思い切って50万円かけてスタイリストをつけたら、見違えるように変わったと言われました。

あとは、平日ゴルフに行くと、70~80代の元気なおじいさんたちと世間話することができて、これが実は勉強になるんですよね。炎天下で動き回ってもピンピンして、「家でじっとしてるほうが熱中症になるんだよ。」と言う彼らの姿から、「健康への投資が人生では一番ハイリターン」なんだなと教わりました。

周囲のどんな人、ものからも学んでおられるのですね! 板越さんは、これまで自己啓発の本を千冊ほど読まれ、ブログでも多くの書評を書かれています。中でも、ご自身のキャリアの転機を支えた本は何でしたか。

板越: 一つあげるとすると、カーネギーの著書『道は開ける』 ですね。20~30代に営業で大変だった時期を支えてくれた本です。「潜水艦は水を遮断する」という一節があって、「過去や未来を心配するのではなく、今日1日だけを考えよう」という内容が印象に残っています。くよくよ悩んで、無駄なことにエネルギーを使ってはダメなんだと学びました。もちろん全く悩まないわけにはいかないけど、ちょっと違うことをして、立ち直りまでの時間をはやくするのが大事です。それから、自己啓発の本を読み、仕事に活かすようになりましたね。

一流の営業パーソンは、ダークサイドを持っているんですよ。顧客の社長のおじいさんにわざと「生きてる?」って電話したりとか(笑) 無礼で叱られる気がしますが、慇懃無礼すぎるといつまでたっても懐に入れず、距離が縮まらないんですよね。

板越さんは、最初に入社した会社で英語力をメキメキ伸ばし、MBAにまで行かれています。英語力を磨きたいというビジネスパーソンにおすすめの学習方法は何ですか。

板越: カジュアルな場でどんどん英語で話しかけることです。特に一緒にご飯を食べるとき、先に少し酔っておくと、ミスを気にせず質問できる(笑) プールバーはいい練習になります。暇そうな人に話しかけていました。“Would you ?”とか“That’s great !”って言えば、会話は弾みます。最近ではスマホで撮った写真も話を広げる小道具として使えますよね。

文法を気にするより、すべらない話をストックしておくほうが大事。国内にいても、観光客に“May I ?”と英語で話しかけてみれば、相手は喜びますよ。流暢に話す必要なんてないんですから。

それなら今日からでも試せそうですね! なんだか私も気が楽になりました。英語学習もコーチングも「失敗をおそれず気楽に試すこと」が大事なんですね。ありがとうございました。

☆板越さんイチオシの『道は開ける』の要約はこちらから☆
道は開ける
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デール・カーネギー,東条健一(訳)
新潮社
道は開ける
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著者
デール・カーネギー 東条健一(訳)
出版社
新潮社
ビジネスノマドジャーナルは こちら から! インテル元執行役員の板越さん。 20年を過ごしたインテルでは、アンディ・グローブやパット・ゲルシンガーのような 天才的かつ激情型のリーダーたちの激しいマネジメントを目の当たりにします。 自身も「激しいタイプ」という板越さんが、コーチングの威力を実感した出来事とは?
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文責:松尾 美里 (2015/09/11)

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