『トヨタの自分で考える力』の著者が明かすアイデアを生み出す秘訣
株式会社プラスドライブ代表取締役CEO 原マサヒコ

フライヤー×サーキュレーションの「知見と経験の循環」企画第6弾。

経営者や有識者の方々がどのような「本」、どのような「人物」から影響を受けたのか「書籍」や「人」を介した知見・経験の循環についてのインタビューです。

今回登場するのは、トヨタNo.1メカニックの座に輝き、現在は株式会社プラスドライブ代表取締役CEOを務める原マサヒコさん。

神奈川トヨタ自動車にメカニック(自動車整備士)として入社し、5000台もの自動車修理に携わり、技術力を競う「技能オリンピック」で最年少優勝を果たしています。IT業界へ転身後は、WEBマーケティングを推進する株式会社プラスドライブを設立。

『トヨタの自分で考える力』(ダイヤモンド社)をはじめ、多くの書籍を書かれており、セミナーの依頼が引きも切らないといいます。

原さんは、どんな思いで本を書かれ、そしてどんな風に読書から学んだことを、キャリアに活かしてきたのでしょうか。

実話小説に込められた想いとは?

原さんは、親御さんからの勘当、職場でのいじめという逆境を乗り越え、トヨタ技能オリンピックNo.1を勝ち取り、そこでの経験を著書『人生で大切なことはすべてプラスドライバーが教えてくれた』で書かれています。先輩の教えによって成長していく主人公の姿に涙を流さずにいられなかったのですが、執筆の背景には、どんな想いがあったのでしょうか。

原 マサヒコさん(以下、原):本を書いたのは、メカニックの業界にこんな素晴らしい先輩がいることを伝えたかったからですね。登場する石田さんは、若くして亡くなられましたが、仕事を通じて多くのことを教えてくださった方でした。

この業界は体力的にもキツいし、お客様の命を預かるという責任感が求められる、危険と隣り合わせの仕事。同僚が修理中の車の下敷きになって亡くなったこともあります。ストーリー形式の本を通じて、読者にメカニックの世界を追体験してもらうことで、この業界のイメージや地位向上を図っていきたいという思いも込めています。

実はこの本、日産の整備士専門学校の課題図書になっています。以前、車も見たくないと言うくらい整備士の仕事が嫌になって登校拒否をしていた女子生徒が、本書を読んで「やっぱりメカニックになろうと元気が湧いてきた」と言ってくれて。再び学校に通い始めるようになったと聞き、こうした読者が一人でも増えてくれればと思いましたね。

原さんの作品はストーリー形式というのもあって、非常に感情移入できて、あっという間に読めてしまうのですが、この面白さの秘訣は何ですか。

原:実は小説を書いたのは初めてだったのですが、「どうしたら面白くなるだろう」と研究の日々でした。売れている小説や、小説の書き方の本から面白いストーリーの構成や書き方を学びました。東野圭吾さんはどう書いているのだろうとか。

原稿を書いていて「展開が単調になってきたな」と感じたら、人気の映画を見に行っては面白いと感じた要素を分解し、掘り下げていっていましたね。

原さんは研究熱心で本もかなり読まれていますが、小さいころからよく本を読まれていたのですか。

原:そうですね。小学校時代、家の目の前に図書館があったので、色々な本を読んで育ちました。書店だと、自分の好きなジャンルとか決まったジャンルから本を選びがちですが、図書館なら、どんなジャンルでも気になった本を気軽に手に取って読めるのがよかったですね。

最新作の『トヨタの自分で考える力』では、トヨタ秘伝の思考法について執筆されています。こうした思考法や仕事の進め方に関する本を書こうという想いの源泉はどこにあるのでしょう。

原:ITやWEBマーケティングなどの業界を転々としていると、トヨタの現場で学んできたことが意外にほかの業界には行きわたっていないなと気づいたんです。トヨタの現場での学びは、業界問わず役に立つ本質だと思い、工具を持って行動し続けてきた自分ならではの経験をもとに、その本質を伝えていきたいと考えるようになりました。

あとは、さっき話したように、私のメンターのような存在だった素晴らしい先輩から教わったことを、本で伝えていくことも自分の使命なんじゃないかなと思っています。

本を書かれる背景にはそうした使命感があるのですね。 トヨタ時代、原さんはカイゼンのアイデアを競う「アイデアツールコンテスト」で2年連続全国大会に出場されています。アイデアを生み出すための肝はズバリ何だとお考えですか。

原:一つは目的意識。現場の改善のアイデアを競うコンテストなので、「同僚や先輩よりも先に改善点をみつけてやる」という意識で仕事に臨むようになりました。そうしたら、心理学のカラーバス効果(※1)のように、漫然と見ていたら気づかなかったような、アイデアのもととなる課題が目に入ってくるんです。

二つ目は、かけ合わせ。世にアイデアは出尽くしていると思うのですが、あとは、何とかけあわせるか、「かけあわせの妙」みたいなものが、いいアイデアを生み出すために必要ではないでしょうか。まったく異なる業種ではやっていることを、自分の業種にもってきたらどうなるのか?とか。『もしドラ(※2)』が200万部を突破する大ベストセラーになったのも、ドラッカーという経営の大御所に、女子高生という意外な要素をかけあわせたのが人気のもとになったのだと思います。

※1 カラーバス効果:意識していることほど関連情報が自分のところに舞い込んでくること。

※2 もしドラ:「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(ダイヤモンド社)

書籍の執筆や講演活動など、数々のアウトプットをされる中で、ご自身のインプットの量や質に変化はありましたか。

原:アウトプットを前提に、良いインプットを取り入れるという意識が強まりました。IT業界では、「ガベージイン・ガベージアウト」という言葉があります。どんなに優秀なシステムでも、ゴミを入れたらゴミしか生まれないという意味です。同じ本を読むにしても「同僚にこのテーマを伝えよう」とか「講演のネタに使えるかも」といった意識があれば、吸収の度合いが全く変わってきます。

また、インプット自体の質を高めるために、脳科学で言われている「一番創造性が働く時間帯」を活用することも大事です。創造性を発揮しやすい午前中を執筆にあてて、商談がうまくまとまりやすい午後2時以降にアポを入れるようにするなど、行動の時間帯も意識していますね。

インプットの質が最大化する時間帯、私も意識してみようと思います! これまで読まれた本の中で、ご自身の生き方や考え方に影響を及ぼした本は何でしたか。

原:仕事面で影響を受けた本は本田直之さんの『レバレッジ・シンキング』です。どんな場面でも、「どこにレバレッジ(てこ)をかければ最大の効果が出るだろう」と常に考えるようになりました。

例えば、コールセンターの残業時間が増えているという課題解決においても、同じような問い合わせが起きている真因を考え、FAQを整備することで問い合わせを減らすという取り組みを行いました。これも、最初だけFAQ整備という負荷がかかりますが、これがてこになって、その後の生産性が飛躍的に向上するんです。

自分の生き方に影響を及ぼした本といえば、終末期医療に携わる大津秀一医師が書いた『死ぬときに後悔すること25』という本ですね。死期が迫っている方々が共通して「こうしておけばよかった」とおっしゃっていることが書かれています。もっと家族との時間を持とうとか、親を大事にしようとか。誰も「もっと仕事しておけばよかった」とは言わないんですよね。これを読んで、いずれ死を迎えるときは満足した状態でいられるような生き方をしようと思うようになりました。

今後、原さんが挑戦したいことを教えてください。

原:『人生で大切なことはすべてプラスドライバーが教えてくれた』を映像化したいですね。実は出版直後にも映画化やドラマ化の話が進んでいました。ところが、東日本大震災が起き、エンターテイメント全般のトーンが変わり、立ち消えになってしまったんです。

やりたいことは口に出し続けていると、チャンスがやってくると信じているので、ぜひ夢を現実にしたいなと思っています。

常に新たな分野へと挑戦し続けてきた原さんの言葉だからこそ、胸に響くお話ばかりでした。ありがとうございました。

☆『トヨタの自分で考える力』の要約はこちらから☆
どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力
どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力
著者
原マサヒコ
出版社
ダイヤモンド社
ビジネスノマドジャーナルは こちら から! トヨタ技能オリンピックでの最年少優勝を経て、トヨタの現場で培った思考でIT企業を改善してきた原マサヒコさん。 メカニックからIT企業へと異業種への転身も大きな成功を収めている原さんの「キャリアドリフト」という考え方とは?
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文責:松尾 美里 (2015/09/16)
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