クラウドワークスが日本一のサービスになれた訳
『起業の教科書』 出版記念スペシャルインタビュー vol.2

クラウドワークスが日本一のサービスになれた訳

フライヤーでは『7人のトップ起業家と28冊のビジネス名著に学ぶ起業の教科書』の出版にあたり、トップ起業家・経営者に成功の秘訣をインタビューさせていただきました。サイトではインタビューの一部を紹介します。

インターネット上で仕事を発注・受注することができる日本最大級クラウドソーシングのサイト、「クラウドワークス」。

今回登場するのは、その運営を行うクラウドワークスの代表取締役社長CEO 吉田浩一郎さんです。

── クラウドワークスの事業内容をご説明いただけますか?

吉田浩一郎氏(以下、吉田氏): クラウドワークスは「クラウドソーシング」の会社です。クラウドソーシングというのは、クラウド(Crowd、群衆)に対するアウトソーシングのことを指す造語。

つまり、これまで企業に外注していた仕事を、インターネットを通じて個人に外注する、というものです。

日本では少子高齢化によって労働力が不足していくことを懸念する声がありますが、インターネットを通じて在宅で仕事ができるようになれば、眠っている労働力を活かすことができます。定年に関係なく働くことができるし、子育てママも空いている時間を利用して働くことができる。実際、クラウドワークスに登録するメンバー(受注者)の最高年齢は85歳。70歳代で活躍なさっている方も大勢いらっしゃいます。

クラウドワークスに登録する会社は現在、11万社、ユーザー数は76万人を突破しました(2015年11月時点)。しかし、日本の潜在労働力は6千万人ほどあると考えているので、クラウドワークスを利用する方はこれからさらに増えていくと予想しています。

── 社会的意義のある、素晴らしい事業ですね。クラウドワークスを起業した経緯について教えていただけますか?

吉田氏: クラウドワークスは私にとっては2度目の起業です。実ははじめての起業は失敗に終わってしまいました。

手当たり次第に何でもやってみようと思い、ホームページの作成を請け負ったり、フランスから雑貨を輸入したり、上海へワインを輸出したり。最終的にはベトナムで日本のアパレルを販売なども行っていました。何とかお金は入ってきたのですが、結局世界を変えるようなことは何もやっていなかったし、本当の意味でお客さんにメリットを提供している自信もありませんでした。

そんな時に、一緒に事業を運営していた役員が、取引先を連れて離反してしまったのです。今後の会社の運営をどうするか思い悩んでいた2012年の年末、ある上場企業の方からお歳暮が届いたのです。それまでお歳暮というのは形式的なものだと思っていたのですが、孤独だったこともあって、とても嬉しかったのを覚えています。このとき、人から感謝されることが仕事の意味だということに気がつきました。20代のときに経営者の本をたくさん読んで、多くの経営者が「本当の意味で人の役に立つことをしないと経営は続かない」と書いていたけれど、当時は半信半疑でした。36歳のこのとき、はじめて納得しました。

仕事をしていくなかで、人の役に立って、人からありがとうと言われること。これが何よりも重要だということ、そして、人は一人では生きられなくて、人とのつながりの中で生きているのだということを知ったんです。

そこで、自分が役に立つことは何だろうと考え、何人かの投資家を訪問しました。そんななか、サイバーエージェント・ベンチャーズの田島社長から「海外で流行っているクラウドソーシングという事業があって、法人営業一筋の吉田さんには向いているのではないですか」という助言をいただいたのです。

お話を伺って、「これなら自分の経験も活かせるし、社会的意義もあって人の役に立てる。これならできる!」という確信を持ちました。そこで車を売って、貯金を全部投入して、退路を断ち、クラウドワークスを創業しました。

── 2度目の起業にあたって、最初に投資家の助言を求めた背景は何だったのでしょう?

吉田氏: 多くの起業家が、事業のアイデアは自分で考えて実行するのが正しい、と思っています。私も初めて起業して3年間経営をしてみるまではそう思っていました。

しかし、2回の起業を通じて思うのは、成長市場を見つけるのは社長よりも投資家の方が上手いということです。なぜなら、起業家の多くは自分が興味を持っていることにしか関心がなく、自分が関心を持っていることについて、「この分野に市場があるはずだ」と自己肯定したがる傾向が強いからです。要するに、マーケットインではなくプロダクトアウトで考えてしまいがちなのです。

一方、投資家の視点で見れば、リターンを最大化させるには一番伸びている市場に投資することが一番効率の良い方法です。彼らはさまざまな市場を俯瞰して、どの市場が一番伸びるかを常日頃から考えています。投資家の方が、成長市場を見つけるのが上手いはずだ、というのは間違っていなかったと思いますね。

── 創業し、サービスをスタートして流れに乗せるまではパワーが必要だと思います。どのようにメンバーや企業を集めたのでしょうか?

吉田氏: 創業期の限られた資金でプロモーションをするためには、「共感」を主体としてソーシャルで広めていく、というのがキーになります。クラウドワークスではサービスリリース前に、いろんな方面に足を延ばしてイベントに出展したり、ツイッターで連絡を取ることで、フリーランスで活躍する方々一人ひとりにお会いして協力を打診しました。そういった方々の顔写真を30~50人分、サイトのトップページに掲載して、サービス事前登録のプレスリリースを出したところ、顔写真を貸してくれた方がツイッターやフェイスブックで拡散してくださいました。これが、多くの人が協力してくれているサービスということを印象付けたのか、サービスリリース前にもかかわらず、日経新聞に取り上げていただきました。そのおかげで、2か月足らずで1300人もの方に登録していただくことができました。

次に、企業から仕事を外注してもらうべく営業に注力しました。仕事の外注ニーズを得るため大企業からベンチャーまで規模や分野に関係なく、さまざまな企業を回りました。そして、30社から仕事をいただいたところで、2012年3月21日に正式にサービスをリリースしました。事前登録の告知が前年の12月のことだったので、実に3か月間はずっと営業をしていたことになります。メンバーも企業も、いろんなバリエーションの人や仕事を集めました。

── ほかに工夫したことはありましたか?

吉田氏: 流行っているように見せるための工夫をしましたね。新しいウェブサービスを始めたときにありがちな失敗が、「スタートを聞き付けて訪問してみたら、会員が数十人しかいなかった」というパターン。こういうサイトには2度と来てもらえません。

お店が新しくオープンしたら、花を並べたり行列を作ったりするように、ウェブサービスでも、にぎやかな雰囲気作りが大事だと考えています。

私たちはこの「盛況感」のある雰囲気を出すために、あえてUIを悪くしました。たとえば、サイトの1ページあたりに5つの仕事を掲載して、一つ一つの仕事の縦幅を大きくしました。絞り込み検索機能も付けていなかったので、30件の仕事を全部見るには6ページ分見なくてはいけないから結構大変なのです。1300人のワーカーについても、絞り込みができないようにすることで、お仕事を発注する企業側に「ワーカーはこんなにたくさんいるのか」という印象を与える狙いがありました。

── そうやってスタートダッシュに成功したのですね。事業が急成長していくなかで、運営上、工夫された点はありますか?

吉田氏: プロダクトが完成形に到達するまでは、UX改善のみに注力して、営業、広告、SEOはしない、と決めていました。多くのベンチャーはサービスをスタートすると、なんでも全部一斉にやろうとしてしまいますが、それは間違いです。きちんとサービスが改善されたあとでグロース施策に取り組まないと、費用対効果の計測がぶれると思います。

クラウドワークスでは、新規ユーザーの会員登録がスムーズにできるようになってから、SEOやオーガニックのトラフィックによってこれくらい流入するのだということを理解し、広告を始めました。

── 講演やメディアへの露出も積極的にやっていらっしゃいましたね。

吉田氏: 講演やメディアというのは、自分たちの価値を伝えていただける協力者であると考えています。決まった通りのことを言わずにそのときそのときに新しく話せることは何か考えて、1回1回、真摯に向き合ってきました。その結果、「話を聞けば何か面白いことが出てくるかもしれない」と思ってもらえたのではないでしょうか。

── これから起業しようとしている人にメッセージをいただけますか?

吉田氏: 起業したいならば、一刻も早く起業するべき、ということですね。いきなり起業しろと言われても、アイデアがないという人もいるかもしれないけれど、そういう状況に追い込まれないと人は一歩踏み出すことができないと思います。全部の準備が整ってから起業したい、と考えていると、いつまでたってもできません。

起業するときのコツは退路を断つこと。友達や前職の仲間とは半年くらい連絡とらなくても、その縁が無くなることはありません。起業で結果出さないとだめだ、それ以外のものは我慢する、という時間をもつことが重要であると思っています。そうすると、一個のことに集中しているので失敗したときに学べるのです。

起業において重要なのは、成功か失敗かが早くわかることであって、成功か失敗かどちらかよくわからない状態が一番良くない。だいたいの社長は失敗を嫌うので、何となく失敗していないように立ち振る舞うけれど、それが結局、成長機会を失わせている。与えられたお金と時間のなかで失敗したら、すいません!と言って謝ればいいんです。

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文責:松尾 美里 (2015/12/25)

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