私はこの本を読んで8ケタ稼ぐミリオネーゼになれた
外資系企業で戦い抜く力を身につけるには?

フライヤー×サーキュレーションの「知見と経験の循環」企画第12弾。

経営者や有識者の方々がどのような「本」、どのような「人物」から影響を受けたのか「書籍」や「人」を介した知見・経験の循環についてのインタビューです。

今回登場するのは、事業開発コンサルタント・声楽家として活躍されている秋山 ゆかりさん。インターネット・エンジニアを経て、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の戦略コンサルタントを務め、イタリアへ声楽留学。帰国後、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長等を歴任。2012年に株式会社Leonessaを起業し、事業開発コンサルティングを行っています。

『ミリオネーゼの仕事術【入門】』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『考えながら走る~グローバル・キャリアを磨く「五つの力」』(早川書房)等を出版し、女性のキャリアのロールモデルとしても脚光を浴びておられます。

活字中毒末期症状というほど読書をこよなく愛し、本から得た知恵をキャリアに活かしてきた秋山さん。彼女のキャリアの節目を支えてきた本とは何だったのでしょうか。

考えながら走る
考えながら走る
秋山ゆかり
早川書房
考えながら走る
考えながら走る
著者
秋山ゆかり
出版社
早川書房

本は先生であり、カウンセラーでもあり、究極のエンタメでもある

年間1,000冊を超える書籍を読まれていて、ご自身のことを「活字中毒末期患者」と言っておられるとか。秋山さんにとって、本とはどんな存在ですか。

秋山ゆかりさん(以下、秋山):本は自分が知らないことを教えてくれて、これまで経験したことがない世界を疑似体験させてくれる存在です。この疑似体験というのがミソで、私の場合、本の世界を完全にエンターテインメントとして楽しんでいます。著者や登場人物たちに自分を重ね合わせて、「わかるわかる!」と共感したり、「もっと頑張らなきゃ」と激励を受けたり。

また読書するときは、読み捨てる本と、何度も読み返す本とを分けています。前者の場合は、読む前に「この本から何を得たいか」という問いを立て、その答えを探すようにして読みます。一方、後者の本は、仕事で行き詰まったときの処方箋がわりに、必要に応じて読み返すようにしています。一度読んで内容を把握しているので、「こういう課題に直面したときは、このあたりを読めばいい」などと、アドバイスを求めるべき箇所も頭に入れておくんです。本は、私の先生だったりカウンセラーだったり、エンターテインメントだったり、人生になくてはならない存在ですね。

本をカウンセラーがわりにするというのは面白いですね。読書で得た内容を仕事に活かすために、工夫されている点は何ですか。

秋山:私は、自分がよく読む本とは異なるジャンルの本を意識的に読むようにしています。

人間は誰しも好みがあるので、どうしても手にとる本に偏りが出てしまう。そこで「○○強化月間」と銘打って、関連のないテーマの本を集中的に読み、異分野の知識を取り入れるんです。そのときは流し読みであっても、後で「そういえばこんなことが書かれていた」などと思い出せるので、イノベーションの素材になります。取り入れる刺激が多様であればあるほど、知識同士の斬新な組み合わせが生まれ、イノベーションにつながりやすくなりますから。

例えば、生物学の知識が、以前携わっていた通信のプロジェクトで活かされた経験があります。人間には、循環や呼吸、内分泌などを意思に関係なく調整する自律神経系があり、ホメオスタシス(恒常性)を維持してくれています。その自律神経系の状態を通信ネットワークのコントロールに使えないかとクライアントに提案し、プロジェクト化につながりました。

こうした素材を集めるために、書店には頻繁に足を運んでいます。ECサイトと違って、ぶらぶら歩いて本を色々眺めるザッピングができるのがリアル書店の良いところ。

また、探したい本のテーマに応じて書店を使い分けています。医療系なら東京都神保町にある三省堂書店へ、文化的素養を広げる本を探すなら同じく神保町の東京堂書店へ、ビジネス書を読みたいときは丸の内の丸善や八重洲ブックセンターへ。ビジネスパーソンの間でどんな本が売れているかというトレンドを知るには、有楽町の三省堂書店や渋谷のブックファースト、ゆっくり本を手にとって読みながら選びたいときは渋谷のMARUZEN&ジュンク堂書店を巡ります。

秋山さんのキャリアの転機を支えた本とは?

テーマごとに書店を使い分けるって面白いですね! 秋山さんのキャリアの転機を支えたご本や、価値観・人生に大きな影響を与えた本は何ですか。

秋山:『考えながら走る』にも書きましたが、キャリアの初期に大きな影響を受けた本は『「女の生き方」40選』という本です。当時、エンジニアとして就職したものの、先輩とのトラブルが原因で退職勧奨に遭い、おまけに転職活動では片っ端から履歴書を送っても面接にすらたどり着けないというひどい状況でした。そこで、自分がつくりたいキャリアを描くために、100人以上の伝記を読んだんです。『「女の生き方」40選』には、封建的時代の中でも自立をめざして生き抜いてきた女性たちの様々な生き方が描かれていて、「キャリアに正解なんてない」と実感し、自分らしく生きようと背中を押されました。

その本に出会ったことで、いろいろな方の伝記を読むようになったのですが、中でも心を動かされたのは、津田塾大学を設立した津田梅子さんのお話です。彼女は開拓使が募集した女子留学生で最年少の6歳でアメリカへ渡り、11年後に帰国。あまり知られていませんが、25歳の時に、自らの意思で再び留学し、蛙の卵の研究をしていました。生物学を専攻していた彼女は、その才能を買われて研究者として大学に残ることを要請されたそうですが、日本の女性教育の発展に尽くしたいという思いがあって、帰国し、津田塾となる女子英楽塾を開講されています。儒学の価値観が残っていた当時の日本では、日本語にも独自の風習にも慣れず苦労していたといいます。ですが、女子教育のために生涯、信念を貫き通した姿に圧倒されましたね。

最近読んだ本で良かったのは『子どもが孤独(ひとり)でいる時間(とき)』(こぐま社)です。子どもが生まれてから、子育て関連の本を読むようになり、そこで出合ったのがこの本でした。「孤独=一人ぼっち」という風にネガティブな文脈で語られがちですが、実は孤独(一人でいること)は、自分の内側を振り返り、自分自身を発見して成長するために欠かせない条件であり、ポジティブな意味を持つのです。この本では、孤独を楽しむ一人時間が、大人だけでなく子どもにとっても大切だと説き、科学的な調査結果としてまとめた貴重な本です。

「女の生き方」40選〈上〉
「女の生き方」40選〈上〉
山崎 朋子 編集
文藝春秋
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「女の生き方」40選〈上〉
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著者
山崎 朋子 編集
出版社
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子どもが孤独(ひとり)でいる時間(とき)
子どもが孤独(ひとり)でいる時間(とき)
エリーズ ボールディング 著 松岡 享子 翻訳
こぐま社
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子どもが孤独(ひとり)でいる時間(とき)
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著者
エリーズ ボールディング 著 松岡 享子 翻訳
出版社
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それはぜひ読んでみたいです。児童文学もよく読まれるとお聞きしましたが、どんな本を読まれているのですか。

秋山:子どもが生まれる前から児童文学が好きで、よく読んでいます。児童文学って、人生の課題を乗り越えるヒントがいっぱい詰まっているんです。

わたりむつこさんの『はなはなみんみ物語』の3部作は、科学技術が発達しすぎた社会がどのようなものなのか、そして人間は社会を豊かにするために科学技術を活かせているのかを問いかけてくれる本でした。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議のワーキンググループに出席する際は、毎回この本を読みなおして、科学技術が行き届いた世界について想像をふくらませるのが習慣になっています。

またミヒャエル・エンデの『モモ』もおすすめです。人間から時間を奪う時間泥棒の話で、世間的には「効率的に過ごすことは良くない」と説いた本だと思われています。ですが私はこの本は「効率よく過ごす時間と、ゆったり心豊かに過ごす時間のメリハリをつけることが大事」と教えてくれる本だと思っています。

あと『ゲド戦記』は、何度も読み返している大好きな本。少年ゲドが禁止されていた魔法を使って死者の霊を呼び出してしまいますが、その霊に投影された心の闇と向き合い、自身と融合することで克服していくというストーリーです。ゲドの成長をたどりながら、ダークサイドも含めて自身を受け止められているかどうか、振り返ることができる一冊です。

はなはなみんみ物語(全3)
はなはなみんみ物語(全3)
わたり むつこ 著 本庄 ひさ子 イラスト
岩崎書店
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はなはなみんみ物語(全3)
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著者
わたり むつこ 著 本庄 ひさ子 イラスト
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モモ (岩波少年文庫(127))
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ミヒャエル・エンデ 著 ミヒャエル・エンデ イラスト 大島 かおり 翻訳
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モモ (岩波少年文庫(127))
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著者
ミヒャエル・エンデ 著 ミヒャエル・エンデ イラスト 大島 かおり 翻訳
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影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)
影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)
アーシュラ・K. ル=グウィン 著 ルース・ロビンス イラスト Ursula K. Le Guin 原著 清水 真砂子 翻訳
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影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)
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著者
アーシュラ・K. ル=グウィン 著 ルース・ロビンス イラスト Ursula K. Le Guin 原著 清水 真砂子 翻訳
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先ほど、本はカウンセラーがわりにもなるとおっしゃっていました。秋山さんにとって名カウンセラーともいうべき本は何ですか。

秋山:仕事の悩みに対してダイレクトに答えを得たいときは、古典を紐解きます。仕事やキャリアの戦略の相談相手はもっぱら『孫子』です。『孫子』の「始計篇」に「勢とは利に因りて権を制するなり」という大好きな言葉の一つがあります。この「勢」とは、状況に応じて臨機応変に対処することを指します。やみくもに時間や労力を使う試行錯誤ではなく、目標をできるだけ早く達成するために、どうすれば臨機応変な立ち回りができるかを自問自答させてくれる言葉です。

他にも、自分の仕事が社会貢献につながっているかどうかを問い直したいときには『論語』が、トップの行動のエッセンスを知りたいときには『君主論』が非常に役に立ちました。『君主論』はマキアヴェリの生きた時代も現代も変わらない普遍的な「人間の心理や組織の力学」を学ぶには欠かせない本ですね。

新訂 孫子 (岩波文庫)
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金谷 治 翻訳
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新訂 孫子 (岩波文庫)
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著者
金谷 治 翻訳
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論語
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金谷治(訳注)
岩波書店
論語
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著者
金谷治(訳注)
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君主論 (岩波文庫)
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ニッコロ マキアヴェッリ 著 Nicoll`o Machiavelli 原著 河島 英昭 翻訳
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君主論 (岩波文庫)
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ニッコロ マキアヴェッリ 著 Nicoll`o Machiavelli 原著 河島 英昭 翻訳
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秋山さんと、著書『考えながら走る』

中長期的な視点でキャリアのロールモデルを探す

秋山さんの『考えながら走る』は、私にとってのキャリアカウンセラー的存在なのですが、そのほか女性のキャリアに役立つおすすめの本があれば教えてください。

秋山:子育てと仕事の両立について悩む人からの相談をよく受けるのですが、お薦めしているのは、友人の金澤悦子さんが書かれた『自分らしいキャリアも幸せも手に入れる! 「働くママ」の仕事術』です。子育てをしながら働いていると、誰もが不安になったり焦ったりしますが、何でも完璧にこなすスーパーウーマンになる必要はないし、誰もが悩みを乗り越えてやってきているんだと、安心させてくれる本でした。まだ子供のいない若い女性の方にもおススメです。子供はどのタイミングで産んだらいいんだろう? 仕事と両立できるの? という漠然とした不安に対して、「こういう大変なこともある。でもこうやって乗り越えられる」という具体的なアドバイスが詰まっています。見えない不安に対しても、本は答えや方向性を出してくれます。

自分らしいキャリアも幸せも手に入れる! 「働くママ」の仕事術
自分らしいキャリアも幸せも手に入れる! 「働くママ」の仕事術
金澤 悦子 著
かんき出版
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自分らしいキャリアも幸せも手に入れる! 「働くママ」の仕事術
自分らしいキャリアも幸せも手に入れる! 「働くママ」の仕事術
著者
金澤 悦子 著
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まだまだ女性が活躍するには制約がある日本の社会において、女性がやりたいことを実現していくために、どんな姿勢でキャリアを築いていけばよいでしょうか。

秋山:よく「女性にはキャリアのロールモデルが少ない」と言われますが、男性でもロールモデルがいるという人は少ないんじゃないかと思っています。ロールモデルは、1人の人ではなく、男女問わず、複数の人からパッチワークのようにいいとこどりしていけばいいんじゃないでしょうか。

あと、一緒に過ごしたときはロールモデルだと思わなくても、時を経て「あ、この人の生き方が私の理想だ」と気づかされることもあります。

BCGの先輩であり、世界銀行IFC(国際金融公社)でインベストメントオフィサーをされている小出治子さんは、私にとってまさにそんな存在です。BCGにいらしたときは、正直に言うと、とても大変そうに見えました。ですが、小出さんはその後渡米し、子育てもベリーダンスも声楽も楽しみながら、非常にキラキラと働いていらっしゃいます。「あぁ、美しく年を重ねるってこういう人のことをいうんだな」と思いました。大変なときは格闘している姿を隠さず、周りに素直に助けを求めながらも、キラキラした姿も見せる。小出さんこそ私のロールモデルだったんだと気づいたのは、少し後になってからのことです。自分の置かれているキャリアのステージも変わるし、ロールモデル自身も成長していくので、中長期的な視点で人の生き方から学んでいくことが大事なのだと思います。

私も30代はこの人、40代はあの人、というように、年代ごとにふさわしいロールモデルを見つけていきたいと思います。貴重なお話をありがとうございました。

ビジネスノマドジャーナルのインタビューはこちらから ボストン・コンサルティンググループ(BCG)、ゼネラル・エレクトリック(GE)、IBMを経て事業開発コンサルタント、そしてソプラノ歌手としても活躍されている秋山ゆかりさん。 BCGでの「脳に汗がかくぐらい考える」経験、GEでのマネジメントのファッション戦略など、フレキシブルに積み上げられてきたキャリアについて語っていただきました。
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文責:松尾 美里 (2016/03/29)

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