普通の営業マンで強い営業チームをつくるには?
スーパー営業マンがいなくても売上アップする秘訣とは?

普通の営業マンで強い営業チームをつくるには?

「トップセールスの営業術の本を読んでも結局、実践できなかった」、「普通の人で構成された普通のチームを率いて、成果を出し続けるにはどうしたらいいのか」。

こうした悩みについて、『普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法』(あさ出版)の著者で、経営コンサルタントの長尾一洋さんに解決策をお聞きしました。

メンバーの育成、営業力強化を図るためのポイントは「7つの矛盾」にあるといいます。営業チームのリーダーやマネジャーが、その矛盾を乗り越え、営業力の高いチームをつくるにはどうしたらいいのでしょうか。

質か量か、新規か既存か――。矛盾だらけの営業の現場にメスを入れる

── 『普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法』 には、営業力を強化したいと考える企業がぶつかりやすい課題が、7つの矛盾として紹介されていました。

普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法
普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法
長尾一洋
あさ出版
普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法
普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法
著者
長尾一洋
出版社
あさ出版

営業の現場には矛盾があふれています。たとえば、丁寧に対応して「質」を重視するか、訪問回数の「量」を重視するか、のどちらかに偏ってしまう。新規開拓のために既存客を放置してしまい、既存客のフォローに注力すれば今度は新規開拓がおろそかになる。営業マン個人の人間力を生かすべきか、勝ちパターンを組織で磨き上げるべきか。このように営業の現場ではいくつもの矛盾にぶつかります。これらの矛盾にはどちらかを選ぶべき、という正解はなく、成果を出すには両方とも大事であって、いずれにも最大限取り組むべきです。こうした矛盾の乗り越え方を伝えるために本書を執筆しました。

カリスマ営業マンの書いた本のノウハウをそのまま生かすことは難しいと話す長尾さん。

── 中でも多くの企業で課題とされている矛盾は何ですか。

一番根底にあるのは、「自分(自社)のために仕事をするのか、お客様のために仕事をするのか」 という矛盾です。特に若く純粋な営業マンは、お客様の役に立ちたいという思いから、どんな要求もかなえようと奔走する。しかし、現実には売上や利益といった数字目標も追わないといけない。

営業マンを束ねるマネジャーは、「お客様の言いなりになることがお客様のためではない」と部下に伝える必要があります。一回一回の取引だけを考えてはだめで、継続取引を前提にしなければならない。つまり「自分(自社)のため」と「お客様のため」のどっちつかずになるのでなく、両方とも100%で臨むことが大事。それを現場に浸透させていくことがマネジャーの役割でもあるんです。

スーパー営業マン頼みはNG。「PSDSサイクル」で部下を育てよ

── スーパー営業マンがマネジャーを務める営業チームは少なくないと思います。営業マンを育成するうえで大事なポイントは何でしょうか。

マネジャーは「短期的な成果を追う」、「長期的な視点で人材を育成して組織を強化する」の両方をめざさないといけません。にもかかわらず、チームが「この人がいないと回らない」という状態ならば、短期の視点に偏っている状態といえます。

短期の数字を追うなら、部下指導に精を出すよりマネジャー自身が動いたほうが速いしラク。しかも、他のメンバーよりも先に手を施すべき点に気づくので、具体的な指示をすぐに出しがち。ですが、弊社の世古が書いた『営業リーダーは「仕事」をするな!』 (あさ出版)という本があるのですが、やはり仕事のし過ぎは良くない。これだと指示待ち人間ばかり生まれてしまいます。
だから逆説的ですが、マネジャーやリーダーは何でも自分でやらずに、部下本人が課題に気づいて動き出すまで少し待ってみる必要があるんです。

営業リーダーは「仕事」をするな! ~結果を出したいリーダーがやってはいけない37のこと~
営業リーダーは「仕事」をするな! ~結果を出したいリーダーがやってはいけない37のこと~
世古 誠
あさ出版
本の購入はこちら
営業リーダーは「仕事」をするな! ~結果を出したいリーダーがやってはいけない37のこと~
営業リーダーは「仕事」をするな! ~結果を出したいリーダーがやってはいけない37のこと~
著者
世古 誠
出版社
あさ出版
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── すぐに指示したり動いたりしないことが大事なんですね。部下に主体的に動いてもらえるよう促すための良い方法はありますか。

部下本人に思考訓練をしてもらうといいですね。顧客を訪問する前に「君はどうしたいと思っているの? 今日はどんな成果を出したいの?」と問いかけるんです。営業プランを話してもらった後、それをもとに、リーダーが「だったらこうしたほうがいいよ」と具体的にアドバイスをする。

大事なのは、未来の結果を管理するという「先考管理」という考え方に立つこと。業務改善ではPDS(Plan-Do-See)という流れで改善することが多いと思いますが、私は「PSDSサイクル」を回すことを薦めています。実行(Do)の前に、上司による可視化・チェック(See)のプロセスを入れて、期待する結果が出せるようにコントロールするという考え方です。

日報にも「今日どこを何件回って、何を話したのか」という過去のことだけでなく、「明日どこに行って、何をどうするのか」という未来のことを書いてもらいます。
すると成功確率が上がって目の前の数字につながるし、部下も自分の頭で試行錯誤しているから、徐々に一人で作戦を練られるようになっていく。そうすれば「短期か長期か」という矛盾を、「両方大事」という姿勢で乗り越えられるはずです。

── プレイヤーとして活躍していた人がマネジャーになった際に失敗するという話をよく聞きますが、それはなぜでしょうか。

よくある失敗は、自己流のやり方にとらわれてしまうことです。営業というのは、個性が出がちな職種で、個性を発揮するのはかまわない。ですが、いくら自分のスタイルで成果が出たからといって、それを部下に真似させるのは厳しいのです。色々なタイプの営業マンをマネジメントするには、成果の出るやり方を、ある程度標準化して、誰でも習得できるフォーマットにする意識が求められます。

マネジャーになると、全体の状況を把握し、臨機応変かつ的確に判断する能力が求められるようになります。自社や顧客の状況、外部環境などの変化が自分や部下の業務についてまわるからです。こうした意識が、マネジャーとしても活躍できるかどうかの成否を分けるといっていいでしょう。

営業の役割は、ドラッカーのいう「マーケティングとイノベーション」

── また、すぐれた営業マネジャーは成功事例の共有だけでなく、失敗事例の共有もしていることが多いですね。
失敗事例を振り返るとどのような効果があるのでしょうか。

成功事例の共有は現場の士気を上げるのに役立つのですが、失注理由を明らかにすることは、「何が足りていなかったのか、逆に何があれば購入いただけたのか」という、顧客ニーズの把握に直結するので、会社全体のためになる。

ドラッカーは企業の目的を「顧客の創造」と位置づけ、それを達成するために「マーケティングとイノベーションの両方が大事」 といっている。どんなものでも売れるマーケティングと、放っておいても売れるものを生み出すイノベーション。両者をリードするのが、営業マンの役割です。

── 一見、両者は矛盾していそうですが、それを統合するのも営業マンなんですね。

研究開発や商品開発部門は、顧客の声がほしくてたまらないわけです。とはいえ、顧客ヒアリングやアンケート調査で得られる声はきれいごとが多い。しかし、営業マンは、ヒアリングでは得られないような、顧客の生々しい声を日々得ている。まさに、「マーケティングの最前線」です。

営業マネジャーは、営業チームで吸い上げた情報をもとに商品改善の提案を主導していくという発想が求められているんです。現に、営業と商品開発がうまく連携している会社は、業種をとわず売上が伸びる傾向にある。ただ与えられたものを売りに行くのではなく、「よりよいものを売るには他部署との連携が必要」という意識を常にもっているのでしょう。

── 営業部はマーケティングと、イノベーションをリードする役割を両方担っているんですね。

その通りです。いくら営業力が高くても、商品がよくないと売れませんから。むしろ、商品の問題点を見過ごしていると、長期的に見れば会社の損失になりかねない。「自分たちの利益のため、お客様のため」の両方を追求するためには、よりよい商品の提案は必然的なプロセスです。だから営業マネジャーは、現場から不満が上がってきたときに、それが単なる売れない言い訳なのか、商品改良のヒントが潜んでいるのか注意して聞かないといけません。

顧客の声をもとに商品の改良や開発が進むと、商品力強化につながり、顧客からの評判も上がって売りやすくなる。営業マン自身の仕事のやりがいも高まり、業績も上がっていく。こうした好循環が生まれるから普通の営業マンでも売れるようになる。営業はマーケッターであり、イノベーターでなければならないのです。

── 営業の役割に対する見方が大きく変わりました。貴重なお話をありがとうございました!

普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法
普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法
長尾一洋
あさ出版
普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法
普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法
著者
長尾一洋
出版社
あさ出版

長尾 一洋(ながお かずひろ)

株式会社NIコンサルティング代表取締役/中小企業診断士

1965年生まれ。横浜市立大学商学部経営学科卒業。

経営コンサルティング会社に勤務したのち、1991年にNIコンサルティングを設立。

およそ30年、日本企業の経営革新や営業力強化に取り組んできた。とくに強い営業部をめざし、「見える化」するためのITツール「Sales Force Assistant」を活用したコンサルティングには定評があり、現在4000社を超える企業で導入されている。

また、最古にして最強の兵法書『孫子』の智恵を、現代の企業経営や営業活動にどう応用すべきかを説く孫子兵法家としての顔も持つ。

ベストセラー『まんがで身につく 孫子の兵法』『まんがでできる 営業の見える化』 (あさ出版)、人気漫画とコラボした『「キングダム」で学ぶ乱世のリーダーシップ』 (集英社)、『仕事で大切なことは孫子の兵法が教えてくれる』 (KADOKAWA)など、著書多数。

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文責:松尾 美里 (2017/08/07)

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