どんなタイプの部下も結果が出せる最強のマネジメント術とは?
行動分析学に基づく、部下を動かす「コミュニケーション」の秘訣

部下に指示をしても、期待どおりに動いてくれない。決めたことが続けられず、できない言い訳ばかり。結局、チームの目標が達成できていない――。

こうした課題を解決するマネジメント手法が「壁マネジメント」です。壁マネジメントは行動分析学やNLP理論をもとにした、部下に「行動をやりきらせる」技術。業種や部下の特性、マネージャーの性格を問わず、実践者9割が成果につながっているとのこと。そんな壁マネジメントを編み出した、『結果を出すリーダーほど動かない』の著者、山北陽平さんに、壁マネジメントを成功させるための秘訣をお聞きしました。

パワハラ上司に思われる根本原因は、部下との「コミュニケーション不足」にあり?

『結果を出すリーダーほど動かない』のテーマ、「壁マネジメント」とはどのようなものですか。

結果を出すリーダーほど動かない
結果を出すリーダーほど動かない
著者
山北陽平
出版社
フォレスト出版

壁マネジメントとは、マネージャーが部下の行動に介入し、「動かない壁(=部下が望ましくない行動に流れるのを阻止する)」をつくることで、成果につながる行動への改善と、その継続を促すマネジメント手法です。ポイントは、部下にとってほしい「行動ルール」と、その行動をとれたかどうか上司が漏れなく介入する「介入ルール」を設定し、適切な「フィードバック」の3点をセットで行うこと。

これまで「部下が期待通りに動いてくれない」と嘆く上司を、数多く見てきました。その原因の一つは、「指示だけマネージャー」が多いから。本来、上司は指示した内容を部下にやりきらせるところまで管理、教育、サポートしなければなりません。

3000人以上のビジネスパーソンに研修や現場指導を行い、徹底した「現場主義」で壁マネジメントを体系化してきたと語る山北さん。

指示だけマネージャーが増える背景には、厳しく叱責すると「パワハラと思われるのではないか?」という懸念がありそうです。

そもそも、パワハラ上司と思われる根本原因の一つは、「上司と部下とのコミュニケーションの絶対量が圧倒的に足りていない」という点。部下の状況を尋ねたり、部下の抱えている課題に対し、親身に相談にのったりする。そういう時間を設けないまま指示だけ出して、達成しなかったら厳しく叱責する。これでは部下のモチベーションは下がるし、反発や委縮を招くだけです。

壁マネジメントの秘訣は「好子」を与えるタイミングと回数にあり

「壁マネジメント」は、部下の能力や性格を問わず成果が出せるとのこと。この理由は何ですか。

1つ目は、上司と部下のコミュニケーションの総量が増えるからです。壁マネジメントでは、上司は1日に2回は一対一で部下と話します。2回というのは、行動ルールを実行できそうか事前に確認する「リマインド型の介入」と、実際に守れたかどうかを確認する「アフター型の介入」のタイミングです。

介入というと一方的に上司が部下に問い詰める印象をもつかもしれません。ですが、そうではなく、実行できなくても上司が部下に質問し、一緒に改善策を考えていく場面も多いわけです。コミュニケーション量と頻度が高まれば、上司も部下の性格や、体調の変化などに気づきやすい。部下も自分の現状を話すきっかけがつくれる。するとパワハラ上司といわれるリスクも減るし、上司と部下の間に信頼ができてきます。

壁マネジメントの肝の一つである、フィードバックのコツも知りたいです。

壁マネジメントでは、行動ルールが守れていたら好子(※1)を、守れていなかったら嫌子(※2)を発生させるフィードバックを必須としています。大事なのは、「望ましい行動をとれたという実績」をいかに早く積ませて、好子を適切なタイミングで、複数回与えていくか。

行動分析学では好子の効果があるのは、望ましい行動をとってから60秒以内といわれています。ビジネスパーソンにそれは難しいですよね。ですが半年に一度の面談でほめるよりは、1日2回、介入のタイミングで好子を与えるほうが効果的といえます。
「1日2回も大変ではないか?」と思われるかもしれません。ですが、好子なら例えば、「今日も目標通り10件、顧客へのフォローの電話をかけていたね。その調子!」といった一言でもいい。逆に嫌子なら、「今日は目標通りにいかなかったけど、何が原因だったんだろう?」と問いかけて、対処法を部下に話してもらう、というのでもかまいません。

※1好子:行動の直後に出現すると、その行動が起きる頻度を上げる刺激、できごと、条件(正しい行動のご褒美) ※2嫌子:行動の直後に出現すると、その行動が将来起きる頻度を下げる刺激、できごと、条件(ペナルティ)

部下がなかなか行動ルールを守らないときはどう対処すればいいのでしょうか。

私のクライアント企業で、広告代理店の40代課長は、50歳以上の部下5名に営業先の新規開拓をさせたいと考えていました。しかし、部下のほうが年上ということもあり、改善の要望を何度伝えても響かないという状態が続き、壁マネジメント導入当初の3か月間は部下と衝突する日々だったといいます。部下たちは新規開拓などせずに既存顧客の対応だけで済ませたいと考えていたのです。

部下が変わってきたのは、上司の本気度を部下が実感したことがきっかけでした。見込み客への訪問をサボっていそうなら、アポイント件数を訪問前に必ず確認する。アポイントがとれていないなら、「この2時間で○件電話をかけましょう」などと、部下が今すぐできる行動にまで細分化し、予定表に書き込んだといいます。これだけ上司が関われば、部下側も「これは手を抜いたり逃げたりできないな」と、設定した行動を徐々にとり始め、今は新規開拓が進んでいるそうです。

部下の行動が成果に結びつくように促すポイントはありますか。

部下の行動が成果に結びつき、組織や部署のミッションに貢献するところまでマネジメントするのが上司の役割です。ポイントは、最終成果から逆算したちょうどよい中間成果を設定すること。最終成果と行動との間に距離がありすぎると、モチベーション低下につながりかねない。

そこで大事なのは、最終成果と行動ルールの間に、「もう少し今より背伸びすれば達成できそう」という、絶妙なラインで中間成果を設けること。行動ルールを決める際、「部署のミッションを達成するには、中間成果としてここまで達成してほしいし、できると期待している。そのためにはこの行動が必要」と部下に伝える。すると部下は自分の行動と、組織全体の目標との関わりを意識できます。

「中間成果も、最終成果と照らし合わせて適切なのかを定期的に振り返るべき」と、講義さながらの真剣な表情で図解解説をされた山北さん。

上司は部下の「パーソナルトレーナー」になろう

今後、理想の上司とはどういう存在になっていくと考えますか。

よく自分でモチベーションを上げて自走してくれる部下になってほしいという声を聞きます。ですが、そうした期待はもたないほうがいいでしょう。
ライザップで成果が出せるのは、パーソナルトレーナーが毎日、個別に、その人に応じたフィードバックやアドバイスをくれるから。トレーニングを休んだら、すかさず電話がかかってきます。ダイエットの本気度が高い人ほど、この「誘導してくれる他者からの関与」の価値や効果を理解しています。

仕事も継続的に成果を出すには、ライザップと同じく、上司が部下のパーソナルトレーナーとして関与することが重要になります。現に、一人でどんどん成長しているように見える人でも、「他者からの関与・影響を利用する」という発想をもっていることが多いんですよ。

最後に、山北さんが読まれた本の中で、部下の育成に悩むマネージャーにおすすめのご本を教えてください。

おすすめしたいのは、行動分析学の研究者、島宗理(しまむねさとる)さんの『リーダーのための行動分析学入門』です。心に響いたのは、「学び手は常に正しい」というスタンス。教え手は学び手のやる気や能力のなさのせいにしますが、これは「個人攻撃の罠」と表現されています。学び手の行動が変わらなければ、それは教え手の責任。壁マネジメントもこのスタンスを大事にしているんです。

リーダーのための行動分析学入門
リーダーのための行動分析学入門
著者
島宗理
出版社
日本実業出版社

管理監督職はもちろん、教える立場にある人すべてにとって大事なスタンスですね。貴重なお話をありがとうございました! 

結果を出すリーダーほど動かない
結果を出すリーダーほど動かない
著者
山北陽平
出版社
フォレスト出版

山北 陽平(やまきた ようへい)

(株)アタックス・セールス・アソシエイツ、コンサルタント。

NLPマスタープラクティショナー。営業のコンサルタントとして企業のコンサルティングに従事。

現在はNTTドコモ、パナソニックグループ、朝日新聞社などの大企業から中小企業まで、多くの企業に「行動分析学」を基にした行動改革指導を実施。その指導は年間200日、1000時間を超え、指導対象ビジネスパーソンは年に3000人にのぼる。さまざまな組織の行動変革を実現するコンサルティングを展開。リピートオーダーが絶えず、現在、5年後のスケジュールまで埋まっている。机上の空論ではなく、現場の中でつくり出した「壁マネジメント」のノウハウは、受講者の9割が設定した問題を解決するという圧倒的な成果を出しており、同社のプログラムでNo.1の人気を誇る。とことん結果にこだわった指導スタイルは、多くの経営者、マネージャーから絶大な評価を得ている。

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文責:松尾 美里 (2017/11/16)
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