freee代表取締役CEOが語る、究極の生産性アップの秘訣とは?
“効率化”してできた時間を、“効率化できないもの”に注ぐ

ビジネスの生産性も、「時間の使い方」の巧拙で、圧倒的な個人差が生まれつつある昨今。そんななか、本質的な時間術にスポットライトをあてたのが、『「3か月」の使い方で人生は変わる』(日本実業出版社)です。著者は、フィンテック企業としても注目されるfreee株式会社(以下:freee)の創業者・代表取締役CEOの佐々木大輔さん。「クラウド会計ソフトfreee」はサービス開始5年でシェアNo.1を誇ります。

グーグルでの勤務やfreeeの起業の実体験から、佐々木さんが編み出してきた時間術を、チームの生産性向上にどう活かしていけばいいのか。freeeが今後果たしていく役割、ビジョンとともにお聞きしました。

「スモールビジネスを、世界の主役に。」freee新ミッションに変えたワケ

改めて、freeeが提供するサービス内容をお話いただけますか。

主に中小企業の経理と人事労務を中心に、バックオフィス業務を自動化するクラウドのソフトウェアを提供しています。帳簿や決算書作成などに対応した「会計ソフトfreee」や、給与計算や労務管理を効率化する「人事労務freee」などです。

ちょうどこの2018年7月、freeeのミッションを新たにしました。これまでの「スモールビジネスに携わるすべての人が『創造的な活動』にフォーカスできるよう」というミッションから、「スモールビジネスを、世界の主役に」という新ミッションにしました。

今のタイミングで、ミッションをより踏み込んだ内容へと変えた理由は何ですか。

freeeの提供するサービスの価値は、業務が効率化できて「時間がつくれる」というだけではありません。より大事なのは、お客様のビジネスの強化に寄与できること。そう感じる機会が増えたためです。
たとえば、経理業務自体は、本来なくすべき悪ではありません。経営分析に役立つ示唆など、経理業務から生まれる価値があります。これらを可視化させて、事業の発展につなげることを、自社全体の重要なミッションに据えることで、お客様にとってのサービスの価値がますます上がっていくと思っているんです。

また、「クラウド会計ソフトfreee」をローンチしてちょうど5年。その節目としても今が良いタイミングでした。

freeeのサービス・コンセプトは、アイディアやパッションやスキルがあればだれでも、ビジネスを強くスマートに育てられるプラットフォーム。freee公式サイトトップページより。
企業サイト

「3か月」は確実に変化を起こせる最小単位

著書のタイトルは『「3か月」の使い方で人生は変わる』とありますが、なぜ「3か月」なんでしょうか。

「3か月」の使い方で人生は変わる
「3か月」の使い方で人生は変わる
著者
佐々木大輔
出版社
日本実業出版社

これまでを振り返ると、勉強でも仕事でも、転機となるテーマに取り組んだ際、いつも3か月がポイントになっていました。「クラウド会計ソフトfreee」の開発もそうです。

ベンチャーのCFOを務めていた頃、請求書や領収書などのデータを経理担当者が手入力で打ち込んでいました。これを何とか効率化して、負担を軽減できないか。そこで浮かんだのがクラウド会計ソフトfreeeのアイディア。まずは3か月間で原型をつくろうと、グーグルで働きながら、朝と夜中にプログラミングを学び、試作を続けました。この経験で、一人でも3か月でそこそこのものをつくれるという手ごたえを得られました。

グーグルでも全社的に、3か月というサイクルが意識されていました。四半期ごとの管理が徹底していたので、3か月で成果が出ないと忘れ去られてしまう。「もう少し腰を据えて取り組みたい」と思っても、結果が出なければ突然予算がなくなることも日常茶飯事。シビアではありますが、スピード感があるし、自分自身の成長を感じるには最適な長さだと思うんです。

半年や1年ではなく3か月なら、高い関心を維持しながら、全力で1つのテーマに集中できる。「3か月」は確実に変化を起こせる最小単位なんです。

形式的なことは徹底効率。かわりに「効率化できないこと」に時間を注ぐ

その3か月の間、生産性を高めるためにどんな点を意識すればいいのでしょうか。

効率化できることは業務の中でたくさんあります。メールで済む内容なのに「まずはお会いしてご挨拶を」という形式的な慣習とか、相手のことを気にしすぎてメールの返信に時間をかけすぎることとか。「その時間の使い方はお互いのためになるか?」「お互いの時間を奪わないか」という基準で行動すれば、おのずと生産性が高まります。

ただし、あくまで業務効率化はゴールではありません。タイムマネジメントでめざすべきは、効率化して生み出した時間で、「効率化できないこと」に時間や情熱を注ぐことなんです。

「効率化できないこと」というのは?

社内のメンバーとの信頼関係やカルチャーを築いていくことです。freeeを起業して気づいたのは、短期的な成果を追うだけではダメで、長期的に大事なことに時間を注ぐべきだということ。社内に一体感がなければ、同じ方向を向けず、全体の力が分散されてしまう。これは長い目で見ると大きな損失です。

だからこそfreeeでは、メンバーとの関係性やカルチャーづくりに力を入れてきました。現時点で社員数は450人ですが、私は全員のことを覚えているつもりです。入社したメンバーには自分で60分の研修を行うし、その後親睦会も開いて、その人の顔を目にする機会を意識的に3回以上つくっています。

freeeには、「本質的(マジ)で価値ある」(ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする、通称マジ価値)、「理想ドリブン」(現在のリソースやスキルにとらわれず、理想から考える)などの価値基準があります。ミッションや価値基準というのは、一朝一夕で社内に根づくものではありません。いかに普段から価値基準を口にして、意思決定時に参照できるかが問われます。
たとえば、「オールハンズ」という、全社員が参加する週次ミーティングでも、トップダウンで伝えて終わりにはしません。オンラインで全社員が質問や意見を伝えられ、私や役員がその場で答えるという双方向の仕組みをとっています。こういう手間暇をかけてはじめて、社内に浸透するものなんです。

価値基準の1つ「ハックエブリシング」(深く掘り下げる)を徹底したことから、チャットサポートという新たな発想が形になったという。詳しくは本書の6章を。

「スモールビジネスのほうがスマートに働ける」という世の中へ

フィンテックが進展するなかで、freeeが今後果たしていく役割、ビジョンを教えてください。

freeeの役割は、「お金がボトルネックになって事業を進められない」という“不”を解消すること。ある事業に投資をするための資金を得たいとき、どう工面すればいいか。この意思決定は難しい問題です。融資を受けるか、支払いを遅らせるだけでいいのか、VCから投資を受けるのがいいのか、それともクラウドファンディングを利用するのか。こういう課題を解決できるようにしたいですね。個人事業主や中小企業のユーザーにとって、最適な資金調達の方法を選ぶのがボトルネックにならないよう、いわば「人工知能のCFO」を実現する。そうすれば、ユーザーは新たな挑戦ができるようになるはずです。

中小企業はマクロデータで見ると、現時点では大企業よりは生産性が低いし、就職先として人気が高いわけでもない。テクノロジーの活用も進んでいないのが現状です。けれども、中小企業のほうが、大企業に比べてスピーディーに意思決定ができます。だから、いったん決断すればテクノロジーも導入しやすいのです。

時代の趨勢としても、お金が余っている今の世の中では、大資本をもつ企業のほうが必ずしも有利とは限らない。すると、大企業中心ではなく、「スモールビジネスのほうがスマートに働けて、カッコいい」という世の中をつくっていけると考えています。こうした意識の転換を起こして、「スモールビジネスを、世界の主役に。」という、新たなミッションを実現させたいですね。

「3か月」の使い方で人生は変わる
「3か月」の使い方で人生は変わる
著者
佐々木大輔
出版社
日本実業出版社

佐々木 大輔(ささき だいすけ)

freee(フリー) 創業者・代表取締役CEO。1980年東京生まれ。一橋大学商学部卒。大学在学中に派遣留学生として、ストックホルム経済大学(スウェーデン)に在籍。また、インターンをしていたインターネットリサーチ会社のインタースコープ(現・株式会社マクロミル)では、データ集計システムやマーケティングリサーチ手法を開発。卒業後は、株式会社博報堂でマーケティングプランナーとしてクライアントへのマーケティング戦略の立案に従事する。その後、未公開株式投資ファーム・CLSAキャピタルパートナーズでの投資アナリストを経て、株式会社ALBERTの執行役員CFOに就任。2008年に Google に参画。日本におけるマーケティング戦略立案、Google マップのパートナーシップ開発や、日本およびアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングの統括などを担当。中小企業セグメントにおけるアジアでのGoogleのビジネスおよび組織の拡大を推進した。2012年7月、freee 株式会社を創業し、シェアNo.1クラウド会計ソフト「freee」等を提供している。日経ビジネス「2013年日本のイノベーター30人」「2014年日本の主役100人」、Forbes JAPAN「日本の起業家ランキング」BEST10に2015年、2016年選出。

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文責:松尾 美里 (2018/07/25)
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