人気バラエティプロデューサー直伝、「運を開く」ための技術とは?
明石家さんま、西野亮廣。運がツキまくっている人の共通項に迫る

「さんまのSUPERからくりTV」「金スマ」「EXILE魂」。大人気バラエティ番組を手がけてきた、バラエティプロデューサー、角田陽一郎さん。

明石家さんまさん、西野亮廣さんといった、運がツキまくっている人の言動や思想から、開運を招く思考法やテクニックを編み出してきました。それをまとめたのが、『運の技術』(あさ出版)です。

ビジネスパーソンにとっても、運や縁をモノにできるかどうかは、めざすキャリアを歩むうえで非常に重要です。「運の技術」を駆使して、「好きなことだけやっていく」を実現するための秘訣をお聞きしました。

運がツキまくっている人たちには、共通項がある

『運の技術』、夢中でお読みしました。角田さんご自身が本書の体現者ですよね! 

いやいや、僕自身はそんなに運がいいとは思っていないんですよ(笑)。でも、僕はTBS時代から、運がツキまくっている芸能人や文化人をたくさん見てきました。明石家さんまさん、堀江貴文さん、キングコングの西野亮廣さん、クリエイターのエージェント会社コルクの佐渡島庸平さんなど。彼らの言動や思想には、意識的かどうかはさておき、運を開く共通項があるんです。

開運の仕組みは、ロジカルに説明することができます。なぜなら、運というのは、完全な他力本願や神頼みで手に入れるものではないから。他人や外部環境を利用しながら、自ら切り開くものだからです。それを裏づけるエピソードとともに、運を引き寄せるテクニックをまとめたのが、『運の技術』なんです。

運の技術
運の技術
著者
角田陽一郎
出版社
あさ出版

錚々たるメンバーの名前が挙がりましたが、具体例を詳しくお聞きしたいです。

たとえば、明石家さんまさんは、まさに開運の人。「さんまのSUPERからくりTV」の制作スタッフとして15年くらいご一緒しました。さんまさんってどんな人ですか? そう聞かれたら「めちゃくちゃいい人だけど、めちゃくちゃ恐い人」と答えているんです。

「いい人」でかつ、「恐い人」?

「いい人」と「恐い人」が同居している人ってかなりレアなんですよ。まず、さんまさんが「いい人」だから周囲はファンになるし、「この人のために頑張ろう!」と全面的に協力します。
一方、さんまさんは自分の名前で勝負している人。ご自身がMCをしている番組の評価がそのまま、さんまさんの評価になる。だから番組づくりには妥協しない。その厳しさが時に「恐さ」になって、周囲のスタッフを本気モードにする。これが結果的に、さんまさんの運を上げ続けることにつながっています。
運を開く人は、あらゆる物事を「自分ごと化」して、自分の名前で勝負できる人なんです。

角田さんのバラエティプロデューサーという肩書きは、バラエティ番組のTVプロデューサーではなく、「色々バラエティにやるプロデューサー」という意味だという。

あとは、自分の手掛けている作品への愛情や熱量が半端ないことも、運を開くことにつながります。2016年にTBSのドラマ、「逃げるは恥だが役に立つ」が大ヒットしましたよね。その理由は何か。僕にいわせると、ドラマ界の名プロデューサーNさんが、主演のガッキー(新垣結衣さん)のことを尋常ではないほど大好きだったから。「逃げ恥」のヒロインは、とにかくガッキーがかわいく見えることを意識した役柄。「恋ダンス」もガッキーをかわいく見せるための演出といえます。

Nさんのガッキー好きは筋金入り。自分の担当番組でなくてもガッキーが出演していたら、「もっと映せよ!」なんていい出して。挙句には、自分で勝手にディレクションし始めたそうで(笑)。

そこまで熱狂的に好きだったんですね(笑)。

プロデューサーにこれだけの強い気持ちがあれば、現場のスタッフにも伝わります。作品がすばらしいものになるのは当然。何か実現させたい企画があるなら、これくらいの熱量を見せれば、上司も「やらせてみるか」となります。こんなふうに、尋常じゃないくらいの強い気持ちは、確実に運を引き寄せるんです。

「相手の想像力」を想像せよ

『運の技術』には想像力や洞察力が大事だと書かれていました。運を開くには想像力が大事なのはなぜですか。

想像力とは、相手がどう考えているかを最小の情報で理解する力。他人より少ない情報で状況を理解するので、その分仕事も進めやすく、他人より運を開く力が強くなります。周囲も「あの人には、いちいち説明しなくても任せておけば大丈夫」と信頼してくれる。だから、大きな仕事がどんどん任されるようになります。

僕は誰かに仕事を頼むときは、相手の想像力を想像するようにしているんですよ。「この仕事やれますか?」と聞いて、「やれます!」って簡単にいう人、いますよね。でも結局途中でできない、となることもしばしば。それは本人の希望と現実にギャップがあるから。 何か実現させたいものがあるなら、その実現までの過程をいかにディテールまで想像できるか。この想像力こそが、運を開ける人の共通項だと考えています。

タンザニアの人々は「運の技術」をすでに体現していた?!

運というのは自分の中で閉じるものではなく、外部の人やものを取り込んでいくことが必要だと書いていましたね。

そうそう、まさにそれを体現しているのがタンザニアの人たちの生き方です。2018年5月に、文化人類学者の小川さやかさんとトークイベントでご一緒する機会がありました。彼女の専門であるアフリカ研究のお話のなかで、“Living for Today(その日暮らし)”という考え方が、かなりインパクトがあって。

タンザニアでは、貸し借りの清算をあえてしないのが慣習だそうです。たとえばAさんがBさんからお金を借りたとしましょう。Aさんはまとまったお金を用意できても、Bさんには返さない。なぜなら、返済するとそこで関係が終わってしまうから。万一Aさんが大病にかかったとき、返済がまだならBさんはAさんを助けようとするわけです。だってBさんは貸したお金を返してほしいから(笑)。

すごい発想ですね! 思いやりがあるのかないのか(笑)。

しかもBさんは、次はCさんにお金を貸したりして、どんどん関係のネットワークが広がっていくそうです。これって僕ら日本人の多くがやっていることと真逆だと思いませんか? たいていは、高学歴や給与の高い仕事を得ようとしたり、万一に備えて貯蓄したり保険に入ったりしますよね。これって、将来自分が孤独になっても、どうにか生きられるようにする防衛手段みたいなもの。見方を変えると、ある意味、ネットワークで支え合うのを拒否しているともいえます。

でも、タンザニアの人々のように、他人をどんどん巻き込んでいって、「運贈り」をしていくような生き方のほうが、自然の摂理に合っている気がしませんか。来たボールを別の人にパスしていくと、その軌跡が渦になっていく。名づけて「ヴォルテックス(渦)・マネジメント」。詳しくは『13の未来地図』(ぴあ)に書きましたが、この渦に身を任せたり、あるいは自分が渦になって人を巻き込んだりできる人に、人が集まってくる。そして、集まった人が運をもたらしてくれるんです。

13の未来地図 フレームなき時代の羅針盤
13の未来地図 フレームなき時代の羅針盤
著者
角田陽一郎
出版社
ぴあ
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自分の中に「メタ視点」をもてば、失敗が楽しくなる

角田さんが独立を決めたきっかけは何でしたか。

僕は『「好きなことだけやって生きていく」という提案』(アスコム)という本を書いているんですが、タイトルで自分の意思を表明してしまった。だからかそれ以降、本当に好きなことしかしたくなくなって(笑)。TBSは大好きな職場でしたが、独立するしかないなと。こんなふうに踏ん切りがついたのは、「メタ視点」のおかげなんです。

「メタ視点」というのは?

「メタ視点」は自分を俯瞰して客観的に見る視点のこと。バラエティ番組って、VTRを鑑賞中の芸能人が、画面の端の小窓に表示されていますよね。で、おもしろ映像を見ている関根勤さんが笑っている姿を視聴者が観て笑っているという(笑)。この画面をリアクションワイプというんですが、要は、観客が「メタ視点」というもう一つの客観的な視点をもちながら番組を観ていることになるんです。

この「メタ視点」を自分の人生でも発揮すると、失敗が楽しくなるから不思議。たとえば好きな人にフラれてしまったら、かなり落ち込みますよね。お先真っ暗と思うかもしれない。じゃあ、そんな自分の人生をワイプで観て、ドキュメンタリー番組ととらえるとどうか。すると一度失敗したくらいで浮上してこない人生なんて、つまらないですよね。もっと色んな失敗をしでかしたほうが、視聴者側からすると断然面白い。

だからフリーのプロデューサーになって、成功したらもちろんラッキー。でも、失敗して食えなくなっても、「46歳で独立して失敗づくしの男性バラエティプロデューサー」みたいな自伝を書けばいいだろうと(笑)。「メタ視点」があれば、「もっと失敗しないと面白いネタ書けないな」と、何でも挑戦できてしまう。1つや2つの失敗くらいで「落ち込みすぎて立ち直れない……」ということはなくなります。

それは究極のリカバリー法ですね。

ビジネスパーソンも色んな壁にぶつかるかと思いますが、このリカバリー方法はおすすめです。マイナスはいくらでもプラスに反転させられると気づけます。

「やりたい」と「やらずにはいられない」は別物

角田さんは、テレビというメディアにこだわらず、「バラエティプロデューサー」という新たな境地を切り開いてきました。仕事を受けるかどうかの判断基準はありますか。

基準にしているのは、自分にとって「やらずにはいられないことかどうか」。「やりたい」と「やらずにはいられない」って、似ているようでだいぶ違うんですよ。後者には、「もう何が何でもやる!」という気概がにじみ出ていますから。やりたいことが見つからないという人は、「やらずにはいられないことは何か」と自分自身に問いかけてみてほしいですね。

僕がバラエティに富んだものを色々つくり続けているのは、視聴者を笑わせたいからじゃなくて、自分が本気で笑いたいから。映画「げんげ」の監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、インターネット放送局の「占いTV」、作家にスポットを当てるサッカソンのプロデュース……。今までやってきたのは、自分が心から面白いと思えるもの。
「儲かるからやる」じゃなくて、面白いことをとことん追求していたら、「いつの間にか儲かっていた」。今後もそんなスキームをつくり続けたいと思います。

運の技術
運の技術
著者
角田陽一郎
出版社
あさ出版
13の未来地図 フレームなき時代の羅針盤
13の未来地図 フレームなき時代の羅針盤
著者
角田陽一郎
出版社
ぴあ
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角田 陽一郎(かくた よういちろう)

1970年、千葉県生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業。1994年、TBSテレビ入社。『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』『オトナの!』などの番組を担当した名ディレクターとして高い評価を受ける。現在は、TBSテレビを退社。バラエティプロデューサーとして独立し、キングコング西野亮廣さん、コルク代表の佐渡島庸平さんなどのトップクリエイターとともに、テレビの枠に収まらない様々なフィールドで時代に求められる新たなライフ&ビジネススタイルの創造に挑戦し続けている。また、明石家さんまさんをはじめ、いとうせいこうさん、水道橋博士さん、堀江貴文さんなど、成功をつかんできた数多くの芸能人、著名人との親交も深く、その中で見て、感じた成功者の運のつかみ方が本書にはまとめられている。

著書にベストセラーとなった『「24のキーワード」でまるわかり! 最速で身につく世界史』『「好きなことだけやって生きていく」という提案』(ともにアスコム)や『13の未来地図 フレームなき時代の羅針盤』(ぴあ)、『成功の神はネガティブな狩人に降臨する~バラエティ的企画術~』(朝日新聞出版)、『究極の人間関係分析学 カテゴライズド』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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文責:松尾 美里 (2018/08/02)
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