【インタビュー】
「人生で大事なことはティー道が教えてくれた」
唯一無二の存在になるカギは「挑戦」にあり

「人生で大事なことはティー道が教えてくれた」

英語と日本語を交えたユニークな「ルー語」で親しまれる、俳優のルー大柴さん。テレビや舞台での活動にくわえ、大柴宗徹という茶道・遠州流師範の顔もおもちです。さらには水墨画、太極拳、エコ活動なども行うという多芸多才ぶり。

新著『心を整えルー』(自由国民社)では、ルー大柴さんが、茶道の魅力と、人生をよりよく生きるためのヒントをユーモアたっぷりに語っています。茶道師範になられるまで茶道を極めようと思った理由とは? 茶道のエッセンスを、仕事や人生にどう活かせるのかについてお聞きしました。

ティー道は人生のヒントの宝庫

── 新著『心を整えルー』で伝えたかったメッセージは何ですか。

ティー道は人生の糧になるということです。私がティー道を始めたのは50歳をすぎてから。そこから、何事もまずはやってみるという、チャレンジ精神が身についたし、新しい自分をディスカヴァーできました。続けるうちに、ティー道が人生のヒントの宝庫だと気づいたんです。これはもっと早くに始めればよかったなと。

そんなとき、自由国民社の編集者、竹内尚志さんから、「茶道の本を出しませんか」とオファーをいただいて。最初は「えっ、私に?」と驚きましたね。「ルー大柴さんなら良い意外性があって、茶道にこれまで接点がなかった方にも響くから」と。私も「もっと多くの人にティー道の良さを伝えたい」と思ってきましたし、私の経験がお役に立つならばと『心を整えルー』を書くに至りました。



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心を整えルー──ティーが教えてくれた人生で大切なこと
心を整えルー──ティーが教えてくれた人生で大切なこと
大柴 宗徹
自由国民社
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心を整えルー──ティーが教えてくれた人生で大切なこと
心を整えルー──ティーが教えてくれた人生で大切なこと
著者
大柴 宗徹
出版社
自由国民社
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── ルー大柴さん が茶道を始められたきっかけは何でしたか。

きっかけはマネージャーの増田からすすめられたこと。やっぱり敷居は高かったですよ。正座も慣れないうちはつらいし、所作を覚えるのも難しい。正直なところ「続けられるのかな」と思ったときも。
ですが、せっかく月謝を払ったのだし「もう少しだけがんばろう」と数回通うと、また来月の月謝も払ってしまい、もう一度……。これをくり返すうちに3年目で面白さに気づき始めました。

ティー道の細やかな所作の1つ1つにワケがあります。なぜ茶碗をこうまわすのか、なぜこの場所に茶道具を置くのか、とか。続けるうちに、だんだんティー道とはこういうことなのかなという全体像が見えてきて。ストーンの上にもスリーイヤーズ、石の上にも3年ってまさにその通り。2013年には師範の許状をいただけるまでになりました。

「おもてなしの精神」を学ぶことで、自分の「静」の部分が豊かに

── 茶道を続けるなかで、ルー大柴さんが感じた効果は何でしたか。

1つは、自分の「静」の部分が豊かになって生きやすくなったことです。ティー道を始める前、テレビで見せていた「ルー大柴」は、「俺が俺が」と自分を前面に出すキャラクター。いわば「動」の部分でした。けれども本来はそれって一面にすぎない。自分の中には「静」の部分もある。それをティー道が引き出してくれて。「静」と「動」をトゥギャザーすることが大事だと気づいたんです。

── 「静」の部分ですか。

お茶を点てるというと、少しかまえませんか? でもやってみると実は堅苦しいものではなくて。自分の五感や所作に神経を集中するので、心が落ち着いてくる。同じ所作をくり返して、場数を踏み、体に染みこませていく。そのうちに度胸がついて、どんな相手を前にしても動じることがなくなるんです。

もう1つティー道を続けてみて感じた効果は、「聞き上手になれる」ということ。最初のうちは掛け軸や生け花について尋ねるとか、トークが決まっているんですが、稽古に通ううちに、色んな背景をもった方とだんだん話すようになっていって。人間の良さ、寂しさのようなものに触れる機会が増えていった。その結果、前よりも人の話に耳を傾けられるようになった気がします。



ティー道にはもともとエンターテインメント性があるんですよね。ベースは、「おもてなしの精神」。すべての所作が、お客様に楽しんでもらうためにあるんです。だから、お茶を点てるなかで、相手のことを自然と観察するし、空気も読むようになっていく。
その積み重ねで、相手の立場に立つことが大事だと気づけるようになりました。

他人のアドバイスを素直に聞くことで、180度の方向転換ができる

── これまで、壁にぶつかったと感じた経験は何でしたか。

壁にぶつかったことはたくさんありますし、明日にでも仕事がなくなるのではないか、という不安定な生活の日だってありました。今ですら壁を感じることはありますよ。ティー道を始めようと思った当時も、まさにそうでした。「~だぜ!」の口調で話す「ルー大柴」というキャラに、自分も他人も飽き始めていて、仕事も減ってしまっていた時期。マネージャーから、ティー道という、普段のキャラとは真逆の提案をされたんです。

── 「今まで築いてきたイメージが変わるのでは」と、ためらうことはなかったのでしょうか。

もちろん最初は抵抗もありましたよ。私より18歳も年下で、当時マネージャーになったばかりの彼から、「いままでと同じことをやっていてはダメ」と鋭い指摘を受けたものだから、すぐには受け入れにくいですよね。
けれども、冷静に考えてみると、彼のいう通りだなと。過去に成功したエクスペリエンスを引きずっていたし、「このままではいけない」という焦りもあったんです。

だから、あえてこれまでのキャラとぜんぜん違う活動をやってみたほうが、息の長い活躍ができるんじゃないか。そう信じて、思い切ってティー道の世界に飛び込んだ。おかげで、仕事や人生の幅が少しずつ広がっていきました。



── 茶道を始めたことが突破口になったのですね。

壁にぶつかったときって、他人のアドバイスがとても貴重なんです。なぜなら自分一人で「新しいことをやろう!」と思っても、現在地から30度くらい、がんばっても60度くらいしか方向転換できないことが多いから。一方、他人の意見を取り入れれば、自分ではまず思いつかない発想をもとにしているから、180度の方向転換ができる。

だからこそ、何歳になっても、的確だと感じるアドバイスには、聞く耳をもたないといけない。それを素直に聞き入れるだけの度量が必要になるんじゃないでしょうか。

長年活躍している人は、チャンスをものにした後も新しい挑戦をしている

── ルー大柴さんのように、オリジナリティあふれる存在となり、芸能界で活躍し続けることは、並大抵のことではないと感じます。「この人に仕事をお願いしたい」と選ばれ続けるために意識されていることはありますか。

「自分はこの道だけ」と決めつけずに、新しいことに挑戦してみることですね。長年活躍している方を見ていると、もちろん、1つの道に専念して一流を極めている方もおられます。ですが、それだけでやっていける人はどうしても限られてしまう。

いまの時代は、何か1つ軸をもちながらも、新しい領域を開拓して、活躍の幅を広げている方が増えているように思いますね。歌手が俳優業にチャレンジするというように。常に勉強して、視野を広げているからこそ、チャンスをものにした後もさらに飛躍できる。これは芸能界だけでなく、どんな業界でも当てはまるんじゃないでしょうか。

新しいことって、仕事に限らず趣味でもいいんです。茶道でもゴルフでもヨガでも、面白そうだなと思ったら試してみる。本業で行き詰まりを感じるようなら、普段と違う世界をもってみる。それが自分を客観的に見つめ直す機会にもなります。



── ルー大柴さんご自身も、新しい挑戦を続けておられますよね。

私自身、60歳を過ぎても、進化し続けていきたいと思っています。「GymGym(ジムジム)」という体操をつくったのも、その一環です。太極拳をするなかで、健康でいるには運動の習慣が大事だなと感じることが増えました。それなら、ラジオ体操みたいに気軽で、エンジョイしながら健康になれる選択肢をつくればいいんじゃないか? そこから、生活習慣病の医学博士に監修をお願いして、クイズも取り入れた頭と体の体操を、マネージャーと一緒につくっていきました。会社で始業前にやるのもいいし、楽しみながら取り入れてもらえたらいいですね。


ルー大柴さんの体操の動画はこちらから
youtubeリンク

今後は、色々な場所でお茶を点ててふるまうことで、日本国内外にティー道の魅力を広めていきたいですね。日本にいながらティー道に縁がないまま過ごすのは、もったいない。まずはカタチからでもいいので、やってみることが大事です。かまえずに、もっと気軽な気持ちでお茶を点ててみようと思う人が増えたらうれしいですね。


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大柴 宗徹(おおしば そうてつ)

茶道師範。1954年新宿に生まれる。ルー大柴として俳優、タレントとして日本語と英語をトゥギャザーした話術を使う独自のキャラクターで活躍。 芸能活動のほか、2007年NHKみんなのうたに採用された「MOTTAINAI」をきっかけに、富士山麗の清掃や地域のゴミ拾いをするなど環境活動にも積極的に取り組む。 趣味はドジョウやメダカの採集、水墨画。茶道・遠州流師範、山野美容芸術短期大学客員教授も務める。

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文責:松尾美里 (2019/05/20)

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