【インタビュー】
映画化記念! AI研究者が語る「女の機嫌の直し方」
男女の間には深いミゾがある?!

映画化記念! AI研究者が語る「女の機嫌の直し方」

ケンカする夫婦が75%ともいわれる結婚式場。男性脳と女性脳の違いを研究するリケジョ(理系女子)の真島愛は、結婚式場でアルバイトをすることに。愛とウェディングプランナー青柳誠司が、「女の機嫌」を直すために奔走する――。そんな笑いあり涙ありのラブコメディ映画「女の機嫌の直し方」が公開されます。

原案となったのは、『妻のトリセツ』などのベストセラーを数多く生み出してきた、人工知能研究者・黒川伊保子さんのご著書『女の機嫌の直し方』(集英社インターナショナル)。映画化を記念し、男女の脳差に注目されるようになった経緯などをお聞きしました。

男女の脳の違いを知れば、男女のコミュニケーションが円滑になる

── 映画を視聴されて、どのような感想をもたれましたか。

原案となった『女の機嫌の直し方』は男女の脳差に関する専門的な内容です。ところが、映画を観ると、著書の表現に忠実でありながら、堅苦しさは一切なし。式直前に結婚をやめると泣き出す新婦と、それをなだめる新郎。熟年離婚の危機が顕わになる親戚夫婦。男女トラブルの「あるある」が次々に勃発します。夫婦の絆を感じるシーンもあり、観ている途中で感激して涙を流してしまうほど。映画の力を思い知らされましたね。


(C)2019「女の機嫌の直し方」製作委員会

(C)2019「女の機嫌の直し方」製作委員会

── ご著書の映画化が決まるまでの経緯は何でしたか。

監督の有田駿介さんはバラエティ番組がご専門で、女性視聴者に向けた情報番組を担当することになった。その際、タレントで俳優の南原清隆さんから、「女心を知りたいなら『女の機嫌の直し方』を読みなさい」とすすめられ、この本を手に取ってくださったのだそうです。たちまち内容に共鳴してくださって、ドラマ化を経て映画化される運びとなりました。

女の機嫌の直し方
女の機嫌の直し方
黒川伊保子
集英社インターナショナル
女の機嫌の直し方
女の機嫌の直し方
著者
黒川伊保子
出版社
集英社インターナショナル

── 『女の機嫌の直し方』で、黒川さんが読者に一番伝えたかったメッセージは何でしょうか。

男女の脳の違いを知ることで、男女間の無用ないさかいを減らせるということです。本来、男女の脳は別々の役割を担っています。人工知能という私の本来の研究分野に立ち戻り、「女性はこうすると機嫌が直る」というメカニズムを男性向けに示していく。そうすれば、女性の機嫌が直り、男女のコミュニケーションが円滑になると考えました。

ただし、恋愛や結婚生活を通じて、男女のすれ違いやそれを解消するための奮闘を充分体験してから本書を読んだ方が、圧倒的に納得感があるでしょう。だから、読書適齢期は28歳以降という意味を込めて、「R28」といっているんです。



「女性司書AI」の開発が教えてくれた女性らしさの秘密

── 黒川さんは、人工知能エンジニアの頃から男女の対話スタイルやものの見方の違いに着目し始めたとお聞きしました。脳の性差に関する作品を書かれるようになったきっかけは何でしたか。

1991年4月、全国の原子力発電所で、私が開発した「女性司書AI」が稼働しました。日本語で対話しながらデータを検索できるコンピュータで、文字の対応だけで女性だとわかるようにしてほしいというオーダーでした。研究の末、女性らしさを感じさせるポイントは、「共感で受け止めて話をつなげること」というのが明らかになりました。

女性は、何かを否定するときも、まずは相手の気持ちを受け止めてから、事実に関しては否定します。ポイントは、相手のキーワードを反復して、相手の気持ちに共感を示すことです。そこで女性司書AIでは、ユーザーの質問の一部を反復してから、その回答を提示するようにしました。

人工知能が席巻する21世紀に、こうした共感的な対応ができなければ、女性ユーザーは違和感を抱くはず。そもそも女性は日頃から、共感を示すやりとりを期待しているのではないか。この気づきが男女の脳差に注目する契機となりました。



── 男性脳が好む対話、女性脳が好む対話の特徴を教えてください。

男性の対話は「ゴール指向問題解決型」です。全体の主幹をシンプルにとらえて、結論を先に知ろうとします。たとえば女性が、「あの人、なんだか私につらくあたってくるから嫌だなぁ」といったとしましょう。男性は「君の口のきき方がよくないんじゃない」と、ズバリ解決策を突きつけてくる。ですが、女性は直球のアドバイスを受け入れにくいのです。なぜなら女性の対話は「プロセス指向共感型」だから。

正解は、男性が女性の言葉を反復して共感で返すこと。「そうか、それはつらいね」。最初にこの一言があれば、女性の脳のストレス信号が減少するため、その後のアドバイスを素直に聞き入れられるのです。これは職場のコミュニケーションでも同じ。女性の同僚や部下の感情の発露に共感することが、女性の仕事への集中力やモチベーションを高めることにつながるのです。

実は男性と女性の「記憶データベース」は、何かを想起する際の第一トリガーが異なります。男性の記憶データベースは、「マッピング」を第一トリガーとするため、ある記憶を全体のどこに位置づけるかを決める情報を必要とします。これに対して、女性のデータベースは、感情を第一トリガーにして形成されています。たとえば、友人から「あのカフェが美味しい」という情報を得たら、「大好きな友人がすすめてくれて嬉しい」という感情を重視するという具合です。
また、感情トリガーのデータベースでは、ある嫌な出来事をフックにして、関連した過去の嫌な出来事を引っ張ってこれる。だから女性は「蒸し返しの天才」になれるわけです。

こうした男女の脳の違いを知っておけば、男性は女性にいきなり結論を突きつけるのはよくないと気づけるようになります。逆に女性も、感情を無視されたと感じても「仕方ないな」と思えるようになり、日常のコミュニケーションがラクになります。

男性全員に「イクメン」を強いるのが酷なワケ

── 本書には、男性に全員「イクメン」になることを強いると、男性脳の強みが活かしにくいと書かれていて、ハッとさせられました。なぜそんなことが起きるのでしょう?

女性脳は一般的に、半径3メートル以内を綿密に見るような、料理や片付け、育児などの多重タスクを並行してこなすことを得意とします。一方、男性脳が得意なのは、遠くに照準を合わせることや、機械の組み立てといった精緻なシングルタスク。そのため、半径3メートル以内で色々な出来事が連続して起きる「家庭」は、男性脳にとって認知しにくい空間なのです。

ある調査によると、家事・育児に関しては、男性は女性が無意識に認知しているタスクのうち、3分の1程度しか認知していないといいます。つまり、男性脳が女性脳と同じだけのタスクを回そうとすると、3倍のストレスにさらされてしまう。

── そんなに差があるのですね!

脳は、神経回路の色々な信号にすべて対応できるわけではありません。夫にも家事・育児を毎日イーブンにこなすよう求めると、夫も妻も身近なマルチタスクは上手くなります。半面、展望力や精緻なシングルタスクは二人とも苦手になってしまう点を考慮しなければなりません。

ただし、普段使わない神経回路を使うのは、脳の活性化につながります。たとえば毎週土曜日だけ数時間、夫が家事や育児をするというのはよいことですよ。



「誰もが管理職になりたいはず」。その発想は男性脳的……?

── 日本企業では女性活躍推進の一環で、女性管理職の比率を上げるための取り組みがなされていますが、期待した効果につながっていないケースもあるようです。この問題に対してどうお考えですか。

管理職になりたいと考える女性を支援するという面では意義がある取り組みです。ですが、経営層や管理職になることをゴールとし、「誰もが管理職になりたいはず」と考えるのは、男性脳的な発想かもしれません。

人生で何を重視するかという価値観は人それぞれ。そのうえで、女性脳の特徴を考えると、周囲から「自分ならではの強みや良さ」を感謝されて働きたい、という人のほうが多いでしょう。女性活躍=女性管理職の比率を上げることと一律にとらえるのではなく、働く時間や場所、働き方を柔軟にするほうが、男女双方にとってよいのではないでしょうか。

また、管理職の方には、女性のやる気に火をつけるには、「結果よりも経過」を褒めることをおすすめします。女性脳が喜ぶのは、「何を達成したのか」よりも、「その人にしかできなかったこと」を褒められること。自分の頑張りを上司が見てくれていることが、心の支えになるのです。

「はい」と「ええ」をどう使い分ける? 語感の正体に迫る

── 6月7日に新著『ことばのトリセツ』(集英社インターナショナル)が発刊されました。読みどころを教えてください。

ここ数年は男女の脳差をテーマにした本を多く出していましたが、私の研究のメインテーマは、「語感の正体」です。先ほどお話した女性司書AIが「はい」と3回連続して答えると、冷たい印象を与えることがわかりました。生身の人間なら、「はい」「ええ」「そうです」などを混ぜ込むため、寄り添う感じが生まれます。そこで、AIが「はい」「ええ」「そうです」をランダムに繰り出すように設定。ところが、「この場面では『はい』っていってもらわないと不安なんだけど」「ここは『ええ』がいい」という、共通の要望が出てきました。

こうしたことは、場面に応じた「語感」への感性によって生じるもの。「はい」は迷いのない忠誠心を示す語感をもつ語。そのため、命令や依頼に「はい」と答えられると、「すぐにやってくれそう」と信頼がもてます。
次に、「ええ」は、距離の遠さや時間の長さを感じさせる「エ段音」が重なるため、「すべてを見渡して、それを肯定する」というニュアンスを伝えます。ただし、スピード感がまるでないため、緊急性や確実性を要する質問には適さないのです。
また、「そうです」の「そう」は包み込むような優しさがあるため、なだめる際に効果的。本書ではこうした語感効果について、物理学の観点による解説も盛り込んでいます。

人間が自然に使い分けていることばづかいのロジックを知っておけば、日常の会話や商品名のネーミングなどでも活用できます。大事なのは「意味」よりも「語感」。28年の語感分析の成果をまとめた渾身の一冊なので、ことばの感性を磨くためにお読みいただけたら嬉しいです。


映画「女の機嫌の直し方」
6月15日(土)より全国順次公開
(メイン館:ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場他)
配給:よしもとクリエイティブ・エージェンシー


(C)2019「女の機嫌の直し方」製作委員会

女の機嫌の直し方
女の機嫌の直し方
黒川伊保子
集英社インターナショナル
女の機嫌の直し方
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著者
黒川伊保子
出版社
集英社インターナショナル
ことばのトリセツ (インターナショナル新書)
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ことばのトリセツ (インターナショナル新書)
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プロフィール:

黒川 伊保子(くろかわ いほこ)

人工知能研究者、脳科学コメンテーター。1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業。(株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて人工知能(AI)の研究開発に従事した後、2003年(株)感性リサーチ設立。著書に『日本語はなぜ美しいのか』(集英社新書)、『「ぐずぐず脳」をきっぱり治す!』(集英社)、『ヒトは7年で脱皮する』(朝日新書)、『恋愛脳』(新潮文庫)、『英雄の書』(ポプラ社)など。『ことばのトリセツ』(インターナショナル新書、6月7日発売)。

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文責:松尾 美里 (2019/06/21)

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