【インタビュー】
北洋建設社長はなぜ、元受刑者雇用に人生を懸けるのか?
自伝『余命3年 社長の夢』に込めた願いとは

北洋建設社長はなぜ、元受刑者雇用に人生を懸けるのか?

札幌市にある北洋建設株式会社の代表を務めている小澤輝真さん。元受刑者を日本で一番受け入れており、その数はのべ500人以上に及びます。進行性の難病である「脊髄小脳変性症」を発症し、余命10年と宣告されながらも、元受刑者たちの就労支援を進めようと精力的に活動されています。初の自伝となる『余命3年 社長の夢』(あさ出版)にどんな想いを込めたのでしょうか。

「人は仕事があれば、再犯しない」

── 『余命3年 社長の夢』を執筆しようと思った動機は何ですか。

2012年に脊髄小脳変性症という病気を発症して、余命10年と宣告されました。脊髄小脳変性症は進行性の病気で、言語や運動機能が年々低下していきます。現に、ここ数年で、だいぶ身体の自由が利かなくなってきているなと実感することが増えました。また、夜眠るときも、息苦しくなることが多くなり、「このまま死んでしまうのではないか」と思うこともあります。

この病気は、やがては寝たきりになってしまいます。まだぎりぎり動けるこのタイミングで、自分の考えや思いをまとめておきたいと思いました。だから、『余命3年 社長の夢』は私の最初で最後の本です。また本書の売り上げの一部は元受刑者の就労支援の活動費として使用いたします。少しでも現状が変わればと思っています。

余命3年 社長の夢
余命3年 社長の夢
小澤輝真
あさ出版
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余命3年 社長の夢
余命3年 社長の夢
著者
小澤輝真
出版社
あさ出版
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── 小澤さんがご著書で一番伝えたかったメッセージは何ですか。

「人は仕事があれば、再犯しない」。これに尽きます。今、日本は再犯者率が年々上昇しており、過去最高レベルです。そして、再犯者の7割以上が逮捕時に仕事についていないというデータもあります。

出所して仕事につくことができなければ、稼ぎを得ることもできないし、住むところも持てません。そうすると再犯が起こりやすくなります。「衣食住が保障されている刑務所のほうがいいから」と、わざと罪を犯す人もいるほどです。彼らに仕事があれば、生活の基盤ができ、更生の道が開けます。

一方で、多くの会社が、元受刑者の雇用をしようとしない現実があります。私の会社では、北洋建設の創業者である父の代から45年以上、500人以上の元受刑者を雇用してきました。自分たちの取り組みを伝えることで、こうした現状を変えたいと思っています。



── 小澤さんが「元受刑者の雇用を続けてきてよかった」と感じる瞬間は、どんなときでしょうか。

彼らが仕事を通じて社会に必要とされ、更生していく姿を見ることです。結婚をして家庭を持った、マイホームを買ったなどという報告を聞くと、まるで自分のことのようにうれしいです。

出所者の受け皿になる会社の絶対数が少ないという現状

── 北洋建設で受け入れた元受刑者のうち、約8割は途中で去ってしまうと書かれており、なかなか厳しい現実があるのだと感じました。元受刑者の方々を受け入れるなかで、苦労されたこと、課題に感じていることはありますか。

元受刑者を受け入れると、最初に40万円ほどの費用がかかります。入社早々に辞めたり、いなくなったりすると、その費用が無駄になってしまうので、正直厳しいです。国の助成金にも限りがあるので、土地を売ったりして費用を捻出しています。

一方で、出所者が最初の職場に定着することはあまりなく、何度か職場を変えるなかで少しずつ社会に適応していくともいわれているので、仕方がないかなとも思っています。ただ、出所者の受け皿になる会社や業種の絶対数が少ないことも、彼らの離職率の高さにつながっているのかもしれません。元受刑者にとっては、仕事の選択肢が限られているのです。皆が皆、建設業に向いているわけではないですからね。本来なら、多様な選択肢のなかで、自分に向いている仕事が選べるのが理想です。

── その課題に対し、小澤さんが工夫されていることは何でしょうか。

北洋建設の仕事は現場仕事で肉体労働ですから、決して楽ではありません。ただ、どうしても職人に向いていないと判断すれば、資材にスプレーを吹き付ける仕事や、草刈り、除雪などの仕事もあります。働きたいという気持ちがあれば、できるだけその人に向いた仕事を用意して、仕事を続けてもらいたいからです。

もう1つ大事にしているのは、なるべく居心地がいい職場環境をつくること。会社の雰囲気がよければ、人は「ずっと働きたい」と思うようになります。だから、入社当日には歓迎会を開きますし、その後も皆で食事をしたり、飲んだりする機会を多くつくっています。愚痴や心配事があれば、気軽にいえるような関係をめざしているからです。ちなみに、長期間刑務所にいると、質素な食事に慣れてしまって、出所直後は普通の食べ物を体が受けつけないのです。そういう人には、入社から少し後に歓迎会を開くようにしています。

北洋建設の入社条件の1つは、「前科を隠さない、過去をオープンにする」というもの。変な詮索が起きないようにすることで、彼らが仕事に集中しやすい環境をつくっています。


全国の刑務所にいる受刑者から、北洋建設で働きたいという手紙が数多く届いている。

見た目や経歴で判断される理不尽な状況を変えたい

── ご著書をお読みして、上川元法務大臣に面会して全国の刑務所への求人ポスターを貼るよう伝えたり、山下法務大臣に助成金などに関する要望書を提出したりするなど、「元受刑者を雇用する企業」を増やそうと、精力的に活動されている姿が印象的でした。小澤さんがこの活動にこれほどまでに力を注げるのはなぜでしょうか。

高校を中退して、バンドの活動資金をつくるために働こうとしたときの経験が大きく影響していますね。中卒でしたし、当時は髪の毛の色がピンクだったこともあって、なかなか仕事をするチャンスをもらえなかったのです。やる気はあるのに、見た目や学歴、経歴で判断されるのは違うんじゃないか――。元受刑者たちも同じように理不尽な経験をしているので、その状況をなんとかして変えたいと思うのです。

また、自分が病気になって、助けを必要としている人の気持ちがこれまで以上に理解できるようになったことも、今の活動の原動力になっています。

ただ、ときどき誤解されるのですが、元受刑者の雇用はボランティア活動ではありません。元受刑者は、まじめにやり直したいのに、その機会が得られなくて困っている。彼らは真剣に頑張りたいと思っています。私たちはそうしたやる気がある人を必要としているから、積極的に雇っているのです。あとがない人たちが発揮する力って本当にすごいんです。もちろん社会的な意義のある活動だと思っていますが、それだけではありません。

── 今後、元受刑者の雇用に取り組みたいと考える企業に対し、円滑に受け入れを進めるうえでのアドバイスをお聞かせください。

まずは寮があるといいですね。できれば3食付が理想です。おなかが満たされて、ゆっくり休むことができれば、安心感が違いますから。また、特に出所直後だと、手持ちのお金が少ないので、給料日まで生活ができないという人も多いです。そこで北洋建設では、毎日給料から2000円分を前払いしています。1日のうちに食事以外でそれだけ使えるお金があれば、心の余裕が違います。

2000円は、私が2000円札で手渡ししています。2000円札は珍しいので、支払いをするときに相手に顔を覚えられますよね。だから変なことはできません。それに、手渡しをするのは、「使うときに私の顔を思い出してほしい」という気持ちもあります。

大事にしてほしいのは、やはり、孤独を感じさせない雰囲気づくりです。そのうえでアドバイスをさせていただくとすれば、とにかくまずは雇ってみることだと思います。前科の有無に関係なく、実際に雇ってみないと、その人が本当はどういう人なのかはわからないですよね。雇ってみてはじめていろいろなことが見えてくると思います。


2019年7月4日 職新プロジェクトの会場にて

自分の気持ちを大切にしていれば、逆境でも前を向ける

── 小澤さんの姿から、自分なりの使命感や信念のもとに新しい挑戦や社会への貢献をめざそうと考えるビジネスパーソンも多いのではないかと思います。そんな方々へのメッセージをお願いします。

使命感や信念を持ってチャレンジをすると、いろいろと壁にぶつかることも少なくないと思います。そうしたときに、覚えておいてほしいのは、自分を大切にすること。自分の気持ちを大切にしていれば、逆境に陥っても、前を向けるはずです。逆に、心から「もうだめだ」と思ったときは、その気持ちを押し殺さず、その気持ちに従えばいい。自分の代わりはいないのだから、自分自身を大切にしてください。

── 小澤さんが「これは成し遂げたい」と思い描いていることがあれば教えてください。

出所した人が皆、仕事につくことができ、それによって更生が進み、再犯者率がゼロになる。そうした社会の実現を願っています。そのためには、制度や社会の意識、いろいろなものが変わっていかなければなりません。おそらく私が生きている間に実現することはないでしょう。でも、一歩一歩、そこに近づいていくことはできます。そのために、今やれることを精いっぱいやるだけです。

余命3年 社長の夢
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小澤輝真
あさ出版
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著者
小澤輝真
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プロフィール:

小澤 輝真(おざわ てるまさ)

北洋建設株式会社代表取締役社長

1974年、北海道札幌市生まれ。1991年、創業者である父の死に伴い、18歳で北洋建設入社。2012年、父と同じく進行性の難病である「脊髄小脳変性症」を発症し、余命10年とつげられる。2013年より現職。北洋建設は、創業以来500人以上の元受刑者を雇用。「人は仕事があれば再犯をしない」という信念のもと、余命宣告以降、より積極的に受け入れを進めると同時に、大学院へ進学し「犯罪者雇用学」を専攻。企業が元受刑者を雇用しやすい環境づくりを訴えている。2009年、放送大学教養学部卒業。2012年、日本大学経済学部卒業。2015年、放送大学大学院修士課程修了。東久邇宮文化褒賞、法務大臣感謝状など受賞・表彰多数。

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文責:松尾 美里 (2019/07/22)

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