【対談】人生の主導権を取り戻すカギは「早寝」にある
『昨日は22時に寝たので僕の人生は無敵です』著者・井上皓史さん
【対談】人生の主導権を取り戻すカギは「早寝」にある
『昨日は22時に寝たので僕の人生は無敵です』著者・井上皓史さん

仕事が忙しくて自分の時間が持てない。
いつも仕事に追われているような感覚がする……。
こうした問題意識を抱いている人に対して、『昨日は22時に寝たので僕の人生は無敵です』(小学館)の著者である井上皓史さんは、「早寝早起きをするだけで人生が変わる」とアドバイスします。
本書には、井上さんが朝渋という朝活コミュニティを立ち上げ、多くのビジネスパーソンを朝型に変えてきたなかで積みあがってきた、実践的なノウハウが詰まっています。多くの仕事を抱える中で、どうやって早寝早起きを定着させられるのか。そもそも早寝早起きの具体的な効果・メリットは何なのか。ご著書に書かれたメッセージを、Voicy「荒木博行のbook cafe」の対談を通じて伺いました。その内容を記事としてお届けします。
大事なのは、早起きではなく早寝
荒木博行:まずは井上さんが、この本を書くことになったきっかけを教えてください。井上皓史:現在は朝渋という朝活コミュニティを運営しています。私は小さい時から、22時に寝て5時に起きるという生活を続けていました。毎朝5時に起きるので、「5時こーじ」と呼ばれるようになったほど。
しかし、社会人になって、みんなが夜型だということに衝撃を覚えたんです。朝型の方が仕事の効率もよいのに、なぜこんなに夜遅くまで仕事をするのだろうかと。そこで、社会人2年目のとき、朝型の生活を世に広めたいと思い、ライフワークとして朝渋というコミュニティを立ち上げました。そこから4年ほど経ちますが、朝7時半に渋谷にあるBOOK LAB TOKYOに集まって、新刊のトークイベントなどを開催しています。
朝渋の活動を通じて、私は約500名の方を早起きに変えてきた実績があります。そのノウハウがたまってきたので、そろそろ本にしようかなと。ただ、本書のポイントは、「早起き」ではなく「早寝」にあります。早起きの重要性は99%の人が知っていますが、僕の感覚値として、実践できているのはわずか5%程度。どうしてそのギャップが生まれるかというと、早く寝ることが徹底できていないからなんですね。
荒木:本書をお読みしましたが、たしかに早寝早起きは手段であって、本来の目的は「自分の人生の主導権を取り戻す」ということなのですよね。本書の根幹にある、このメッセージにはとても納得感がありました。
仕事でもこの考え方はあてはまりますよね。上司から与えられた仕事でも、自分がその仕事をどう意味づけするかが問われる。そして、それを実現するためには、心の余裕が求められます。常に仕事に追われていると、仕事の意味づけは単なる理想論に終わってしまう。
ではどうしたら心に余裕が持てるのか。その答えは意外にシンプルで、「早く寝よう」ということなんですね。
井上:まさにそうなんです。社会人になりたての時期は、「あれやれ」「これやれ」と指示されたままこなしていることが多いでしょう。ですが、「自分がどうしたいのか?」というように、主語を「自分」に変えなければ、どこかで疲れてしまう。そのためにも、朝早く起きて、出社前に2〜3時間の時間をつくろうと呼びかけています。

渡辺健太郎氏撮影
自分の人生の経営者になろう
荒木:井上さんが社会人になってすぐの頃、周囲が夜型でも早寝早起きのスタイルを続けるために、何か工夫をされたと思うのですが、その経験談を教えていただけますか?井上:はい。実は私も1社目のとき今とは全然違うライフスタイルでした。10時出社で、21時に仕事が終わるのが基本で、そこから残業や飲み会という日もありました。帰宅したらそのまま寝て、朝起きたらすぐに出社。こうした会社軸のスケジュールで、仕事に追われるようにして生きていました。
10時出社だと、ミーティングやメールの返信で、あっという間に昼になってしまいます。そこからタスクをこなしていくと、15時、16時になるのはざら。いざ頭を使う仕事をしようと思うと19時、20時に。その時間軸では、読書や英語学習といった自己研鑽の時間が取れません。その危険性に気づいたのが入社して3ヶ月目のことでした。
「生活リズムを変えなくては」と思い、上司に相談したのです。2〜3時間早く出て、2〜3時間早く帰っていいですか?と。笑われましたが、「本気だったらいいよ」といっていただけました。スケジュールを朝型に変えたところ、仕事で成果が出るようになってきました。すると、不思議なことに、時間に追われる感覚がなくなってくるんです。その過程で、「夜なら2時間かかる仕事が朝だと30分で終わる」「飲み会を断っても人生は変わらない」といった気づきをたくさん得られました。
荒木:なるほど。よくわかります。仕事の効率という観点では、日中は電話などが舞い込みますし、集中するためのまとまった時間が取れませんよね。普段のオフィスにいると、思考を集中させる20分の時間を取るのも難しいものです。かといって、みんなが帰宅してからそうした仕事をするようになると、残業体質にハマってしまいます。
井上:おっしゃる通りです。その点、朝5時〜7時台はまだ世の中が動いていません。その間に集中モードになることで、人よりも一歩リードできる。そうすると心に余裕も生まれます。
荒木:その心の余裕の積み重ねが、この本にある「自分の人生を経営する」というキーワードにつながるのでしょうか。
井上:そうですね。「人生の経営者」というのは、自分の大切な時間の使い方を自分で意思決定する、ということ。当たり前のように思われるかもしれませんが、実際にはうまくできていない人が多いのです。
特に、夜の時間の使い方は疎かになりがち。比較的朝はルーティンをこなす意識が高い人が多いものの、たとえば21時以降の時間の使い方を決めている人はそれほどいません。夜の時間の使い方こそシビアに、主導権を持って決めるべきだと思います。

渡辺健太郎氏撮影
飲み会には自分なりのルールを作る
荒木:夜の時間の使い方というと、飲み会という大きなハードルがありますね。これをどう乗り越えるのかを教えていただけますか。井上:本当にその飲み会にいく意味があるのかを、毎回考えるべきだと思います。ちょっと飲みいくぞといった程度の飲み会で、スケジュールを埋めていくのは避けた方がいいでしょう。本来は夜こそ、読書や家族との時間など、意図を持った時間の使い方をすべきです。飲み会は週3回などの頻度で行くべきものではありません。飲み会よりも大切なものはあるはずですから。
荒木:職場の惰性的な飲み会が一番の害かもしれないですね。さらに、二次会、三次会がセットになってくるのは時間的にも厳しい。ただ、一方で、飲み会を通じて人脈を作るといったことは大事でもあります。そのバランスをうまく取るためのアドバイスはありますか?
井上:大事なのは、自分なりの「飲み会ルール」をあらかじめ作っておくことです。僕の場合は、自分を含めて4人以内の飲み会にだけ行くようにしています。4人以上になると、会話が複数のグループに別れてしまいますので、一次会だけで話せない人が出てきます。そうすると二次会に行くことになりがちです。ですが、4人以下なら、一次会だけでじっくり深い話ができます。
あとは開始時間のルールも設けています。どれだけ遅くても19時スタートの飲み会にしか行きません。また、率先して幹事をやり、3時間飲み放題コースにしないとか、自宅に近い場所で開催するとか、そういうルールも持っています。
荒木:ご著書では、「シンデレラルール」という例外も作っているとありました。
井上:いくらルールを作っても、どうしても例外的に行かないといけない飲み会もありますよね。そうした飲み会は月に一回ならOKとしていて、その日だけ「シンデレラルール」というのを発動しています。シンデレラのように24時までには必ず帰って寝るというルールです。そして、次の日は無理に早起きをしないようにしています。こういうルールがないと、ダラダラしてしまうんですよね。
荒木:井上さんのように、自分自身が早寝早起きであるということを周囲に広めることも大事ですね。
井上:僕は「5時こーじ」って名乗っているので、5時に起きていなければ僕ではないんです(笑)。そう周囲にSNSなどで宣言しておくと、誘いを断りやすくもなり、自分自身も約束が破りにくくなります。

渡辺健太郎氏撮影
小さなルールを守ることで自己肯定感を高めよう
荒木:コロナの影響でますます自分なりのルール作りが大事になっているような気がします。出社という物理的な強制力が、リモートワークのために和らいでいくと同時に、高い次元のセルフマネジメントが問われていますね。井上:まさに規律を作るというのが、社会人として大事なスキルになってきていると思います。規律を作るうえで大事なのは、早寝早起きを習慣化することのメリットを正しく理解することです。そのメリットは端的にいうと、早寝早起きは自信につながるということ。自分で決めた時間に寝て起きるだけで、セルフコントロールをしている感覚を持てます。さらに、朝5時に起きて6時半にルーティンを終えていると、朝7時前の段階で「今日もやることをやったな」と思えるので、自己肯定感の向上につながります。
リモートワークになって、自己肯定感を失いかけている人が多い気がします。褒められることも感謝されることも減っていますから。そんなときこそ、自分のメンタルは自分でコントロールする必要があります。「ルーティンを作って守る」ことは、そのための武器になります。
荒木:自己肯定感が高い人は、自分との小さな約束事を守るところからスタートしているのかもしれませんね。だからこそ、今、自己肯定感が低い人は、まずは「10時に寝る」と決めて実行するくらいのことから始めるとよいのかもしれないと思いました。弾み車の効果といわれますが、小さな回転でも回り始めると一気に加速していきます。最初の第一歩は小さくていいから、それを継続することが大事だと。
井上:そうなんです。たとえば、いきなり10キロ走ることを目標にしない。毎日公園の入り口に行くだけでもいい。その約束を守っていれば、徐々に10キロ走る習慣がつくので、最初はハードルが低くてもいいんです。
荒木:この本のポイントは、起きる時間ではなくて、寝る時間ですもんね。自分で決められますからね。
井上:はい。5時起きを目標にすると、睡眠時間を削ってしまう人が出てきます。だから早く寝ることを習慣にするのが大事です。
荒木:ご著書の最終章には、早く寝ることによって人生を変えた人たちのストーリーが並んでいますね。これらのストーリーで伝えたかったメッセージというのはありますか。
井上:サッカーの控え選手のような心境が大事だというメッセージを込めました。準備だけで終わる可能性もありますが、いつ試合に出てもいいぞという思いで準備をしている。そこに美学を感じるんです。
この本のストーリーに登場した人たちは、まさに早寝早起きという準備を続けて、その結果、巡ってきたチャンスを掴み取った人たちです。早寝早起きを通じてメンタルコントロールができているからこそ、目の前のチャンスに気づき、一歩を踏み出せたのです。
荒木:キャリアというのは偶然でできていますが、その偶然を掴むためには、しっかりした準備が大事ということですね。
井上:はい。早寝早起きは小さなことですが、大事な準備だと思っています。本書を読んだ方が、人生を変えるための小さなきっかけを掴んでいただけたら本望です。


プロフィール:
井上皓史(いのうえ こうじ)
1992年、東京都生まれ。朝活コミュニティ「朝渋」代表。株式会社 Morning Labo取締役。幼少期より22時に寝て朝5時に起きる生活を続けていたが、社会人となって、夜型の生活を送るビジネスパーソンの多さに驚愕。朝活コミュニティ「朝渋」を東京・渋谷で立ち上げ、会員とともに、読書や英会話などさまざまな活動を行う。また、本の著者を招いたトークイベント「著者と語る朝渋」は年間 5000人を動員する規模に成長した。 2018年、勤務先の企業を退職し、ライフワークだった「朝渋」に本格コミット。早起きを日本のスタンダードにすることを目指す。
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文責:荒木博行 (2020/06/30)