フィンランドという「未来」に近づく
読者が選ぶビジネス書グランプリ2021 イノベーション部門賞!

フィンランドという「未来」に近づく

「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」の結果が2/16に発表となりました。今回で6回目となるグランプリもたくさんの方からご投票いただき、コロナ禍であっても読書への熱はいやましに増しているようです。

『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ社)は、イノベーション部門の部門賞に輝きました。受賞記念として、著者の堀内都喜子さんへのオンラインインタビューを実施。フライヤーのアドバイザー兼エヴァンジェリストの荒木さん、フライヤー代表の大賀との語らいの様子をダイジェストでお届けいたします。

サウナに入ることもビジネスの内

大賀康史(以下、大賀):堀内さん、受賞おめでとうございます。

堀内都喜子(以下、堀内):ありがとうございます。このようなトロフィーをいただくのは人生初です。

大賀:『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』は、フライヤーでは要約を公開した2020年3月から4月にかけて特によく読まれていましたし、本もよく売れていましたよね。

せっかくの機会なので、この場をお借りしてフィンランドの魅力についていろいろお伺いしたいと思います。本の中では、夏休みがとても長い様子や、フィンランド人の合理的な考え方、人をフェアに扱う人間性といったことが書かれています。そのなかでまず私が気になったのはサウナでして(笑)。フィンランドのサウナって日本のものとは違うんですよね。

堀内:フィンランドのサウナ文化は、2020年12月にユネスコの無形文化遺産に選ばれました。生活の奥深くに入っていて、どこの家にもあります。熱い石に水をかけて蒸気で暖まるという仕組みは、日本で一般的なサウナとは違いますよね。最近では、日本でもセルフロウリュ(利用者が自分でサウナストーンに水をかけるスタイル)というフィンランド式のサウナが増えてきてはいます。

フィンランドではサウナは、家でゆっくりするときだけでなく、ビジネスでも使われます。福利厚生的に仕事終わりにみんなで入ることも。サウナがビジネスでも大きな要素を占めているんですよね。

大賀:それは面白いですね。サウナの入り方もいろいろあると思いますが、堀内さんは湖の氷に穴を空けて水の中にも入ったんですよね?

堀内:4回くらい入りました。フィンランドでは真冬にはほとんどの湖が凍っているので、そこに穴を空けて、サウナの後にジャポンと入るんです。心臓が止まるかと思うほど冷たいのですが、その後じわじわっと暖まってきて、そのあとまたサウナに入ります。

大賀:日本にも水風呂はありますが、本場は違いますね。

リセットが得意なフィンランド人

大賀:堀内さんはフィンランド大使館で働いていらっしゃいます。フィンランドに観光や仕事で行ったら、これは絶対にやっておいたほうがいいということはありますか。

堀内:まず1つは先ほどからお話ししているサウナです。公衆サウナだけでなくて、どこの会社にもあるんです。そこで隣にいる人と会話したり同じ時間を過ごしたりすることが私は好きで。肩書きもすべて取っ払って、同じ空間で同じ時間を過ごす。サウナほど平等な場所はない、とフィンランドでは言われているんです。本当に腹を割っていろんな話ができるのでぜひ体験してください。

それから、フィンランドは自然が豊かなところなので、空き時間に自然とふれあうこともオススメです。フィンランド人はオンとオフの切り替えがとてもうまいのですが、自然へと出かけていってそこでリセットしてくるんですね。それで効率よくがんばる。

大賀:フィンランドではコーヒー休憩をみんなでとっていますよね。これはコミュニケーションを円滑にする効果があると。それから、やっぱり「午後4時に帰る」ことにはインパクトがあります。

日本の働き方と比べて、どのあたりが一番生産性を変えるところだと思われますか?

堀内:先ほど申し上げたオンオフの切り替えの話にもつながりますが、フィンランド人は終わりを絶対に崩さないんです。もちろん、日によっては10分、15分の残業をしてしまうことはありますが、7時間や8時間という労働時間を大前提にして、みんなで共有しています。だから、変な時間にミーティングを入れたりしません。

終わりが決まっているなかで、100%全部に出力していくのは難しいので、どう優先順位をつけるか。ずっと密度濃く仕事していると疲れますから、いかに効率よく休みをとるかも工夫していくわけですね。

それに、組織に上下関係が少なくてフラットなので、お互いにいろいろなことを言いやすい雰囲気があります。ここの無駄を省きたい、こうしたほうがいいんじゃないかという提案もしやすい。その繰り返しで、どんどん変わっていっている感じはしますね。

イノベーションを起こすための働き方

荒木博行:この本がいまの日本の世相にはまったことを、堀内さんはどのように解釈されますか?

堀内:この本を書く少し前から、日本では働き方改革が叫ばれるようになっていました。刊行されたのが10年前だったら読もうと思わなかったと言われたんですね。日本の働き方はこれでいいのかなって、ちょうどみんなが考えていたときだった。働き方改革で、「たくさん仕事もするけれどたくさん休みもして、それでもそれなりに生産性を上げられるんだ」と。しかもそこにコロナがきた。

在宅勤務もそうですが、フィンランドでは柔軟な働き方によってとても生産性が上がっているし、いい人材も見つけています。長時間労働ではなくて、そういう方向でずっとやってきたんですね。

それがちょうど、コロナで急激に変化していった日本の勤務体系とも重なった。この本で提示した働き方が、未来の1つの形であると感じていただけたのかなと思います。

大賀:たしかに、働き方も含めて、日本の10年後、20年後が見える感じがしました。

堀内:出口治明さんは本書を紹介してくださったとき、この本には未来のことが書かれているとおっしゃったんですね。これからは、イノベーションを起こし、さまざまなアイデアを出していくときに、インプットする時間、いろんな刺激を受ける時間も必要だとも言われていて、まさにその通りだと思いました。フィンランドはイノベーションに未来を見いだしています。日本もその方法について考える時期が来たのかもしれません。

身近な「異文化」への目線

大賀:ではここで、堀内さんの「マイビジネス書グランプリ」をお伺いしましょう。

堀内:最近ではなく2015年に出た本なのですが、『異文化理解力』(英治出版、原題=”The Culture Map”)をオススメします。 私は大学で異文化コミュニケーションや組織コミュニケーションを勉強していました。そのときに、文化をどう分析するのかについて書かれた論文をいろいろ読みました。

文化に優劣はないはずなのに、外国の人と仕事するようなとき、「何でこうしちゃうんだろう」「何でこういう考え方をするんだろう」と思うことはありますよね。たとえば日本には盛んに行間を読む文化がある。かたやオランダやフィンランドではかなりダイレクトにものを言うので、行間をまったく読まない文化ともいえます。上下関係が強い国もあれば弱い国もある。決断がトップダウンなのかボトムアップなのかも異なる。そうした文化の違いにかんする分析は、70年代くらいから欧米を中心に行われてきました。

この『異文化理解力』にはたくさん事例が入っていて、読んでいるだけでも興味をそそられます。異文化に属する人に対しては特にステレオタイプをつくりがちですが、こういう本を読むと、観察力や分析力を養うのに役立つと思います。いま海外とのやりとりがない人でも、異文化を理解すること、異文化について考える力は必要なはず。世代間や男女の違いといった、いろんなコミュニケーションの違いを考えるときにも使えますから。

大賀:異文化というと国や民族といった粒度で考えがちですが、普通に会社で働くなかでも出てくることですからね。

堀内:本当にそうです。もちろん仕事だけではなくて、家庭のなかにもあるはず。友人関係でも育った環境によって大きく異なってくることはあり得ます。そういったときに「なんで理解してくれないんだろう」とただ相手を否定しがち。こういう本は、「この考え方がもしかしたら違うのかも」と想像するためのベースになるでしょう。

大賀:昨年のビジネス書グランプリでテーマとなった「多様性の理解」は、ますます大切さの度合いが強まっていますね。
フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか
フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか
堀内都喜子
ポプラ社
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フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか
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著者
堀内都喜子
出版社
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堀内都喜子(ほりうち ときこ)

長野県生まれ。フィンランド・ユヴァスキュラ大学大学院で修士号を取得。フィンランド系企業を経て、現在はフィンランド大使館で広報の仕事に携わる。著書に『フィンランド 豊かさのメソッド』(集英社新書)がある。

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文責:石田翼 (2021/03/08)
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