〈対談〉コロナ禍でも強い営業チームを作る4つのポイント
『無敗営業 チーム戦略』著者・高橋浩一さん

〈対談〉コロナ禍でも強い営業チームを作る4つのポイント

新型コロナウイルスの流行により、私たちの働き方は大きく変わりました。特に、在宅勤務の導入と、商談や打ち合わせのオンライン化は、営業担当者にとって大きな変化だったのではないでしょうか。

いま営業部のマネジャーは、いかにチームを運営し、成果を上げていけばいいのか――そんな悩みに答えるべく、TORiX株式会社 代表取締役の高橋浩一さんは著書『無敗営業 チーム戦略』の中で、チームを生き返らせる4つのポイントを提唱します。

本書には、高橋さんが確立した、「無敗営業」を組織で実現するための実践的なノウハウが詰まっています。ご著書に書かれたメッセージを、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリストである荒木博行さんが、Voicy「荒木博行のbook cafe」の対談を通じて伺いました。その内容を再構成してお伝えします。

オンライン商談後、お客さまにはぐちゃぐちゃの資料を共有せよ

荒木博行(以下、荒木): 前著『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』に引き続き、新刊『無敗営業 チーム戦略』も拝読しました! 高橋さんは、言語化能力、「型」にする力がずば抜けていますよね。その結果として編み出された4つのポイントが、本書の骨子になっています。
無敗営業 チーム戦略
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高橋 浩一
日経BP
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無敗営業 チーム戦略
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著者
高橋 浩一
出版社
日経BP
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高橋浩一(以下、高橋): ありがとうございます。本書では、“強いチーム作り”のポイントを「勝ちパターンを作る」「活動の実態を『見える化』する」「人が育つ仕組みを作る」「コミュニケーションのバランスを整える」の4つにまとめて、これを「オセロの4つの角」にたとえています。

オセロって、4つの角を押さえると圧倒的に勝率が上がりますよね。一方で、営業マネジメントにおいては、「これさえ押さえれば成果が上がる」という具体的なものが定義されていません。そこで「オセロの4つの角」にならい、強い営業チーム作りのポイントを定義することにしました。

荒木: きっと、オンライン化によって、営業の勝ちパターンは変わりましたよね。

高橋: 変わりましたね。ポイントになってくるのは、お客さまとの「二人三脚」です。従来の営業では、営業担当者が提案をして、お客さまが検討したり、判断したりするのが普通でした。

一方、オンライン商談では情報量が足りませんから、お互いが補い合わない限り話が進みません。「ご判断ください」と言っても相手はピンとこないし、温度感も上がらない。

だから二人三脚で、お客さまとの共同作業を進めていくのが効果的なんです。その一つとして有効なのが、あえてぐちゃぐちゃの資料を送ること。オンライン会議で画面共有をして、話し合いながらパワーポイントの資料を作り上げたとしましょう。営業担当者って、その資料をすぐにお客さまにお送りするのをためらいます。図形がずれたり、フォントがバラバラだったりするのを、整えてから送ろうとする。

でも、打ち合わせ後の資料は汚いからこそ価値があります。なぜなら、「いっしょに作っている感」を出せるから。資料の体裁を整えて翌日に送るより、打ち合わせの直後に、メールの本文すら入れずに資料だけを送るくらいでいいんです。

荒木: 私は著書『藁を手に旅に出よう』で、「フェイス・トゥ・フェイスではなくサイド・バイ・サイドの関係性が大事」といったことを書きました。これと同じですよね。向かい合うのではなく、横並びで座って、同じビジョンに向かって関与していく関係。そんな関係を早めに築けるかどうかが勝負のポイントなんでしょうね。
藁を手に旅に出よう
藁を手に旅に出よう
荒木博行
文藝春秋
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藁を手に旅に出よう
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荒木博行
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文藝春秋
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ポイント(1)勝ちパターンを作る

高橋: 営業幹部の多くが「勝ちパターン」に関心を抱いているのですが、多くの会社では、勝ちパターンの粒が大きすぎる傾向にあるようです。実際、「御社の勝ちパターンは」と尋ねると、「お客さまとの信頼関係を作ることです」と答える方が9割以上を占めます。

荒木: なるほど。信頼関係の構築が成果につながるのは間違いないでしょうが、それをどうブレイクダウンし、再現性のある「勝ちパターン」に落とし込むか、ということですよね。

高橋: おっしゃる通りです。そこで私はまず、決着案件リストを振り返り、接戦だった案件を見つけることをおすすめしています。受注したものでも、うまくいかなかったものでもいい。勝負のポイントは、そこに凝縮されているからです。

たとえば私の会社では、「どの瞬間にお客さまの心が動いたか」をたどっていくと、提案書を見る前に心が決まっていることがわかりました。そしてそのタイミングは、初回訪問と、初回訪問から2回目の訪問までの間にあることが多かった。

だから私は自社の社員たちに、「提案書作成を頑張らないで。その段階で頑張っても遅いから。勝負ポイントはもっと前にあるよ」と伝えています。

ポイント(2)活動の実態を「見える化」する

高橋: 2つめの角は「活動の実態を『見える化』する」です。商談の進捗を“フェーズ”に分けていくんですが、ここにも落とし穴があります。

それは、「わかりやすさ」と「正しさ」を求めてフェーズを分けてしまうこと。だから「初回訪問をした」「見積もりを提出した」など、本質的でない分け方がなされてしまう。すると「なんでもいいから2回目の訪問をしよう」となって、前進していないのに前進しているように見えてしまうんです。

「合意ができたかどうか」でフェーズを分けるなら、「合意ができたとはどういうことか」をじっくり議論しましょう。ここで議論しておかないと、フェーズが機能しなくなってしまいます。

荒木: うーん、深いですね。これって、自分たちのアクションベースでフェーズを決めるのではなく、お客さまの状態から定義していくことになるんでしょうか?

高橋: お客さまとの間で何が合意できているか、お客さまからどんな情報をいただいているかがポイントになります。受注に近付くにつれ、SFA(Sales Force Automation:営業支援ツール)に入力できる情報が増えていくはずです。

ポイント(3)人が育つ仕組みを作る

高橋: 3つ目の角、「人が育つ仕組みを作る」について、本書では「グー」「チョキ」「パー」という要素を3つ挙げました。「グー(Gutai)」は具体的なサンプル、「チョキ(Check point)」はチェックポイント、そして「パー(Performance)」はパフォーマンスの確認です。

「グー」、具体的なサンプルとは、提案の進め方について、動画や資料で具体的に示したもの。言葉で語られていることが多いのですが、ビジュアルで示したほうがわかりやすいですよね。どんどん録画を残すようにして、その中からお手本になるものを選んで型にしましょう。

荒木: 今ならZoomやスマホで手軽に録画できますもんね。

高橋: ここでポイントになるのは、ハイパフォーマー一人の商談だけでなく、複数のお手本を用意すること。そうしないと、「あの人は特別だから」と、学ぶことを諦めてしまう人もいるからです。その上で、複数のお手本に共通するポイントを示しましょう。これが「チョキ」です。

また、いい例だけ見せると、自分も簡単にできるような気になってしまうことがありますよね。だからお手本の人に、悪い例も作ってもらうといいですよ。

荒木: うまくできる人に、あえて悪い例を演じてもらうんですね。そして最後が「パー」、パフォーマンスの確認ですね。

高橋: 動画のサンプルがあり、チェックポイントが示されていれば、教材としては十分。ただ、実践に移すのは難しいですから、ロールプレイをやってみましょう。

荒木: 言語化した後は、実践してみるんですね。といっても、ロールプレイにも巧拙あるでしょうし、モチベーションが下がってしまうような場面もありそうです。

高橋: あるあるなのが、うまくできない人が営業担当者役を、成果を出している営業担当者をお客さまに見立てるロープレ。こうすると、営業担当者役はとにかくたくさんの指摘を受けることになり、それらを消化しきれないままになりかねません。

そこでおすすめなのが、15分ロープレです。15分を前半と後半で分けて、前半では、気を付けるポイントを明確にした上でロープレを。簡単にフィードバックした後、もう一度ロープレをし、指摘されたポイントが改善されているかをみていきます。

荒木: なるほど! 15分ロープレをすると、何が起こるんでしょうか。

高橋: 軌道修正力を上げることができます。営業で成果を上げられる人って、お客さまの様子にあわせてトークを柔軟に軌道修正する力を持っていますよね。

この力を鍛えるために、前半のロープレでもらったフィードバックを即座に反映する練習をするんです。すると多くのケースでは改善が見られ、「良くなったね」という褒め言葉でロープレを終えることができます。

ポイント(4)コミュニケーションのバランスを整える

高橋: 勝ちパターンがはっきりして、見るポイントが明確になっていると、マネジャーがメンバーにつまらないことを言わなくてよくなります。オンラインでのコミュニケーションがメインになると、直近の数字以外について話す時間がほとんどなくなってしまいがちです。意識的に、部下のケアなどにも目が向けなければなりません。

荒木: なるほど。最後の角である「コミュニケーションのバランスを整える」にもつながってきそうですね。心理的安全性の大切さは理解していても、目先の数字に気を取られて「そんなことをやっている場合じゃない」と後回しにしてしまうこともありますよね。

高橋: 本書でも、「PM理論」の「Performance(目標設定や計画立案、目標達成のための指示)」と「Maintenance(人間関係を良好に保ち、集団のまとまりを維持するコミュニケーション)」のバランスについて書きました。会議で売上などを発表させることがあると思いますが、数字は見ればわかりますから、もっと別のことを話すべきだと思います。

私がいろいろな会社さんを見ていて気付いたのは、コロナ禍でも調子がいい会社こそ、会議では数字に直接関係のない大事なことについても話しているという事実です。マネジャーが最近読んだ本の話をして、みんなで意見交換している会社さんもありました。

荒木: なるほど。意識しないと、コミュニケーションはPに偏ってしまうものですからね。

営業組織のマネジャーは、一度自分と部下の会話を棚卸しして、PとMの比率を振り返ってみるといいかもしれません。高橋さん、今日はコロナ禍のチームづくりに生かせる深いお話をありがとうございました!



写真提供:高橋さん
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※本内容は、Voicyでも放送されています。対談の音声のリンクはこちらから。

高橋 浩一(たかはし こういち)

TORiX株式会社 代表取締役

東京大学経済学部卒業。外資系戦略コンサルティング会社を経て25歳で起業、企業研修のアルー株式会社へ創業参画(取締役副社長)。1日100件のテレアポ新規開拓や数十人の営業組織をゼロから作り、同社上場に向けた足がかりを作る。2011年にTORiX株式会社を設立し、代表に就任(現職)。これまでの経験をベースとして、上場企業を中心に50業種3万人以上の営業強化を支援。行動変容を促す構造的アプローチに基づき、年間200本の研修、800件のコンサルティングを実施。日経ビジネス課長塾“THE 営業力”でもメイン講師を務める。8年間、自らがプレゼンしたコンペの勝率は100%を誇る。主な著書に『無敗営業「3つの質問」と「4つの力」』『無敗営業チーム戦略 オンラインとリアル ハイブリッドで勝つ』(両方とも日経BP)など。

Twitter@takahashikoichi

荒木博行(あらき ひろゆき)

株式会社学びデザイン 代表取締役社長、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリスト、株式会社ニューズピックス NewsPicksエバンジェリスト、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、株式会社絵本ナビ社外監査役。

著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。

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文責:庄子結 (2021/03/19)

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