【ビジネス書グランプリ 総合グランプリ受賞!】
現代人が「一流の生き方」に熱狂する理由
44年間愛されてきた致知出版社の編集者がめざすもの

現代人が「一流の生き方」に熱狂する理由

読者が選ぶビジネス書グランプリ2022で総合グランプリと自己啓発部門賞をダブル受賞したのは、『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』。そして政治・経済部門賞を受賞したのが『稲盛和夫一日一言』でした。

この2冊を世に送り出した出版社が致知出版社です。『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』は創刊40年以上の歴史をもち、日本で唯一の人間学を学ぶ月刊誌『致知』から、人間力・仕事力を高める365人のエピソードを厳選してまとめた一冊です。424ページで30万字超の大著であり、発売1年あまりで30万部を突破。また『稲盛和夫一日一言』は、稀代の名経営者として知られる稲盛和夫さんが折節に語った、人の心を強く鼓舞する366の金言が収録された渾身の一冊です。

今回はこの2冊の編集に携わった月刊『致知』編集長の藤尾允泰さん、書籍編集部次長の小森俊司さんに、本書の魅力、編集者としての信条をお聞きしました。


「何かに取り憑かれたのではないかと思われるほど心揺さぶられる本」

── まずは総合グランプリ受賞、自己啓発部門賞、政治・経済部門賞受賞の感想をお聞かせいただけますか。

藤尾允泰さん(以下、藤尾):まず一報を受けたときは驚きましたし、社内が歓喜の渦に包まれました。多くの読者の方々が支えてくださったことへの感謝の念が湧き起こり、感無量でしたね。

── 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』は、一流に達した人にだけ見える本質が詰まった一冊だと感じました。印象的な反響はありましたか。

藤尾:読者からの感動の声も数多く寄せられていますが、意外であり非常に嬉しかったのは、取材させていただいた著者の先生方が喜び、応援してくださったことです。なかには100冊、200冊、多いと1,500冊もまとめて買ってくださった方がいました。
また書店員の方々が熱心に「この本を売ろう」と協力してくださったのです。象徴的なのがある書店員の方のSNS投稿でした。

「何かに取り憑かれたのではないかと思われるほど心揺さぶられる素晴らしい本。(中略)書店員として、たくさんの人に届けたい。それができなければ、書店は存在意義を失うのではないか、と恐怖さえ感じる」。こんな言葉を寄せてくださったのです。

白いカバーをはずすと、本書に登場された365名のお名前がズラリと並んでいる。

── 書店員の方々からも深く愛された本であることが伝わってきます。本書を制作しようと思ったきっかけは何でしたか。

小森俊司さん(以下、小森):月刊『致知』には11万5000人の定期購読者がいらっしゃいますが、「雑誌でありながら、毎号が永久保存版」とおっしゃる読者も多いのです。その当時、42年間1万本以上の取材を行ってきた『致知』から、特に感動したお話だけを選び抜けば、ものすごい熱量のある本ができるのではないか。そう考えたことが制作のきっかけでした。

念頭に置いていたのは映画監督、黒澤明さんの言葉です。黒澤監督は『七人の侍』をつくる際、こんな風に語ったそうです。「ステーキの上にうなぎのかば焼きを乗せ、カレーをぶち込んだような、もう勘弁、腹いっぱいという映画を作ろうと思い、制作した」。この発想を書籍の世界に持ち込んで、これでもかというくらいに次から次へと感動が押し寄せるような本になればという思いを抱いていました。

どんなに忙しい方でも1日2、3分なら読書の時間をとれると考え、2、3分で1つの話を読めるように必ず1ページにおさめました。毎日読み続けていただくためには、その1ページのなかに必ず感動がなければいけない。そうした内容にするべく、記事選びにはこだわり抜きました。

── 掲載する記事はどのような指針をもとに選ばれたのでしょうか。

小森:方針は1つだけ、「自分の心が熱くなったかどうか」です。話し手は、有名無名を問わず、経営者、アスリート、作家、デザイナー、医師、教育者、科学者など実にさまざま。1冊を読み通してみると、職業や立場が違っても、共通項のようなものが浮かび上がってくる。それは本書にも登場するプロゴルファー杉原輝雄さんの言葉を借りると、「人間のプロ」になるための心得に通底するのではないかと思います。

「365篇を集めるのは大変だったのでは」とよくいわれるのですが、編集しているときは楽しくて夢の中にいるようだった。まさに夢中でしたね。

1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書
1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書
藤尾秀昭(監修)
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1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書
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著者
藤尾秀昭(監修)
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稲盛さんの言葉が、コロナ禍で不安を抱える人たちへのエールになる

── 『稲盛和夫一日一言』は稲盛さんの金言がコンパクトにまとめられ、読むたびに心洗われる一冊でした。本書を制作するようになった背景を教えていただけますか。

小森:稲盛和夫さんの語録集は、致知出版社の社長である藤尾秀昭が10年以上前からあたためていた企画でした。稲盛さんの人生哲学、経営哲学である京セラフィロソフィを学び、継承することを目的に開設された「稲盛ライブラリー」の方々に全面的にお力添えいただき、実現に至りました。特徴は、これまで京セラ内でのみ語られた秘蔵の講話やスピーチなど、初公開の言葉も多数収録されていること。短い言葉もあれば比較的長めの言葉もあり、独特のリズムがあって、一冊を一気に読み通しても心に刺さる言葉がいくつもあるはずです。

── 10年以上前からですか。

小森:なぜこのタイミングでその企画を実現できたのか。コロナ禍で悩みや不安を抱えている方が多いいまこそ、JAL再建など幾多の困難を乗り越えてきた稲盛さんによる、体験に裏打ちされた言葉が貴重な指針となるのではないか。そうした考えが実現の後押しになりました。

「寸言こそ人を感奮興起させる」。この言葉の通り、稲盛さんの寸言に込められたエネルギーが読者の方々に伝わったのではないでしょうか。

稲盛和夫一日一言
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稲盛和夫
致知出版社
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稲盛和夫
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致知出版社
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変化の激しい時代にこそ、人は「心のよすが」となる普遍的な教えを求める

── 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』にも『稲盛和夫一日一言』にも、一流の方の人生哲学・仕事観が詰まっています。いまの時代に、読者がこうしたテーマに惹かれる理由は何だとお考えですか。

藤尾:変化の激しい時代にこそ、「何のために生きるのか」「何のために働くのか」といった原理原則が求められるからではないでしょうか。

『致知』の誌名は、2500年ほど前に記された東洋古典『大学』の一節に由来します。『大学』『論語』のように、何千年もの時を超えて読み継がれてきた古典には、普遍的な教えが凝縮されています。

現在の日本に目を向けると、長引くデフレに加え、コロナ禍やデジタル革命が起き、めまぐるしい変化に直面している真っ只中です。こうした転換期こそ、平時以上に人は「心のよすが」となる指針を求めるのではないかと思います。

ビジネスパーソンでも学生でも、目標に向かって真剣に取り組んでいる方が本書を読めば、心が研ぎ澄まされ、目標を達成する力を得られるはずです。一方、悲しい出来事に直面している人が本書にふれると、「これほどつらい状況でも乗り越えられるのか」と勇気づけられます。こんなふうに、両方の局面において心に響く言葉を見つけられる一冊ではないでしょうか。

「やらされている百発より、やる気の一発が勝る」

── お二人にとって特に印象に残っているインタビューはどのようなものでしたか。

藤尾:全部といいたいところですが、とりわけ印象深いものの1つは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させたマーケターの森岡毅さんです。インタビューの際は、森岡さんがもともと『致知』を愛読されていたこともあってか、マシンガントークがとまりませんでした。

非常にしびれたのが、「ある問題について、地球上で最も必死に考えている人のところにアイデアの神様は降りてくる」という言葉です。これは私自身が編集者として寝ても覚めても企画のことを考え抜くという心懸けとも符合しており、実感を以て感動しました。

入社当初から「著者に感謝され、感動される仕事をしよう」という気構えで仕事をしていました。もっとも、これは私がそうしようと思ったわけではなく、弊社社長が創刊間もない頃から培ってきた仕事魂であり、脈々と受け継がれてきた致知編集部のDNAです。

小森:印象的だったインタビューといえば、愛知工業大学名電高校などで長く野球部監督を務めた中村豪さんの言葉が浮かびます。中村さんは元プロ野球選手のイチローの恩師でもありました。そんな中村さんの「やらされている百発より、やる気の一発」という言葉に、感電するくらいの感動を覚えました。

当時の私は致知出版社に入社して3、4年目。編集部のレベルの高さに打ちのめされ、どうしたら上司や先輩方のような文章をまとめられるようになるのだろうかと悩んでいた時期でした。ある朝、上司のゴミ箱にあったテープ起こし原稿を見つけて、記事の完成形と見比べてみる勉強をはじめました。振り返ると、こうして自ら貪欲に技術を学びとろうとしたことが、最も編集力を磨くことにつながっていったと思います。『365人の仕事の教科書』は、そういう「やる気の一発」を授けてくれる本ではないかとも思います。

── 最後に、お二人の今後のビジョンについて教えてください。

藤尾:今年1月に『致知』編集長を拝命しましたが、私の夢は『致知』創刊100周年を見届けてこの世を旅立つことです。これからも真実の体験に裏打ちされた本物の言葉や教えに光を当て、「真剣に生きる人の心の糧になる」という創刊理念を追求し、体現していきたいですね。現在『致知』の購読者数は11万5000人にのぼりますが、人間学の教えを求めているけれどもまだ出会えていない方々は、もっともっとたくさんいらっしゃると思います。そういう方々のためにも『致知』読者20万人、日本一をめざして邁進していきます。

小森:まずは3月発刊予定の『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』の第2弾を、書名の通り、より多くの方に「生き方の教科書」として届けていきたいです。「致知」の「致」には、「押し広げる」という意味もあると伺ったことがあります。「致知」の言葉の通り、知を自分にとどめず広く伝えていきたいですね。

編集は、素材を切ったり貼ったりして自分の腕を見せつけるものではなく、すでに備わっている命を活かすもの。致知出版社で働くなかでそのように教わってきました。あらゆる命を輝かせることが編集の仕事であるという姿勢を貫いていきたいと思います。

1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書
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藤尾秀昭(監修)
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藤尾允泰(ふじお さねやす)

1988年東京都生まれ。致知出版社社長・藤尾秀昭の二男。2011年学習院大学法学部卒業後、致知出版社入社。以来一貫して、月刊『致知』の編集・発行・普及に携わる。2017年『致知』副編集長、2019年取締役就任。2022年1月より『致知』編集長を務める。

小森俊司(こもり しゅんじ)

1979年滋賀県生まれ。2004年致知出版社に入社し、致知編集部へ。2014年より書籍編集部。2021年書籍編集部次長。主な担当書籍に『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』『齋藤孝の小学国語教科書 全学年・決定版』

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文責:松尾美里 (2022/03/04)
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