人の心は不思議なものである。
同じ物を見ても、感じ方、感想、視点は人によってまったく異なる。また同じ人でもその日の気分によっても違うことを考える。
人の心の働きと、行動を科学的な手法で研究する学問が心理学だ。
優れた心理に関する知見はビジネスシーンはもちろんのこと、プライベートの人間関係でも私たちの手助けをしてくれる。
今回紹介する本は、人を動かし、あなたを動かす「心理」の真相に迫るものだ。
さまざまなシーンでの「心理」に、論理的かつ客観的に捉える良書を厳選した。
けっして目に見えない「心理」に向き合うきっかけとして、まずは要約に触れていただきたい。
影響力の武器【第三版】
ロバート・B・チャルディー二,社会行動研究会(訳)
誠信書房
影響力の武器【第三版】
著者
ロバート・B・チャルディー二
社会行動研究会(訳)
著者は、セールスマン、募金の勧誘者、相場師などの業界に潜入し、その経験から「承諾」についての人間心理のメカニズムを解き明かしている。
人の態度や行動を変化させる心理的な力について、豊富な事例が掲載されている。世界的ベストセラーで、経営者やビジネスパーソンの中で評価がとても高い一冊。
しかしそもそもは、詐欺師や強引なセールスマンの手口を見破り、賢い消費者像を啓蒙するのが本書の目的であった。
「現金は小銭でも盗まないが、ボールペンなら平気で失敬する」「ボランティアならとても頑張るが、安い報酬ではやる気が失せる」「同じ薬でも、高額なほうがよく効く」
こんな人間の「不合理」を、心理学と経済学をベースに多くの実験によって解き明かしていく。そして実験の結果を踏まえて、実社会でどう生かすのか、その実践的な手法を提供している一冊。
本書を有益に感じない、ビジネスパーソンはいないはずだ。
ポジティブ心理学が1冊でわかる本
イローナ・ボニウェル,成瀬まゆみ(監訳)
国書刊行会
「ポジティブ心理学」は、人のポジティブな側面をさらに伸ばして、より豊かな人生を送ることをめざす学問。
要は、「幸福は、幸福を連れてくる」というわけだ。さらに幸福は社交性や生産性を高めて、健康や寿命にまでよい影響を与えることを、科学的な手法を元にデータで表されている。
「人は成功するから幸せになるのではなく、幸せだから成功する」普段、中々ポジティブな気持ちになりきれない人にもぜひご一読いただきたい。
本書は「愛は技術である」という挑戦的な一文で始まる。しかし内容は決して小手先のハウツーの類ではなく、論理的に愛の本質や、その失敗の原因を分析している。
本書の執筆は1950年代だが、古びている考察はほとんどない。むしろ本書内で語られる「愛は孤独から抜け出すための能動的な活動」との定義は現代社会を見越していると言える。
いま友人や家族、恋人との関係に悩む人にとって、本書は確実に一筋の光明となる名著である
臨床経験豊富な精神科医である著者が、夫婦のすれ違いを解消するための21のケーススタディを紹介している。
著者が示す問題解決の糸口は、相手との関係性を見つめ直すことである。たとえ夫婦間でも、相手をコントロールし、相手を思いのままに動かすことではなく、ありのままの相手を受け入れ大切に思うことが重要なのである。
本書は夫婦という関係性を通して、人間の心、生き方、コミュニケーションの本質を浮き彫りする良書である。