2011年10月5日にアップルの創業者スティーブ・ジョブスがこの世を去って、早5年が経過しました。アップルにおけるジョブスの影響力の大きさは周知の通りであり、彼が去ったあとのアップルは、革新的なプロダクトを生み出せていないと指摘されることもしばしばです。
さて、破天荒な天才肌の人物として知られるジョブスですが、言うまでもなく、彼は1人だけで大きな事業を成し遂げたわけではありません。多くの優秀な人物に囲まれ、そして関係を築いていくことで(あるいは破壊していくことで)、アップルを今日の大企業にまで躍進させました。
そこで今回は、フライヤーがこれまで要約してきたもののなかから、ジョブスと、彼を取り巻く人々に関する書籍を5冊、まとめて紹介させていただきます。
洗練されたシンプルなデザインを生み出すために、巨大で複雑な課題に立ち向かっていく人々の奮闘には、いつ読んでも手に汗握ること間違いなしです。アップル製品が好きという方も、そうでもないという方も、ぜひ。
スティーブ・ジョブズの王国
マイケル・モーリッツ,林信行(監修),青木榮一(訳)
プレジデント社
スティーブ・ジョブズの王国
著者
マイケル・モーリッツ
林信行(監修)
青木榮一(訳)
スティーブ・ジョブズといえば、言うまでもなくアップルの創業者として知られる起業家ですが、もともとは大きな会社にすることなど考えておらず、ちょっとした副業として会社を立ち上げたと言われています。
そんなジョブスが、どうやってアップルを今日のような大企業に成長させることができたのか。
実現困難と思われることでも、「やればできるかもしれない」と思わせ、そして実現させてみせる――それこそがジョブスという人間であり、本書はその魅力を十二分に描き出しています。
ジョブスについて知りたければ、まず読んでみてほしい一冊です。
アップルvs.グーグル
フレッド・ボーゲルスタイン,依田卓巳(訳)
新潮社
もはや現代人の必須ツールともなったスマートフォンですが、そもそもの始まりは2007年1月9日、ジョブスがiPhoneの誕生を高らかに宣言したところに遡ります。
発表当初、iPhoneはまだ完成していませんでしたが、ジョブスのプレゼンはスマートフォンのもつ可能性を色鮮やかに描きだし、多くの人を魅了しました。
これに焦ったのが、当時極秘にAndroidの開発を進めていたグーグル。
それ以来、両者はスマートフォン市場の覇権を争って対立を激化させるようになります。
本書は膨大な資料をもとに書かれており、スマートフォン黎明期の「歴史書」としての価値も高いです。
今なら文庫版も出ておりますので、ぜひともそちらのご購入を。
ジョブスといえばその強烈な人柄がよく知られていますが、本書は料理人という立場から、スティーブ・ジョブズという人間について綴った意欲作です。
15歳から寿司の修行を始めた著者は、1979年に渡米。本物の日本食がまだまだ根づいていない環境の中、本格的な寿司や会席料理を専門とする店を開き、そこでジョブスと出会いました。
「アップルで働いてみないか」とまで言われた著者の目に映るジョブスは、子どもたちと真摯に向き合い、その成長を素直に喜ぶ父親でもありました。
また、本書は米国での起業物語としても刺激的な仕上がりになっており、その点にも注目していただければと思います。
沈みゆく帝国
ケイン岩谷ゆかり,井口耕二(訳),外村仁(解説)
日経BP
沈みゆく帝国
著者
ケイン岩谷ゆかり
井口耕二(訳)
外村仁(解説)
デザイン、製品開発、マーケティングなどの戦略すべてに関わっていたジョブスが亡くなると、アップルは山積する新たな課題に直面することになります。
アップルにはもはや世界を再発明するような製品を生み出す能力はなく、「イノベーションのジレンマ」の例外ではなくなってしまったと批判した本書は、アップルの現CEOティム・クックから「寝言」だと名指しで批判されたことでも話題を集めました。
はたして今後、アップルは沈んでいくのか、それともふたたび革新的な存在として浮上していくのか。
いずれにせよ、ジョブスの存在感の大きさを実感せずにはいられなくなる一冊です。
ジョナサン・アイブ
リーアンダー・ケイニー,関美和(訳),林信行日本語版(序文)
日経BP
ジョナサン・アイブ
著者
リーアンダー・ケイニー
関美和(訳)
林信行日本語版(序文)
デザインがアップルの大きな魅力であることに、異論をもつ人はけっして多くないでしょう。
ジョナサン・アイブは、ジョブスが生前、「彼以上に業務運営の権限を持つのは私だけ」と認めたほどのデザイナーであり、いまやアップルにとって欠かすことのできない重要人物として、ますます注目が集まっています。
ジョブスとの出会いをきっかけに、iMac、iPod、iPhoneといったアップルを象徴するプロダクトを次々と手がけていったアイブ。
本書を読み終わるころには、彼の今後の動向から目が離せなくなっていることでしょう。