
「この会社で働きたい」と思われるようになるには?
近年よく聞かれるようになった「エンゲージメント」という言葉。ウイリス・タワーズワトソン社の定義によると、「従業員の一人ひとりが企業の掲げる戦略・目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲」をさします。
わたしたちは、どうすれば「この組織にコミットしよう」「自分の価値を提供しよう」という意欲が湧いてくるのでしょうか。
フライヤーのアドバイザー兼エバンジェリストである荒木博行さんは、グロービスの教員として多くの優秀な人材を輩出し、大手企業などでの研修も担当する、人材育成の専門家です。
そんな荒木さんによると、エンゲージメントに寄与するのは「身近な人との人間関係」。今回は人間関係の観点から、エンゲージメントを高めるためにおすすめの本を紹介していただきました。
ライター・庄子結


1冊目は『爆伸びマネジメント』。マネジャーとして、6年間で組織の売上30倍、拠点数12倍、従業員数5倍という目覚ましい成果を上げた中尾隆一郎さんが、独自のマネジメント手法を紹介した一冊です。
本書には「マネジメントの質は、職場の関係構築で決まると言っても過言ではない」といったことが書かれています。これは、エンゲージメントにおいても同じではないでしょうか。
あなたは、関係性の質を高める努力をせず、部下や後輩にコミットメントを求めていませんか? 相手は何が好きで、これまでどんなキャリアを歩んできたのか。何がモチベーションになり、どんなときに力を発揮するのか――。まずは相手をよく理解しましょう。
著者によると、関係構築のカギは「リーダーの自己開示」と「チームの共通体験」。
まずはリーダー自身がどんな人物で、どのような思いをもって組織を運営しようとしているのかを開示しましょう。そのうえで、オンライン・オフライン問わず、合宿や研修などで共通体験を積み、強固な関係性を構築していくのです。


2冊目は『課長2.0』です。ソフトバンク子会社の社外取締役として活躍した前田鎌利さんが、自身の経験をもとに「リモート・マネジメントの教訓」をまとめています。
著者によると、理想のチームを構築するためには、リーダー自身のスタンスを日常的な振る舞いやコミュニケーションで見せておくことが重要です。
具体的には「事務的な内容でもビックリマークや絵文字で気持ちを表現する」。オンライン会議で少し多めにうなずいて「あなたの話を聞いているよ」とアピールしたり、チャットツールでは「マジですか!!!」とテンション高めにリアクションしてみたり。日常的なふるまいによって「あなたとのコミュニケーションを歓迎しています」という気持ちを伝えるのです。
丁寧なコミュニケーションを続けて、部下や後輩が「上司に話しかけてみよう」→「上司に自己開示してみよう」→「上司のことを知ろう」となれば、エンゲージメントはやがて高まるかもしれません。


3冊目は『気持ちよく人を動かす』です。本書では、営業のプロフェッショナルである高橋浩一さんが、営業の枠をこえた「人を動かす方法」を教えてくれます。
ここでは、本書で紹介されている「アクティブリスニングの3つの要件」を見てみましょう。
(1)自己一致:聞き手の言葉と様子に矛盾がない状態
(2)無条件の肯定的関心:否定や評価をせずに相手を受け入れ、尊重する姿勢
(3)共感的理解:相手と感情を共有し、相手と同じ視点で物事を捉える姿勢
どれも当たり前と言えば当たり前のことばかり。でも、よく知っている相手の話を聞くときほど、この3つを実践するのは難しいものです。
この3つを守り、自分の話に誠実に耳を傾けてくれる上司に恵まれると、部下のエンゲージメントは間違いなく高まるでしょう。「話を聴く」というのは、誰でも簡単にできることながら、ものすごい武器になるのです。


4冊目は、伊藤羊一さんがリーダーのあるべき姿について書いた『FREE, FLAT, FUN』です。タイトルにもある「FREE」「FLAT」「FUN」は、それぞれ次のように定義されます。
FREE:常識から解放され、一人の人間として自由に生きること
FLAT:一人ひとりが、異なる意思を持つリスペクトされるべき存在であること
FUN:一人ひとりが意思を決めて生きられれば、楽しく幸せな社会になるということ
リーダーがこの3つの哲学を備えていることは、エンゲージメントを高めるうえで非常に大切です。常識から解放され、上下関係なく考えて行動し、自分が本当に楽しいと思えることを実現しようとしている――。こうしたリーダーのもとで働くと、誰しも「この組織のために頑張ろう」と思えるのではないでしょうか。


5冊目はジェームズ・ハンター氏の『サーバント・リーダー』です。
本書で著者が提案するのは、「リーダーが支配する側ではなく奉仕する側にまわる」こと。一般的にリーダーとは、部下から何くれとなく気を遣われ、奉仕される側ですよね。しかしそうした組織では、部下は顧客でなく上司のために働くことになってしまいかねません。
「リーダーのご機嫌うかがいをする」「リーダーの好みにあわせて資料を整える」など、リーダーに奉仕することばかりが重視される組織には、エンゲージメントは生まれにくいでしょう。
この状態を脱するには、関係性を逆転させ、リーダーが奉仕する側にまわること。要するに、現場で活躍するプレーヤーこそがもっとも尊重されるべき存在になり、リーダーはプレーヤーをサポートする存在になります。そうすれば、業績が上がるのみならず、プレーヤーのエンゲージメントが高まっていくでしょう。


6冊目は、同調圧力のメカニズムを解き明かす『同調圧力の正体』です。「個人を尊重する組織」を専門に研究している著者、太田肇さんは、日本企業において同調圧力が強くなる原因として「集団で行う仕事が多く、相互依存度が高いこと」を挙げています。
仕事の相互依存度が高くなると、他の人の仕事ぶりが、自分の仕事のパフォーマンスに影響を与えます。その結果、同調圧力が生まれやすくなってしまうのです。これは、日本企業の多くが「ジョブ型雇用」を採用していないこととも関連しているかもしれませんね。
こうした状況を解決するためには、「あなたの仕事はこれです」と明確に提示するといった方法も考えられるでしょう。すると「わたしの仕事はこれか。よし、やるぞ!」とコミットメントが生まれ、エンゲージメントが高まる。こうした好循環が生まれるかもしれませんね。
エンゲージメントを高めるヒントにあふれた6冊をご紹介しました。エンゲージメントに関心のある方は、ぜひ要約を読み、書籍を手に取っていただければと思います。
※本記事は、フライヤーの「Lunch timeビジネスワークアウト」ウェビナーの内容を再構成しています。
荒木博行(あらき ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリスト、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、株式会社絵本ナビ社外監査役、株式会社NOKIOO スクラ事業アドバイザー。グロービス経営大学院副研究科長を務めるなど人材育成・指導の分野に20年以上携わる。
著書に『自分の頭で考える読書』(日本実業出版社)、『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)、『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』『世界「失敗」製品図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。