ひらめきを生み出すカオスの法則 (T's BUSINESS DESIGN)
NetGalley専門図書館司書会員
この図書は現代社会にはらんだ危険をあらわすとともに、過去の事例をひいて混沌とした状況から生まれた数々の成功を紹介している。
私がこの図書に触れたきっかけは、仕事でもプライベートでも整然とした状況を目指したいと思っていたからだ。この図書は私の考えをより強固にするための反論のひとつだと考えたのである。
しかし、それは間違いであった。私の考えは一部揺らいでしまうくらい、この図書には説得力がある。
この図書はまた、個人的な事例にとどまらず、自分の意見に合致しないものを完膚なきまでに叩きのめしたり、同調する仲間うちだけで世界を完結してしまう現代社会に行き詰まりがあることを示してくれた。更にはすべてを自動化、AIに頼る風潮にも警鐘を鳴らしている。自分にないものを持つ人と出会い、混乱から新しいものを生み出していくこと。それこそが混沌とした存在たる人間の存在異議かもしれないと感じた一冊であった。
NetGalley一般レビュアー会員
キース・ジャレットが使いものにならないピアノで演奏した1975年の伝説のライブから「物語」は唐突に始まる。
本書は自己啓発書に分類されるのかもしれないが、個人の能力向上や成功のための手段を説くハウツー本ではない。世の中の常識がいかに不確かなものかを気付かせてくれる、いくつかの「物語」だ。
無名ながらも多くの研究成果や事業が生まれたMITの「ビルディング20」、キング牧師による名演説「I have adream」の舞台裏、搭乗者全員が死亡した2009年エアバス墜落の理由、ドナルド・トランプが大統領選で用いた戦略など、古今東西の実に様々なジャンルの引用事例が実に面白く読めた。また、日本語版の各章のタイトル、たとえば「整理整頓しない」「目標設定をやめる」「コンピューターに支配されない」などは気が利いていて、ニヤリとさせられる。
これらの物語を通じて、著者は読者に訴える。「私たち現代人は、必要以上の整然さを求めるあまり、適度な無秩序を受け入れることがもたらすメリットを取り逃がしているのではないか」と。現実社会は人間が考えているよりも複雑で、一見すると非合理的で混沌としたものがメリットをもたらすこともままあるのだ
クリアデスクの徹底されたオフィス環境とか、業務の目的とはかけ離れた数値目標(例えば休暇取得率)とか、スケジュール確認のための毎日の報告などに少なからぬ違和感を覚えている人にはぜひ一読をおすすめしたい。