台湾はなぜコロナ対策に成功したのか 『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』
NetGalley Japan


内容紹介
インタビュー時間20時間超!オードリー・タン氏自身が、自らの考え、行動、夢を語る!
世界のメディアがいま、最も注目するテクノロジー界の叡智が、描くデジタルとAI(人工知能)の未来!
台湾は、2020年に全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID-19)の封じ込めに唯一成功しました。
本書は、その中心的な役割を担った若きデジタル担当政務委員(閣僚)が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIと社会・イノベーション、そして日本へのメッセージを、自身の言葉で語りつくします。


NetGalley会員レビュー
台湾のデジタル担当政務委員であるオードリー・タンがリモートで20時間に渡って語り下ろしたものを、日本でまとめた書。自身の半生から台湾のDXの本質までわかりやすくまとめている好著。今年読んだ本の中でもトップクラスに刺激的な一冊(といっても読んだ時点ではまだ製本されていないデジタルゲラだったが)。
台湾のDXの本質は、ITによる社会の水平化と哲学の共有にある。日本のように縦社会ではなく、個人をITにより横串で連結していく。そして誰一人積み残すことなく哲学を共有し、理解し、実行する。このプロセスが事細かに語られている。そしてこのコロナ禍のマスクを例に具体を示す。
台湾DXプロセスのキーワードは、サステナブル、イノーベーショナル、インクルーシブだ。持続可能であり、充分に革新的で、全てを対象にする。それが可能になったのはITのおかげだという。
オードリー・タンがどうしてこのような考え方に至ったのか、その原点は自身の「Handicap」だ。この言葉は日本語に置き換えにくい。幼少より身体が弱く、左利きで、学歴は中学校中退、そしてトランスジェンダー。これらがポジディブな「Handicap」として働き、今のオードリー・タンはある。言葉のニュアンスとしては「Gifted」に近いかもしれない。
いろいろと考えさせられ、気付かされる一冊。すごくおすすめ。
著者は本書にて「私の仕事は非常に明確で、様々な異なる立場の人たちに対して、共通の価値を見つけるお手伝いをすることです」と述べている。
本書全編を通して、著者の主張が腑に落ちる、嫌みがないのは、全てこのさまざまな異なる立場の人たちを対象に物事を考えているからなのだろう。
本書を読むと日本の政治家にも読ませてやりたい!と思う一方、デジタル・AIの力を利用して何かしらの行動を起こすことにより自分でも日本を変えていけるのではないかと思わせてくれる力が本書にはある。
台湾では国会議員は内閣閣僚になれない。そのためその分野の専門家が各省庁の大臣に選ばれる。日本の議員内閣制と較べ一長一短であるようだが、少なくとも今回のコロナ対策に見せた台湾のスピーディなー対応は閣僚の専門性によるものだと思う。
しかし、台湾の内閣のすごさは他にもあるようだ。本書の著者(語り手?)オードリー・タンはトランスジェンダーであるとのこと。アメリカのバイデン大統領のもとでもトランスジェンダーの政府高官が初めて誕生する見込みだが、日本ではいつ、そうした多様性の象徴ともいえる閣僚が登場するのだろうか。
本書ではオードリー・タンの生い立ちと考え方が本人の口から語られている。またオードリーは本書で台湾と日本の共通点を語っている。そのためか、オードリーの考え方は日本でも受け入れやすいのではないかと思う。
オードリーの思想の根幹となっているのは、交換モデルXという考え方である。
物々交換、モノ・サービスと対価との交換。それに対して交換モデルXではサービスに対し対価を要求しない。台湾でも日本でも昔は普通に行われていたことである。
公益の利益を核として、資本主義にとらわれない新しい民主主義の可能性にオードリーは着目する。
台湾の鶏婆。母鶏のようにお節介でうるさい。自分に直接関係することではなくても、能動的に貢献したい。
ひとりで解決しようとするのではなく、共同で考えれば良いと考える。
共通の価値観にいかに集約していくことができるか。
そうして、社会の知恵がわたしの仕事をつくる。そのようにオードリーは語る。
本書で一番おもしろいと思ったのは「ピンクのマスク」のエピソードである。どんな話かは読んだときのお楽しみに。
彼がどのようにITに親しみ、幼少期を過ごし、そして現在何を考え行動しているか丁寧に語られる。
驚いたのは、用いられる言葉が平易で例えもわかりやすいということ。
物々しい肩書きがありつつも、一般ユーザー目線で話を聞き改善したという前職でのエピソードなど、まさにそれを体現していると感じた。
高校生や場合によっては中学生などにも勧めたい。
オードーリー・タンってどんな人だろう。何かITの人で、若いのに閣僚に選ばれたすごい人。
ただそれぐらいの知識しかありませんでした。ですが、すごく興味があった。
読んでみて思ったのは、想像以上にすごい人だったということ。
自分が持っているものを他人にも分け与えようと考えられるその思考が本当に素晴らしいし、政治家に一番大事なことなんじゃないかなと。
物を与えようとするのではなく、知識を分ける。もらった人がそれを活かして、暮らしやすくなるように。消費するようなもので与えようとしない、持続できるものでなんとかしようとする。その姿勢が素晴らしすぎて、この一冊でファンになりました。他の著書も絶対読みたいし、今後の活躍も本当に楽しみになりました。
本書を読むとデジタルが民主主義社会の持続のためにいかに機能できるのかが具体的に理解できる。
5Gは都市よりもへき地を優先、スマホが使えない人たちにはそれに変わる方法を提供、広い世代から声を拾って政策へのアイデアを実現できるようにする、などなど、取り残される人がいないように弱者や少数者の立場をこそ大切にしていく姿勢は深い哲学を感じさせる。
著者は台湾のデジタル担当政務委員という閣僚である。国民と政府の双方向の発信が、台湾の政治においてどんな成果をもたらしているのか、その事例を多く挙げている。本書には日本との違いも書かれているが、正直、こんなリーダーがいたらと羨望の思いである。
日本と台湾には同じ文化が流れていると著者はいう。しかしなぜこれほどにコロナ対策が成果を上げたのか、なぜ若者が政治に関心を持てるのか。その理由は政治に哲学があること、そして誤りを修正できるリーダーの柔軟性と国民との一体感にあるように思う。
出る釘が打たれるような風潮や野放図なネットいじめは本当の意味での政治が日本では機能していないからではないのかと寂しく思う。若い力と知恵が反映される民主主義国家だと胸を張れる国にするためにも、この本をいろんな人に読んでもらいたいと思う。


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