要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2019年8月号)

石渡翔

本を読むことを仕事にしていると、とりわけアウトプットの必要性を強く感じます。ずっとインプットだけだと、どこかの時点でお腹いっぱい(この場合は「頭いっぱい」?)になってしまい、それ以上の情報が受け付けられなくなってくる、そんな感覚です。

アウトプットのやり方は人それぞれだと思われますが、個人的には内容を咀嚼し、別の言葉/方法で表現すると、その知見が自分のものとしてストックされると感じております。皆様はいかがでしょうか。8月のイチオシをお届けいたします。

石渡翔
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繁栄のパラドクス
繁栄のパラドクス
クレイトン・M・クリステンセン,エフォサ・オジョモ,カレン・ディロン,依田光江(訳)
ハーパーコリンズ・ジャパン
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繁栄のパラドクス
繁栄のパラドクス
著者
クレイトン・M・クリステンセン エフォサ・オジョモ カレン・ディロン 依田光江(訳)
出版社
ハーパーコリンズ・ジャパン
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かの有名な「破壊的イノベーション」、そして最近では「ジョブ理論」の提唱者としても知られる、クリステンセン教授の最新作です。

戦後日本は、貧困に苦しみながらも劇的な復興を成し遂げましたが、クリステンセン教授はその要因として「日本がイノベーション大国だったこと」を挙げています。一度は焼け野原となった日本ですが、そこから数多のイノベーションが生まれたのは、皆さんもご存知のとおり。当時と比べて「いまの日本にはイノベーションがない!」なんて声もよく聞きますよね。

本書のユニークな点は、「イノベーションのかたちは3種類ある」としているところ。そのうち国家規模で大きな繁栄をもたらすのは「市場創造型イノベーション」だけであり、ここを見誤って別のイノベーションに注力すれば、膨大な浪費になりかねない――これがクリステンセン教授の見解です。

書籍の性質上、貧困に苦しむ“発展途上国”とされる国々が多く取り上げられていますが、現代の日本においても、貧困はけっして他人事ではありません。いまの日本でも「市場創造型イノベーション」は間違いなく求められており、それをどうやって実現していくかが、日本がふたたび繁栄するためのカギとなるはず。新たな未来を築くうえで、きわめて重要な一冊です。

松尾美里
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「アンコンシャス・バイアス」マネジメント
「アンコンシャス・バイアス」マネジメント
守屋智敬
かんき出版
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「アンコンシャス・バイアス」マネジメント
「アンコンシャス・バイアス」マネジメント
著者
守屋智敬
出版社
かんき出版
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「無意識の偏見、根拠のない思い込み」という意味をもつ「アンコンシャス・バイアス」。経営者・リーダー育成に20年以上携わってきた著者が、アンコンシャス・バイアスに気づき、対処する方法を解説してくれている。

「若い人はこう」「女性はこう」といった画一的ステレオタイプに陥ることはないから、私は大丈夫――そう思うかもしれない。けれども、よかれと思っての判断や言動の裏に、無意識の「思い込み」が潜んでいることもある。
「Aさんはお子さんが小さいから、出張が少ない部署に異動したほうがいいだろう」「Bさんは数年前の面談で現場の仕事が好きだといっていたから、管理職への昇進意欲は低いはずだ」。
だが実際はいかに?

著者はフライヤーでのインタビュー でこう語っておられた。「一人ひとり、その時々により、メンバーの考えも事情も違う」。
私たちは、脳の特性も手伝って、「あの人はこう」と一括りに捉えたくなってしまう。だが、見えているのは、その人の、現段階での一面にすぎない。「自分には見えていない面があるのではないか」。そう自問する内省タイムを、1日数分でいいから設けてみるだけで、バイアスに気づきやすくなるはずだ。

私自身、インタビューの仕事をするなかで、どうすれば自分の思い込みを認識できるか試行錯誤している。インタビュー対象者の言葉がどのような経験に根差したものか、仮説づくりの材料をできるだけ多く事前に集める必要がある。そのうえで、相手と向き合うときには、それらをいったん脇に置いておく。そうすれば、相手のことを、そのまま受け止めやすくなるのではないか。本書に書かれていた「アンコンシャス・バイアスへの対処法」は、まさにそんな理想に近づくための指針となってくれる。

読み進めながら思い出したのは、ナショナルジオグラフィック日本版の編集長、大塚茂夫さんの言葉だ。「地球への飽くなき探求心の対象には、人間自身の内側も含まれる」。現にナショナルジオグラフィックは、宇宙や自然環境といったテーマだけでなく、ジェンダー、依存症、天才、善と悪といったテーマにも迫っている。アンコンシャス・バイアスのように、人間の「内面」に目を向けようとする試みは、さまざまな領域で起きているのだと感じた。

また、「ティール組織」「心理的安全性」など、一人ひとりの可能性を最大限引き出す組織やチームづくりに関するキーワードが、この数年で一気に広がりつつある。一人ひとりの「内面」を理解しようとする探求心こそが、変化の起点になる。さらには人間の悩みの根源を知る糸口になるのではないか。そんな一筋の光を与えてくれる本書を、ぜひおすすめしたい。

庄子結
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アフターデジタル
アフターデジタル
藤井保文,尾原和啓
日経BP
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アフターデジタル
アフターデジタル
著者
藤井保文 尾原和啓
出版社
日経BP
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すこし前、初めて中国に行きました。
ガイドブックを見ると、やはり中国では急速にデジタル化が進んでいるといいます。避けて通れないのが支払い関連。モバイル決済が主流になっているけれど旅行者は登録できないうえ、VISAカードは使えない可能性が高いという情報も……。調べれば調べるほど不安が募ります。空港から出られなかったらどうしよう。

そんな私が「旅行前に読まなくて本当によかった」と思ったのが本書です。

本書では、オンラインとオフラインの主従関係が逆転する「アフターデジタル」の時代におけるビジネスの在り方をテーマに、中国での最新事例が紹介されます。店舗の3km圏内であれば30分以内に配送してもらえるスーパー「フーマー」、信用スコアを上げればドライバーの給料も上がる「ディディ」、そして1日に1回自社アプリを開かせる仕組みをつくった「平安保険グループ」などなど。いずれも私たちに驚きをもたらしますが、中国ではもはや常識になっているのでしょう。

本書が中国のリアルを伝えてくれる本だったからこそ、帰国後に読んでよかったと思います。出国前に読んでいたら、さらに怯えていたでしょうから。でも不思議なことに、「本書で読んだことを確かめるためにもう一度中国に行かなきゃ」と思っている自分もいたりします。

熊倉沙希子
編集部熊倉沙希子のイチオシ詳細
プリンセス・マーケティング
プリンセス・マーケティング
谷本理恵子
エムディエヌコーポレーション
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プリンセス・マーケティング
プリンセス・マーケティング
著者
谷本理恵子
出版社
エムディエヌコーポレーション
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プリンセス? なんのこと? と思う方もいらっしゃるかもしれません。こちらは、女性ならではの購買心理・行動の傾向を、あえて型にはめて解き明かそうとする一冊です。
読んでなるほど、ひとりの女性の消費者としては「そうそう! そうなんですよ!!」と納得するところが多々ありました。

表題の言葉は、女性が主人公となるストーリーの典型である「プリンセス・ストーリー」に由来しています。シンデレラが、自分は本来お城にいるべきなのにと嘆いているように、女性はつねに「今の自分は、仮の姿だ」と感じているというのです。そしていつでも、無意識的に「本来の自分に戻る」ことができる「魔法」を探している状態だといいます。

そのため、お店をぶらぶらしながら、今の生活や自分を一瞬で変えてくれそうな「魔法」のような商品に出会うと、女性は買わざるをえないのです。このような「衝動買い」は女性特有の買い物の仕方なのだと著者は解説します。
男性の場合、買い物はこのようには進みません。「ヒーロー・ストーリー」に共感する男性にとって買い物とは、「戦いに役立つ武器」を「仕入れる」感覚に近いので、事前に商品を比較検討して、最高のものを選んだ上でお店に行きます。そのため、女性の衝動買いは男性にとって不可解なのだそうです。

書き進めるうちに、なにやら衝動買いの言い訳のような文章になってしまいましたが、つまり著者のプリンセス・マーケティング論は、じつに「うまく説明してくれている」のです。
女性向けビジネスに携わる方に役立つ内容であるのはもちろんのこと、女性が自分の感覚を言葉にしてビジネスに活かすときにも、たくさんのヒントをくれる本だと思います。

井手琢人
プロモーションマネージャー井手琢人のイチオシ詳細
片づけ脳
片づけ脳
加藤俊徳
自由国民社
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片づけ脳
片づけ脳
著者
加藤俊徳
出版社
自由国民社
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片づけられない人が多い。
スマートフォンだなんだといって「スマート」押しな割に身の回りはスマートでない人が多いのだ。
かくいう私も今、片づけられない大量の本に囲まれながらこの原稿を書いているわけである。

とある記事を読んだら片づけられない人の多くは“プチ完璧主義”であるという。
部屋を片付けるのにあれもしなきゃこれもしなきゃと思考を巡らせているうちに、やっぱり今度にしようと後回しにしてしまうわけだ。
整理術の本も有効だが、こういうプチ完璧主義の人には本書『片づけ脳』の方がいいかもしれないと思った。

著者によると、片づけられないのは「脳」のせいで、自分の脳の弱い部分を脳トレにより鍛えることで、片づけられる自分に変わっていけるという。ここには、著者のベストセラー『脳の強化書』シリーズで提唱された、脳を8つの番地に分けた「脳番地」という考え方が応用されている。
片づけられない人には3パターンあり、それぞれ脳の弱い部分が影響しているという。
「やろうと思っても、なかなかスイッチが入らない」パターンの人は運動系・思考系・伝達系が弱い。
「途中までやったはいいが、なかなか進まない」パターンの人は視覚系・理解系・聴覚系が弱い。
「片づけたけれど、すぐ元に戻ってしまう」パターンの人は記憶系・感情系が弱い。

私は1番目のパターンだ。
それがわかればあとは簡単。本書に載っている脳トレを始めてみればよい。運動系「いつもより歩幅を広げてスタスタ歩く」、思考系「外食でメニューを選ぶ際には瞬時に決める」などからトライしていくわけだ。
机でウンウン唸っていないで、まず脳トレをしてしまえばそこにはいつの間にか変わった自分がいる。そこに「片づけ」も自ずと組み込まれているだろう。

プチ完璧主義ならば自分の脳も完璧に近づけよう。そう思えば始められるのではないだろうか?
かつて『脳の強化書』シリーズで読んだ運動系脳番地のトレーニング「利き手と反対の手で歯磨きをする」を実践し、口の中を血だらけにしたことを思い出した。片づけの観点からも私は運動系脳番地が弱いようなので、今夜もう一度利き手と反対の手で歯磨きにチャレンジしてみようと思う。

大賀康史
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雑草はなぜそこに生えているのか
雑草はなぜそこに生えているのか
稲垣栄洋
筑摩書房
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雑草はなぜそこに生えているのか
雑草はなぜそこに生えているのか
著者
稲垣栄洋
出版社
筑摩書房
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私の長男は今、小学6年生で塾に通っている。家でその勉強をサポートしていていたときに、ふと国語の問題に目が留まった。雑草に関する面白い話が書かれた本なのかと思ったら、どうやら人が生きていく上で大切な真理が書かれているようだ・・・。

生態学には「ガウゼの法則」と呼ばれる定めがある。どんなにえさが豊富な環境でも、同じえさを同じ環境下で必要とする生物種が複数存在すると、最も強い種だけが生き残る。ナンバー2では生き残れないという厳しい自然の摂理である。しかし、「ガウゼの法則」には続きがある。似た種だったとしても、えさや住む環境が少し違っていれば、共存することができるのだ。全ての生物はナンバー1になれるオンリー1の場所を持っている。それを生態学の言葉で「ニッチ」と呼ぶ。

さらに著者のメッセージは続く。人の世界では、得意なことでも好きになれないことがある。自分がどんなに好きなことでも絶対にかなわないライバルがいることもある。そんなときは生態学の「ニッチシフト」を応用したら良い。どちらかを少しずらせば、好きで得意なオンリー1が見つかるかもしれないという。

「雑草は踏まれても踏まれても立ち上がる」と言われているが、本当は立ち上がらない。踏まれた雑草は、その姿勢のまましぶとく花を咲かせて種子を残していく。つらい試練を受け入れて、それでも目的を果たすことに雑草の本当の強さがある。

偉大な業績を残した人からの教えだと、その人だからできるのではと思って、素直に聞けないこともある。ただ、ここでの先生は雑草だ。雑草にできるのだったら、自分にもできると思えそうだ。現実は制約ばかりの世の中だが、そんな悩める現代人の背中を押してくれる一冊である。

公開日:2019/08/01
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