要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2019年11月号)

石渡 翔

11月1日ということで、「本の日」ですね! なかなか日々の生活に読書の時間を入れづらい……という方も、スキマ時間をうまく使っていくと、意外と1冊読めてしまうものです。ということで11月の編集部イチオシをご紹介いたします。

熊倉沙希子
編集部熊倉沙希子のイチオシ詳細
読みたいことを、書けばいい。
読みたいことを、書けばいい。
田中泰延
ダイヤモンド社
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読みたいことを、書けばいい。
読みたいことを、書けばいい。
著者
田中泰延
出版社
ダイヤモンド社
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本書の複雑な魅力に、やられました。
タイトルからすると、自分の書きたいことを書けばいいんだ。かんたん! と思われるかもしれません。しかし著者が言いたいことはそうではないようです。
自分が読みたいことが世の中にないから書く。それが書くことの出発点であって、他の人がすでに言っていることは書く必要がない。こういうことのようです。

文章は読みやすく、著者のコピーライター、CMプランナーとしての長年のキャリアを感じさせられます。次々に強烈な皮肉やギャグや、一見無駄話のような挿話が繰り出され(自己PRに「トラック運転手」とひとこと書かれた自身の就活時のESや、謎のつくり話「無人島の大発見」などのインパクトたるや!)、読者は爆笑を禁じえません。しかし、そうしたユーモアの奔流で惑わしながらも、著者は、そっと骨太で真摯なメッセージを置くのです。

著者が自分にしか書けない方法でこの本を書いていることは確かで、それは本書のタイトルとまさに重なりあい、胸打たれます。
実用書の顔をしていながら、ノウハウ本では決してなく、むしろアヴァンギャルドな文学作品のような……この一冊、ぜひとも味わっていただきたいです。

松尾美里
編集部松尾美里のイチオシ詳細
ザッソウ 結果を出すチームの習慣
ザッソウ 結果を出すチームの習慣
倉貫義人
日本能率協会マネジメントセンター
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ザッソウ 結果を出すチームの習慣
ザッソウ 結果を出すチームの習慣
著者
倉貫義人
出版社
日本能率協会マネジメントセンター
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「いいチームをつくり、継続させるために必要なものは何なのか?」
ラグビー日本代表のチーム力をとりあげるメディアにふれるなかで、この問いについて考えることが増えている。そんなときに出会った本書のテーマは、「ザッソウ(雑談+相談)」。ページをめくると、互いの強みを活かしつつ結果を出すチームづくりに必要なマインドセットや方法が、ギッシリ詰まっていた。

著者はソニックガーデンで代表を務める倉貫義人さん。全社員リモートワーク、納品のない受託開発、管理のない会社経営など、新しいビジネスモデルや働き方のコンセプトを次々に打ち出し、実践し続けている方である。

職場のコミュニケーションでザッソウが広まると、どんな世界が広がるのだろうか? ザッソウの機会が増えると、お互いの価値観や強み、弱みなどがわかっていく。すると相互理解が深まって、心理的安全性が確保されていく。さらには、率直に意見を言い合えることで成果が出やすくなり、新しいアイデアが生まれる――。この循環ができると、本当の意味での生産性が上がるし、働く人の幸福度も高まるのでは、とワクワクした。そしてそれがチーム力のベースになるのではないだろうか。

特に共感した内容は、「壁打ち役がいれば、『悩む』が 『考える』になる」という点だ。個人の経験として、一人でうんうんと唸っていると、同じところで思考が行ったり来たりして、前に進んでいない状況が多々ある。また、思いつくソリューションが「ワンパターンだな……」と感じることもしばしば。

けれども、同僚に話を聞いてもらい、質問してもらうと、思考が整理され心がスッキリしていく。そして、意外な一言から解決策が出てくる……。こんなふうに、ザッソウを快く受け入れてくれる壁打ち役に何度も助けられてきた。こうした効果を高めるうえでも、ザッソウは重要なツールだと気づいた。

フライヤーでの著者インタビューでは、倉貫さんが、1on1などの場でよい壁打ち役になるための秘訣も語ってくださっている。ザッソウは心理的安全性を高めるだけでなく、「人が育つ機会」にもなるということに、ザッソウのもつ可能性の広がりを感じずにはいられない。

チーム力を高めたいすべての方におすすめしたい一冊だ。

石渡翔
編集部石渡翔のイチオシ詳細
測りすぎ
測りすぎ
ジェリー・Z・ミュラー,松本裕(訳)
みすず書房
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測りすぎ
測りすぎ
著者
ジェリー・Z・ミュラー 松本裕(訳)
出版社
みすず書房
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私たちはおそらく、人類史上もっとも「数字」を要求される時代に生きています。

計測可能なものは、改善することができる――その信念のもと、あらゆる領域で数値評価が行われています。営利企業ではもちろんのこと、公教育や医療の現場においても、数字を求められることが少なくありません。

しかし「過ぎたるは猶及ばざるが如し」。一見すると有益に思える数値指標も、適切に適用・運用しなければ、むしろ害悪となってしまう。そもそも数値指標は、目標を達成するための手段にすぎないはず。ですがいつの間にか手段と目標が入れ替わり、数字を良く見せることばかりに気を取られる……昨今のデータ改ざん問題の根幹にも、こうした負のマインドセットが見て取れるのではないでしょうか。

本書がすぐれているのは、どういうときに数値評価がうまくいき、どういうときにうまくいかないのかを、明確に記述している点です。一読するだけでも、思った以上に数値評価が機能しないことに気づくでしょう。あらゆる事象は複雑で、簡単な数字で表せることは、驚くほどに少ないのです。

何が本当の目標なのか、そしてなぜそれを目標にしているのか。こうした問いを、常に持ち続ける必要があります。Whyを手放したとき、人はHowに飲み込まれてしまうのですから。

井手琢人
プロモーションマネージャー井手琢人のイチオシ詳細
言葉は凝縮するほど、強くなる
言葉は凝縮するほど、強くなる
古舘伊知郎
ワニブックス
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言葉は凝縮するほど、強くなる
言葉は凝縮するほど、強くなる
著者
古舘伊知郎
出版社
ワニブックス
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古舘伊知郎さんが昔から好きである。
現場の盛り上がりとともに堰を切ったかのように湯水のごとく流れ出るワード。そしてそのワードセンスが抜群で独特。画面に古館節が乗ることでさらに臨場感とエンタテインメント性が加わり、大きな感動と興奮を呼ぶ。
テレビを観ているのに自分もその現場にいるような、古館さんの喋りにはそんなパワーがある。

そんな古館さんの出された本のタイトルを見て驚いた。
『言葉は凝縮するほど、強くなる』
ノンストップで喋り続けてきた古館さんが今は言葉を“凝縮”しているというのだ。
あれだけの個性を得た存在でありながら、時代に合わせて喋りのスタイルを変えているのだという。

Twitterは最大140文字。連絡にメールを使う人は減り、LINEで簡単に済ませる時代。とにかく少ない文字数で伝える時代だ。
ライターのはしくれである自分としてはここまで短い文字数で、というとなかなか厳しいものがある。
しかし、その制約の中で戦うことを放棄してはもう時代についていけないこともわかっている。

そこで生きてくるのが古館さんの言う“凝縮ワード”である。v40年以上喋り続けてきた古館さんだからこそ、キラーワードのストックがたくさんある。長く喋らなくとも、その中から凝縮したワードを選んで使っていけば今の時代にも合わせられるというわけだ。
このテクニックを古館さん以上に説得力を持たせて語れる人はいるだろうか。

そう言いながらこのレビューも長くなってきているのでそろそろ終わりにしたいと思うが、あと一つだけ言いたいことがある。
実は世のネット媒体の中には文字数の規定が存在するものもある。「短すぎてはダメです。何文字ぐらいは書いてください」という規定である。一般的には短さがトレンドの中、長さを担保しているネット媒体。ライティングの現場においても、今まさに過渡期だなぁと思わされる。時代と付き合いながら日々“凝縮ワード”を増やしておこうと思う。

庄子結
編集部庄子結のイチオシ詳細
物語は人生を救うのか
物語は人生を救うのか
千野帽子
筑摩書房
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物語は人生を救うのか
物語は人生を救うのか
著者
千野帽子
出版社
筑摩書房
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ストーリーを持たずに生きている人はいません。あなたが今・ここに存在している背景には、さまざまに見せ方を変える、魅力的なストーリーが存在しているはずです。

また同様に、ストーリーを消費することなく生きている人もいないでしょう。SNSなどで誰かの日常をのぞき見ることも、一種のストーリーの消費だといえます。

しかも本書によると、「人間は不可避的にストーリーを合成してしまう(P14)」そう。私たちは自分の人生をひとつのストーリーとしてとらえて、今立たされている状況の原因・理由を探したり、人生の意味・目的を問うてみたりしながら、物事に意味づけせずにはいられないのです。(あの逡巡も苦悩も、ストーリーの合成だったなんて!)

一冊を通して「ストーリー」を考えていく本書ですが、次の一節は特にしみじみと印象に残りました。

「世界には素敵な光景や音がいくらでもあるのに、僕らはなぜそのことを忘れてしまうのでしょうか?」「自分や他人の人生を『ライフストーリー』に還元してしまい、さらにそれを『要約』したり、そこから『教訓』を取り出したりして、『自分の人生は××な人生だった』『あの人の人生は××な人生だった』なんてまとめてしまうとき、僕らはどれだけのものを『なかったこと』にしてしまうのでしょう?」(P128)

自分の人生というストーリーから、目を離すまい。これからどんなことが起きて、自分は何を思うのか、そのすべてを目撃し、楽しみ尽くしてやろうじゃないか――そう感じずにはいられない一節でした。

公開日:2019/11/01
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