要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2020年10月号)

石渡翔

大きな変化に直面した1年だからか、人生の根本的なあり方に言及したり、世界の見方をガラリと変えたりするような書籍が、例年以上に注目を集めている気がします。皆様の人生を豊かにする書籍を一冊でも多く皆様にご紹介できるよう、編集部一同今後も努めてまいります……! ということで、2020年10月の編集部のイチオシをお届けいたします。

庄子結
編集部庄子結のイチオシ詳細
夢をかなえるゾウ4
夢をかなえるゾウ4
水野敬也
文響社
本の購入はこちら
夢をかなえるゾウ4
夢をかなえるゾウ4
著者
水野敬也
出版社
文響社
本の購入はこちら

「そんな日常が当たり前のように続くと思っていた」――ドラマや小説でよく耳にするセリフですよね。ここで舞台は暗転し、主人公は絶望の淵に突き落とされます。

本書も、そんな場面からスタートします。妻と幼い娘とともに暮らす、働き盛りの主人公。仕事は大変だけれど、家族を幸せにするために頑張ろう。そう自分を奮い立たせているところに、突然、余命宣告を受けるのです。

さまざまな感情が入り交じるなか、主人公はゾウの神様、ガネーシャと出会います。神様といっても、主人公の寿命を延ばすことはできません。残りの人生を充実させるためのアドバイスを与えるのが、この神様の役割です。

ガネーシャのアドバイスに従って、主人公はあらゆることに挑戦します。あるときは就寝前のストレッチに精を出し、またあるときは妻子と旅行へ。そうするうちに、主人公の「余生」は輝きはじめます。

もう思い残すことはない。しみじみ幸せを噛みしめる主人公が、妻にこれまでの感謝を伝えていると、思いがけない出来事によって再び舞台は暗転します。

もしかすると、今日があなたの「その日」かもしれません。だとしたら、自分はどんなふうに過ごしたいだろう。その過ごし方は、今日や今週末にはできないことなのか。時にガネーシャのギャグに笑いながら、主人公の気持ちをリアルに追体験し、自分の人生について考えさせてくれる一冊でした。

石渡翔
編集部石渡翔のイチオシ詳細
現代経済学の直観的方法
現代経済学の直観的方法
長沼伸一郎
講談社
本の購入はこちら
現代経済学の直観的方法
現代経済学の直観的方法
著者
長沼伸一郎
出版社
講談社
本の購入はこちら

今年読んだ本のなかで、いまのところ個人的ベストです。経済学が門外漢の人間にとって、これほどまでにわかりやすく、知的興奮にあふれた書籍はなかなかないのでは? 著者のバックグラウンドが応用物理学だからなのか、大局的に「現代経済」というものを捉えており、切れの良い言葉づかいも相まって、かなりの長文なのにまったく読み疲れしません。

「インフレやデフレはどのように起こるのか」「ビットコインとはどういうものなのか」といった疑問に対する解答から、「なぜほとんどの国は資本主義社会なのか(素朴な農耕社会や工業社会はなぜうまくいかないのか?)」のような社会構造に関する分析まで、経済についての理解をグッと深めてくれる内容になっています。

さらに野心的なことに、これから経済学が歩むべき道筋についても、本書は踏み込んで解説しています。キーワードは「縮退」。この発想は、応用物理学がベースにあるからこそ出てくるのではないかと思いましたが、いかがでしょう。

「現代経済」という永遠のラットレースからは逃れられないのか、あるいはその他の道があるのか――。これからの生き方について考えさせられる、じつに骨太な一冊です。

石田翼
編集部石田翼のイチオシ詳細
街場の親子論
街場の親子論
内田樹,内田るん
中央公論新社
本の購入はこちら
街場の親子論
街場の親子論
著者
内田樹 内田るん
出版社
中央公論新社
本の購入はこちら

喧嘩するほど仲がいい。なぜなら、もともと仲がいいからだ。

こと親子関係においては、些細な喧嘩の火種があらぬ断絶へとつながりかねない。衆目は、ことあるごとに壮絶な「親子喧嘩」に集まる。小説やドラマ、映画の舞台となる家族は、大体ギクシャクしている。世の中には、「喧嘩するほど仲がいい」などとは口が裂けても言えないような事例があふれている。

親子はもっとも身近な他人だ。しかし、お互いについてよく知っていることが、なぜか前提にされる。同じように物事を考え、「Aだよね」と言えば「そうだね」と返すのが当然。違ったことを口にすれば、「反抗的だ」と思われる。他人であるのに同じであることを求められる、まことに複雑な関係が親子なのだ。

この『街場の親子論』で手紙を交換し合っている内田樹、内田るん親子は、この「他人さ」からむしろ出発している。親子という「特別さ」以前に、別々の人間であることのある種の「神秘さ」を受け入れている。

本の中では、その人間同士の「ズレ」がいくつも展開される。

親子で同じ経験を共有しているはずなのに、それについて覚えていることは、2人の間でまったく違っている。

ある出来事にかんして、一方はすごく悪いことをしたと反省していても、相手はそれとは異なることに悩んでいた。

家族のあいだであっても秘密があるのは当たり前であり、なんでもお互いに知っている必要はない。父と娘がいれば、むしろ2人分の世界が広がっていることのほうが普通なのだ。だから「ズレ」がある。であるからこそ、人として向き合い、対話できる。

幼いころに、子どもの側からこの距離感をつかむのは難しい。そんな子どもがいたら、むしろ将来を心配してしまうかもしれない。

しかしそれは、親の側でも同じである。親の場合は、自分の子がいくつになっても感覚が変わらないこともあるのだから、罪深い。

親子に生じる上下関係について、「言うことをきかないと愛さない」という態度があると、るんさんは表現する。るんさんは、あっけらかんとした言葉で本質をズバリ射ぬく天才だ。

愛が担保にされて、恐怖で結びつく関係は苦しみでしかない。「親子は近すぎるとよくない」と樹さんは書いているが、親子という物理的な近さがあるからこそ、よりその距離感には繊細にならなくてはいけないのかもしれない。

親子は、近くて遠い、遠くて近い他人なのだ。

とはいえ、親子関係には、どこまでいっても親子という側面もある。そこには、血のつながりではなく、同じ経験と時間を長く共有している2人の「他人」の、実に豊かな物語が広がっているのだ。

「ズレている」ことが当たり前だと思っている父娘2人だから、その距離感と話題の展開はどこまでいっても心地よい。何度も読み返したくなる往復書簡である。

最後まで読み終えると、これは親子の話に留まらない、ということにも気づく。

考え方が合わない人とでも、「ズレ」を楽しめる隣人同士になれるかもしれない。そう思わせてくれる。

池田友美
編集部池田友美のイチオシ詳細
個人力
個人力
澤円
プレジデント社
本の購入はこちら
個人力
個人力
著者
澤円
出版社
プレジデント社
本の購入はこちら

去年の今頃、今の日本でこんなにリモートワークが盛んになっているなんて、誰が予想できたでしょうか。1ヶ月後は、1年後は——。そう考えていくと、未来の不透明さを思い知らされます。

『個人力』は、「ニューノーマル」の働き方について不安と混乱が広がるなか、新しい働き方のガイドラインを作るべく執筆された本です。「究極の自己中戦略」と銘打たれた本書は、これだけ見ると「他人を気にせず自分勝手に生きよう」と主張しているように思えるかもしれません。しかし、実際は組織の中にありながらも「ありたい自分」を大切にしながら、「個」として人と協働することの大切さを説いています。

先行きがわからないからこそ、自分の外側にあるものではなく、自分という基準を持つ。「ありたい自分」には徹底的にわがままになっていい。そのうえで、人とうまくやっていこう。やさしい言葉でしっかりと私たちの背中を押してくれる本書は、今だからこそ読んでいただきたい一冊です。

松尾美里
編集部松尾美里のイチオシ詳細
マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる
マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる
荻野淳也
かんき出版
本の購入はこちら
マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる
マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる
著者
荻野淳也
出版社
かんき出版
本の購入はこちら

「なんだか最近、心がざわつくんだよね」

テレワークが広がりつつある昨今、友人からこんな言葉を聞いた。オンライン会議にもslackなどのチャットでの会話にも慣れつつある。ニューノーマルの働き方によって大きな支障は出ていない。なのに、何となくモヤモヤがあり、それに蓋をしているという。そしてそれは私自身にも当てはまることだった。

このモヤモヤを解消する糸口はないだろうか? そう考えていたときに出合ったのが、『マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる』だ。

マインドフルネスを通じた人材開発の第一人者である著者によると、マインドフルネスとは、「いま、ここ」に集中している状態だという。マインドフルネスの実践によって、EI(感情知性)が高まり、仕事のパフォーマンスや心身の健康も向上していく。それを組織の習慣にするにはどうしたらいいか? その道筋が体系的に紹介されているのが本書だ。

マインドフルネスは、自身や周囲の状況を「あるがまま」に観察して、気づきの力を発揮し続ける技術でもある。自己認識力(セルフ・アウェアネス)が向上していくと、自分の内部で起こっている批判・評価に気づき、共感が生まれやすくなるという。

もちろん、気づきの解像度を上げるだけでは、世にあふれる情報に動揺し、かえって心が擦り減ってしまうこともあるだろう。現在、敏感で感受性が強い性質、「HSP(Highly Sensitive Person)」という概念が、「繊細さん」という言葉とともに広がりつつある。あくまで1つの見方だが、評価や判断を差し挟まない気づきというのは難しく、心が疲れてしまう面もあるように思える。

この本をきっかけに、さらにマインドフルネスについて学ぶうちに、「自己認識力(セルフ・アウェアネス)とともに、自分を慈しむ心(セルフ・コンパッション)も大事」というメッセージに出合った。セルフ・コンパッションとは、友人に思いやりを向けるのと同じように、自分に対し思いやりや慈しみを抱くことである。セルフ・アウェアネスとセルフ・コンパッションの両方を高めることで、自分の中の多様な面にOKを出せるのではないだろうか。

心穏やかでない自分に「気づく」、そして「慈しむ」。一筋縄ではいかないかもしれないが、本書のマインドフルネス瞑想やジャーナリング、マインドフル・リスニングといった手法によって可能になる気がした。そんな希望を与えてくれた本書を、冒頭の言葉をシェアしてくれた友人に贈りたいと思う。

公開日:2020/10/01
このイチオシを友達にオススメする

今週の要約ランキング

1
人生を変えるモーニングメソッド
人生を変えるモーニングメソッド
ハル・エルロッド 鹿田昌美(訳)
未 読
リンク
2
2025年を制覇する破壊的企業
2025年を制覇する破壊的企業
山本康正
未 読
リンク
3
アンガーマネジメント
アンガーマネジメント
戸田久実
未 読
リンク

おすすめ要約診断

イチオシの本

未来屋書店“フライヤー棚”で売れた今月のベスト3(2020年12月~2021年1月)
未来屋書店“フライヤー棚”で売れた今月のベスト3(2020年12月~2021年1月)
2021.01.26 update
リンク
だれかの「好き」をつくるためのビジネスモデルの3冊
【〈連載〉大人の教養シリーズ 第4回】 だれかの「好き」をつくるためのビジネスモデルの3冊
2021.01.26 update
リンク
出版社のイチオシ#044
出版社のイチオシ#044
2021.01.22 update
リンク
ただのバカで終わらないための3冊!
【要約の達人が選ぶ、今月の編集部イチオシ!】 ただのバカで終わらないための3冊!
2021.01.19 update
リンク

インタビュー

1本1万円のネギに込めた「初代葱師」の挑戦
1本1万円のネギに込めた「初代葱師」の挑戦
2021.01.12 update
リンク
なぜ、世界最高峰の大学MITは「音楽」を重視するのか?
なぜ、世界最高峰の大学MITは「音楽」を重視するのか?
2020.12.28 update
リンク
共感を呼ぶことばはいかにして生まれるのか
【これからの本屋さん】 共感を呼ぶことばはいかにして生まれるのか
2020.12.21 update
リンク
なぜいま、「対話型マネジャー」が求められるのか?
なぜいま、「対話型マネジャー」が求められるのか?
2020.12.16 update
リンク
1
人生を変えるモーニングメソッド
人生を変えるモーニングメソッド
ハル・エルロッド 鹿田昌美(訳)
未 読
リンク
2
2025年を制覇する破壊的企業
2025年を制覇する破壊的企業
山本康正
未 読
リンク
3
アンガーマネジメント
アンガーマネジメント
戸田久実
未 読
リンク
2020年にflierで読まれた要約ベスト7
2020年にflierで読まれた要約ベスト7
2021.01.27 update
リンク
要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2020年8月号)
要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ! (2020年8月号)
2020.08.01 update
リンク
共感を呼ぶことばはいかにして生まれるのか
共感を呼ぶことばはいかにして生まれるのか
2020.12.21 update
リンク
新機能「学びメモ」誕生!
要約での「学び」や「気づき」をシェア! アウトプットの習慣づけに役立ちます。
みんなのメモが見れる!
新しい視点で学びがさらに深く!
「なるほど」「クリップ」ができる!
みんなの学びメモにリアクションしたり、保存したりできます。
ガイドライン
「学びメモ」をみなさんに気持ちよくご利用いただくために、ガイドラインを策定しました。ご確認ください。
「学びメモ」には自分自身の学び・気づきを記録してください。
要約や書籍の内容を読まずに「学びメモ」を利用することはご遠慮ください。
要約や書籍に対しての批評や評点をつける行為はご遠慮ください。
全文を見る
新しい読書体験を
お楽しみください!
ご利用には学びメモに記載されるユーザー名などの設定が必要です。
ユーザー名・ID登録(1/3)
ユーザー名 ※フライヤーでの表示名
ユーザーID
※他のユーザーが検索するために利用するIDです。
アカウントの公開や検索設定は次の画面で設定できます。ご安心ください。
後で登録する
ユーザー名・ID登録(2/3)
アカウント公開
すべてのユーザーにマイページを公開しますか?
はい 許可した人だけ
マイページを全体に公開したくない方は「許可した人だけ」を選択して、次ページにお進みください。

※登録内容の編集画面からいつでも変更できます
ユーザー名・ID登録(3/3)
検索設定
ID検索を有効にしますか?
はい いいえ
友達と繋がるには、ID検索を有効にしてください。マイページを全く公開したくない方は「いいえ」を選択してください。

※登録内容の編集画面からいつでも変更できます
登録完了しました!
まずは他のユーザーをフォローして学びメモをチェックしてみよう!
flierの利用に戻る