【本からのぞくグローバル・トレンド】
海外に学ぶ「女性活躍」
“What Works”/『仕事と家庭は両立できない?』/『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』/『バッド・フェミニスト』

熊倉 沙希子

政府によって「女性活躍」が叫ばれているものの、みなさんは、社会の変化を実感できているだろうか。

国際労働機関(ILO)の調査によると、日本の女性管理職比率は11.1%であり、108か国中96位という不名誉な結果である(Women in Business and Management: Gaining momentum, 2015年)。また、世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」(2017年)では、日本の順位は144か国中114位だ。

国際社会において、明らかに日本が大きく後れをとっている分野が、女性の社会参画なのである。これは、経済発展という面で大きなマイナスである。そして、もっと身近にひきつけて考えてみれば、現状の日本は、周りの大事な女性たちが活躍できる機会が非常に少ない社会であるということも意味する。

今回は、わたしたちにできる具体的なアクションや、知っておきたいことを示してくれる、4冊の海外書籍を紹介したい。

行動経済学を活かして制度設計する

What Works: Gender Equality by Design
What Works: Gender Equality by Design
著者
Iris Bohnet
出版社
Belknap Press: An Imprint of Harvard University Press
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行動経済学は、昨年その分野の泰斗、リチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞したことでも改めて注目を浴びている。人間は常に合理的な意思決定をするわけでなく、無意識の偏見や固定観念にとらわれて選択をしてしまう……ということを経済モデルに組み込んだアプローチが、行動経済学だ。「ナッジ(誘導)」という理論においては、ちょっとした注意を促すことで、人々を合理的な選択へ導く。本書は、そうした考え方を応用し、社会のジェンダー格差を人々の「行動設計」で減らそうという野心的な一冊である。

たとえば、1970年代後半、ボストン交響楽団のオーディション合格者のうち、女性はたったの5%だったという。しかし、オーディションの方法として、ついたてを立てて受験者を見えなくしたところ、現在では女性団員は楽団の35%以上を占めるようになったという。

本書では、このような数々の事例と研究成果を紹介しつつ、職場などの環境で有効な、実践的な方法を述べている。ジェンダー格差の実態を把握するためのデータ活用の仕方、性別や人種の偏見にとらわれないで真に能力のある人を採用するための面接の方法や募集のかけ方など、日本企業にとって参考になるところは非常に多い。

なお本書は邦題『WORK DESIGN:行動経済学でジェンダー格差を克服する』( イリス・ボネット著、池村千秋訳、 大竹文雄解説)として、6月28日にNTT出版より刊行。

「人の世話(ケア)」にもっと価値をおくべき

仕事と家庭は両立できない?
仕事と家庭は両立できない?
著者
アン=マリー・スローター 関美和(訳)
出版社
NTT出版

先述の2015年のILOの調査によると、アメリカにおける女性管理職の比率は42.7%で、調査対象の国の中では15位につけている。日本よりはだいぶ進んだ状況に思えるが、しかしそれでもというべきか、それだからというべきか、仕事と家庭の両立の壁に阻まれる女性たちの悩みは深い。

著者は、オバマ政権のヒラリー・クリントン国務長官のもとで、女性初の政策企画本部長になった人物だ。しかし、問題行動を起こすようになった息子との時間を優先するために、2年で職を辞し、地元の大学の教授職に戻った。

著者はそもそも、仕事と家庭の両立が女性の肩のみに背負わされている現状に疑問を投げかける。仕事と家庭の問題は、「女性の」問題でなく、「育児や介護」の問題、つまり人の世話(ケア)に価値が置かれていないことの問題なのではないか。働く親たちが幸せになれるような、職場や社会をつくるための行動や政策が提案されている。

明るくさわやかな現代のフェミニズム

男も女もみんなフェミニストでなきゃ
男も女もみんなフェミニストでなきゃ
著者
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
出版社
河出書房新社
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男女平等ということをずっと追求してきたのが、フェミニズムという思想だ。難しく感じるかもしれないが、女性活躍というテーマを考えるときに必ず参考になる考え方である。

本書は、驚異的な再生回数を記録した、2012年のナイジェリア出身の作家によるTEDスピーチがもとになっている。世界27か国で訳出され、スウェーデンでは16歳の子ども全員に配布されたという本書は、現代のフェミニズムの流れをつくる一冊として各所で絶賛されている。

著者が一貫して語るのは、ジェンダーの規定を外すのは、個々人が本当の自分を手に入れて幸せになるために大切だということだ。そのためには、ジェンダーの問題に気づき、改善していかねばならない。そして、そう思う人は「男も女もみんなフェミニスト」なのだという。

自分たちの息子や娘を育てるとき、ジェンダーよりもその子の「能力や才能」、「興味や関心」に焦点を合わせよう。今よりもっと幸せになる男性たちと女性たちの世界をつくろう。著者は「みんな」に呼びかける。

ジェンダーの問題への「気づき」を深める

バッド・フェミニスト
バッド・フェミニスト
著者
ロクサーヌ・ゲイ 野中モモ(訳)
出版社
亜紀書房

「フェミニスト」には、残念ながら、権利獲得を叫ぶ怖い女性たち、というイメージもつきまとう。けれど本書は表題どおり、これまでの「フェミニスト」という言葉にしばられない、もっと柔軟な在り方を示している。著者は、男嫌いというわけではない(むしろ大好きだ)し、「女性らしい」ピンク色もハイヒールも大好き。けれど、制度上の性差別や、賃金の不平等、女性への暴力をはじめとし、女性を不利な立場に置く現実には猛烈に抗議する。だから著者は、「バッド」なフェミニストなのかもしれないが、でもフェミニストでないよりは、バッドでもフェミニストでいたいのである。

本書は、テレビドラマや音楽、スターのカミングアウトやノルウェーの自爆テロについてなど、現代のさまざまな話題を扱いながら、そこに潜むジェンダーや人種の問題を明らかにする。鋭いユーモアあふれる語り口を楽しみながら読み進むうち、今ある問題に「気づく」ことができるだろう。

先に紹介した“What Works”でも、「まずはデータをとって現状を正確に把握する」重要性が述べられている。まず「気づく」ことこそが、出発点となるのだ。

公開日:2018/05/10
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