人はなぜ自分を紹介するとき「あ、~です」と言うのか。『不明解日本語辞典』
【ほんをうえるプロジェクト】

ほんをうえるプロジェクト
不明解日本語辞典
不明解日本語辞典
著者
高橋秀実/著
出版社
新潮社
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日本語の表現には、よくよく考えてみると不思議なものが沢山ある。

自分を紹介するとき「あ、~です」といったり、なにかを考えながら話すときに「えー、……」と言ったりする。ただ、なぜそれが「あ」であり「え」であるのか、特に考えずに自然と私たちは使っている。でもそこには確実に共通した認識があり、もし「あ」を「い」や「う」に変えて表現すると全く違った表現になることからも分かるように、ちゃんと意味が存在している。この本ではそうした不明解な日本語を32語集めて説明を試みている。

さきほどの「あ」は文法上、感動詞と呼ばれる部類に入っていて「驚いたり感動したりしたときに発する語」と辞書では定義される。だが、とくに驚いても感動してもいない場合にも、「あ、……」と何気なく使っていることはよくある。これは、古くからわたしたちの先祖が、互いに呼んだり呼ばれたりした際に自然に「お」や「あ」と発していたものが、次第に代名詞にとしての意味を持つようになったことが由来となっているのではないか、と考えられている。たとえば「お」であれば、そこから「おのれ」や「おれ」、「おら」など「自分」を示す言葉に派生していった。一方「あ」は、「お」と同じ自分を示す「吾(あ)」が生まれたのに加えて、2人称・3人称を含む「あれ」という言葉にも派生した。

つまり「あ」には、私という一人称の意味が含まれていながら、どうじに「あれ」が持つ2・3人称の雰囲気も持っており、それ故にどこか他人事のように「あ、~です」は感じられる、ということなのである。

私たちはその語源を理解してはいないものの、そこに含まれるニュアンスを理解して、「私は~です」だとちょっと固いかなぁと迷ったときに「あ、~です」と紹介したりするのである。

この本では「あ」以外にも、全部で32語の(「あ」を含む)摩訶不思議な日本語が著者のユーモラスな視点の調査力で深く掘り下げられおり、どれも興味深くて普段なじみのある言葉ばかりが取り上げられている。普段何気なく使っているこうした表現を探求していくことで、それぞれの言葉が成り立つまでに受け継いできた歴史を知ることが出来る本書は、日本語の奥深さについて楽しく理解できる1冊になっている。またこれらの言葉について意味を深く理解していなくても、表現を当たり前のように使いこなして、不自由なくコミュニケーションが出来ているという、日常という実はとても摩訶不思議なものを改めて実感できる作品でもある。

ほんをうえるプロジェクト 川井佑太

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公開日:2018/07/13
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