日本でも、すでに始まっている 『小売再生』
【ほんをうえるプロジェクト】



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来週、名古屋まで行くことになった。子供たちが、そこにしかないものを「体験してみたい」と言い出したからだ。お目当ては、レゴランドである。いわく「レゴランドホテルで暮らしたい」ほどご執心だ。なぜか。Youtubeで目撃したからである。
おっと。私の子育てについて、ツッコミが入りそうだ。でもそれは、ここでは置いておこう。ネットに席巻される世の中で、わが家は「リアルでの体験」を求めてレジャーに行く。ネットで見てリアルで消費する、オンラインtoオフラインである。
家族でデパートにいき、商品を手にとって買うことは、私の子供の頃大きなレジャーの一つだった。しかし、商品はコモディティ化し「より手軽に安く買いたい」というニーズを満たす、ネット企業に人々の関心が集まるようになった。
本書によると、アメリカの大手小売企業は、従来の経営指標にとらわれず投資を続けるAmazonの手法をみて、「いずれ破綻する」とタカをくくっていたところがあるようだ。しかし、現実は逆に進んだ。破綻したのは、自分たちだったのである。
今、そのAmazonがリアル店舗を持ち始めている。目的は明かされていないが、ミニ流通ハブとして、kindle等の機器を手にとれる場所として、リアルのブランディング拠点として、メリットは計り知れないと著者は指摘する。
店舗には、計り知れない価値があるのだ。
著者は本書で「リアル店舗はメディアになる」と書いている。かつて「メディアはメッセージである」といったのは、社会学者のマーシャル・マクルーハンだった。三段論法ではないが、私は「店舗はメッセージである」と言いたい。
この本が、日本に上陸したのは最近だが、それに先立つ1年前。わが職場では「マクルーハンの本棚」という試みをはじめた。店頭を「書店員さん達のメッセージを伝える場所」と定義し、書店×ITの新たな可能性をさぐる実験を始めたのだ。
幸いなことに、好評を得ることができた。なかでも、AIが本をオススメする「AI書店員ミームさん」は、賛同が広がり、このたびTBSラジオコラボ版が完成。「秘密結社 鷹の爪」の吉田くんが、ミームさんにイタズラをして笑いをふりまいている。
エンタテイメントセルのトレンドは、すでに日本の小売の現場で猛烈な勢いで始まっている。売上や利益などの短期的な思考の罠にさえ嵌らなければ、これから、店舗こそが商品になる。そんな未来が見える一冊である。
AI書店員ミームさん(TBSラジオコラボ版)
期間:2018/8/1~8/31
場所:八重洲ブックセンター本店5F
ほんをうえるプロジェクト 吉村博光
「ほんをうえるプロジェクト」とは?
植物に水をやってゆっくりと育てるように、本ももっとていねいに売っていこうと、出版総合商社トーハンがはじめたプロジェクトです。新刊やベストセラーに限らず、独自の手法で良書を発掘し、本屋さんにご提案しています。同じ趣味をもった方同士がつながれる、「 #好きな本を語ろう 」というコミュニティを運営中です。ぜひご参加ください!