【書店員のイチオシ】
大人にもおすすめしたい青春小説『青少年のための小説入門』
【ほんをうえるプロジェクト】



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読んだあと、ラストシーンを何度も読み返しました。この、胸がいっぱいになる感じ。せつないけれど、悲しいわけではない。でも心をぎゅーっとつかまれるようで、感想を表す言葉をうしなって、うわーっとなる感じ。ひとことでいうと感動した、ということなのですが、この読み終わった後に本を抱えてごろごろ転がりまくりたくなるこの感じ。もう、もう、これをどう伝えたら……とにかくみんな読んでくれー! となるそんな小説に昨年出会いました。
『青少年のための小説入門』というタイトルで、ブックガイドをイメージされる方もいらっしゃるかも知れませんが小説です。小説家をめざす2人の物語。そして夢をかなえた2人のその後の物語です。
主人公のひとりは20歳のヤンキー青年、登。ディスレクシア(読み書きの出来ない学習障害)だけれど、作家を目指しています。登が目をつけたのが、中学生の一真。真面目で頭が良いいじめられっこ。一真の弱みにつけこんで巻き込み、2人コンビで作家デビューを目指すことになります。ストーリーを登が考えて、実際に書くのが一真。一真は毎日、登に名作文学を朗読してきかせ、その面白さを取り込んでいく特訓をしていくことになります。
名作文学を朗読……なんていうと硬そうですが、これがすごく面白いのです! 知っているお話のはずでも、こんな面白い一文があったんだ?と笑ったり凄さを感じたり、その面白さを取り込んで登が生み出したストーリーにびっくりしたり。
こういう作品づくりの行程は本好きにはたまらない要素なのですが、このお話の魅力はそれだけではないところ。「インチキじゃないものを書きたい」という2人の熱さとか、関係性とか、青春小説としてすごくいいのです。ふたりは、力を合わせて作家になるという夢をかなえます。でもそれで終わりではない。そこから先の展開はぜひこの小説で味わっていただきたいのですが、主人公2人の同年代だけでなく通り過ぎた世代の方たちにもぐっとせまってくると思います。この物語は熱中して一気読みできるスピード感を持ちながらも、長く苦しい人生のひとときを描き出します。人生は、難しい。運だの実力だのというだけでなく、思うように自分を乗りこなすことすら、けっこう難しい。でも、そんな時間を通り過ぎてきたことを悪くないと思える、そんなエンディングです。
いま夢を追いかけている人も、酸いも甘いも噛み分ける大人にも、おすすめの青春小説です。
ほんをうえるプロジェクト 船田真喜
「ほんをうえるプロジェクト」とは?
植物に水をやってゆっくりと育てるように、本ももっとていねいに売っていこうと、出版総合商社トーハンがはじめたプロジェクトです。新刊やベストセラーに限らず、独自の手法で良書を発掘し、本屋さんにご提案しています。同じ趣味をもった方同士がつながれる、「 #好きな本を語ろう 」というコミュニティを運営中です。ぜひご参加ください!