「ついしたくなる」仕掛けに思わず唸る『仕掛学』
【未来屋書店のイチオシ】

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仕掛学の本
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松村真宏
東洋経済新報社
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著者
松村真宏
出版社
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仕掛学』を読んでから、日常の中のちょっとした発見にその背景が何か思いをめぐらせることが増えてきた。

女性にはわからない話だが、男性が公衆トイレで立って用を足す際に、手許に傘をかけるフックがある。傘のマークが表記されていないことが多いが、バッグや買い物袋をかけるのには適していない。

ところが最近傘フックの代わりに、ホルダーが設置されている所が増えてきた。傘をかけるには低い場所に取り付けられているそれは、「つえをおかけください」と表記されている通り杖ホルダーである。書店員の職業病である腰痛で一時的に杖を使っていた時のことを思い出すと、確かにその時杖をどうするかに困った。シニア化している現代では、傘かけ以上にニーズがあるものなのだろう。

こうしたものを見つけるたびに「よく考えているな」と感心する。

だが『仕掛学』で取り上げられている事例は、こうしたものとはすこし違う。感心よりも、感嘆したり、ほくそ笑むような事例が写真入りで取り上げられ、何故効果を生むかを分析している。解説を読むまで、何を目的にしているのか、どれくらいの効果があるのか分からないものもある。金沢21世紀美術館に訪れた時の感じ方に近いように思えた。

例えば、同じ男性トイレについている「的」は、「トイレは綺麗に使いましょう」という張り紙よりも、飛散を防ぎ綺麗にすることに大いに役立っているそうだ。

小さな鳥居を設置することで、神聖な場所を想記させ罰当たりな行動を慎ませるのでゴミの不法投棄が減る。

ピアノの鍵盤に見立て白と黒が混ざっている階段を踏むと実際に音がして、それが楽しくて嫌いな人でも階段を上り下りして運動してしまう。

コインを入れたくなる募金箱、おもちゃを片づけたくなるバスケットゴールのついたゴミ箱。並びを揃えたくなる背表紙に斜線が引かれているファイルボックス・・・。

問題に対し「したほうが良い」と直接伝えても効果がないことに、「ついしたくなる」ように仕向けて「結果として」解決することが著者の言う「仕掛け」である。

仕掛けの基本として、「行動の選択肢を増やす」ことが挙げられている。いつもの行動に加わった新たな行動が魅力的なら、自ら進んで行動を変える。強要ではなく、自ら。無理やり行動を変えさせようとするのではなく、つい行動を変えたくなるように仕向けるのである。行動と解決する問題の関係が、一見無関係に見えるほどうまい仕掛けになるという。

考えてみれば、書店員として店舗で考えていることの多くがそういう類いだ。書店に限らず小売業ならみな同じだろう。どうしたら入店したくなるか、また来たいと思ってもらえるか、売場を回遊して商品を手に取ってもらえるか、購入していただけるか。

公開日:2017/04/21
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