出版社のイチオシ#023


各出版社の「これはぜひ推したい!」という本を揃えたコーナー、「出版社のイチオシ」です。今回ご紹介する7冊のご本も実に興味深いテーマばかり。人生哲学、組織づくり、国際関係、進化心理学など、多様性の宝庫です。各出版社の方々が書いてくださった熱いメッセージをお読みいただければ幸いです。「これぞ」という本を見つけたら、ぜひ本書をお読みください!
自由国民社
『家族という病』『極上の孤独』など数々のベストセラーを持つ下重暁子氏に、「不良」をキーワードに人生哲学を語っていただいたのが本書です。
「矜持」とは「誇り」とか「プライド」という意味ですが、今回本書で伝えたいのは単なる誇りやプライドではなく、自分の中で秘かに芽を出し、水をやり少しづつ育ててきた確固たる信念の価値だ、と下重氏はいいます。
そして「不良」とは、世間の決めた枠にとらわれず、自分らしい自由な生き方のこと。とくに世の中が自分に強いる「役割」から解放されることが重要で、そのためにはいっとき「常識破りの不良」と思われる勇気も必要だ、と氏は力説します。
世間の目や正論にずっと自分を合わせて生きるということは、長い目でみれば、最後まで自分の本質と向き合わないこと。
それは決して「心地よい生き方」にはならない、と。激動の時代こそ、自分らしさを失っては幸せになれない。若い人にもぜひ一読いただきたいです。
(自由国民社取締役編集局長 竹内尚志)光文社
組織づくりに悩むビジネスパーソンには、人を束ね、用いるときの心構えを。
人生に悩む若者には、困難を乗り越え、願いをかなえるときの姿勢を。
余すところなく教えてくれる一冊です。
著者は、来季で連続在任年数が球団史上最長の9年目となる、北海道日本ハムファイターズの栗山英樹監督。これまでの8年間で、リーグ優勝2回、日本一1回。輝かしい戦績を残している名将です。また、球界の常識を覆し大谷翔平選手と共に二刀流を成功させた勇者でもあります。独特の采配は「栗山マジック」と言われ、常に観衆を感動させています。
その大胆発想の源はどこにあるのか? そんな問いから本書の制作は始まりました。
タイトルの通り、栗山監督が記し続けているノートの中の言葉をもとにしています。『論語』『書経』『易経』……古今東西の偉人の言葉とともに、栗山監督ご自身が自ら編み出した教訓が、真摯に綴られています。
仕事のみなならず、人生全般に効く。必ず、明日への活力を与えてくれる。
自信を持っておすすめできる名著です。
一人でも多くの方にお読みいただけますように。
(編集 千美朝)PHP研究所
「ウェストファリア体制」。聞きなれない方も多いでしょうが、れっきとした日本語です。
いまの国際法では、捕虜の取り扱いなど「戦争であっても守るべきルール」が定められています。その原型が、1648年のウェストファリア条約。同条約の基礎となる考え方を著したのが、オランダの法学者フーゴー・グロティウスが書いた『戦争と平和の法』(1625年)です。当時は現代のような人権や平等、近代国家の概念すらありませんでした。ひと握りの教皇や国王、貴族が力を独占する時代に、戦争とたんなる殺し合いが違うことを主張したグロティウスの勇気と慧眼は、まさに天才的です。
では、なぜウェストファリア体制が「日本語」なのか。グロティウスが理想に掲げた戦争と平和の法を守り、体現してきたのが、私たち日本人にほかならないからです。現在の国際関係を考えるうえで、示唆に富む内容と思われます。
(第一事業制作局 第一制作部 課長 白地利成)ハーパーコリンズ・ジャパン

人はなぜ幸せになりたいのか?
本書にはそんな壮大な問いのヒントが詰まっています。
というのも、「幸せ」は先史時代からテクノロジーとグローバリズムの現代まで、数万年かけ繰り返されてきた進化のプログラムと関係があるというのです。
著者は進化心理学の人気教授。と聞くと小難しそうだけど、
我々は自分の見た目を2割増しで考えている、
仕事をサボるフリーライダーは太古から制裁を受けてきた、
イノベーションは〝ぼっち〟な人が(自分だけで困難を解決するため)生まれることが多い、など本書で紹介されるのは身近な出来事が中心。
出会い系サイトからフェイクニュースまで、社内プレゼン用にピックアップした豊富な事例があまりに面白くて、今回カバーにそのまま箇条書きで掲載してみました。
驚異の進化を遂げた一方ざんねんな習性を持つ人類の秘密を知ると、ちょっぴり生きやすくなります。
嘘つきで自信過剰でお人好しな誰かに(あなた自身含め)思い当たったらぜひお手に取ってみてください。
(担当編集 小野寺)日本能率協会マネジメントセンター
かつて世界第2位の経済大国と称された日本は1989年当時、世界の株式時価総額ランキングのベスト10に7社がランクインしていました。それが30年後の2019年にはベスト10どころか、50位内にようやくトヨタ自動車が登場します。
日本企業は、もはや世界経済の頂点に立つことはできないのでしょうか。
この命題に向き合い、再び世界で光を放つための〝処方箋〟を提示するのが本書です。
著者はマッキンゼーNY事務所等を経て、現在、コーンフェリーで活躍する敏腕コンサルタントです。
日本や欧米有力企業のトップマネジメントに経営アドバイスを行ってきた経験から、組織ケイパビリティ(その企業が得意とする独特の組織能力)を高めて、グローバルで成長するための大胆な方策を説いていきます。
経営者や事業管理者の方々が、これからの日本企業の再生に自信をもって挑戦していただく上で、是非にも読んでいただきたい1冊です。
(担当編集者 根本)アスコム
投資は、まったく難しいものでもなく、私たち一人ひとりの将来のために役立つもの。
ぜひ、誰もが投資を始めてお金の悩みを減らし、老後の不安を解消してほしい。
人気家計再生コンサルタントである著者横山光昭さんの、そんな思いから生まれた書籍です。
編集者の私自身、本書を制作する中で、投資に対するイメージはまったく変わりました。貯金よりも簡単。損をするかもという不安は、ほぼなし。「積立NISA」などの制度がどれだけ将来に有益なものか、よくわかった次第です。
書籍内では数多ある商品から、購入すべき「インデックスファンド」を紹介していますので、まずは貯金感覚で買い始めることがおすすめです。
また、投資したお金はふつうの銀行口座のようにいつでも、「お金をおろす」ことができます。会社にもよるでしょうが、1円単位で引き出しが可能です。
ですので、投資はお金が増えていく「貯金」くらいの感覚ではじめてほしい。
そういう横山さんからの願いもこもっています。
(編集 栗田亘)日経BP
投資に関する本の主流はどうやったら儲かるか、つまり成功にスポットを当てたものが多い。
その点、本書は異質だ。最初から最後まで失敗のオンパレードで、しかも失敗の主は、誰もがうらやむ伝説の投資家。
つまり、普通の投資本とはアプローチが真逆だ。実のところ、投資の成功というのは、単に「時の運」に恵まれていることも多い。
そのため、成功者の事例からノウハウを抽出したところで、再現性に限界がある。
一方、失敗はというと、同じ過ちを繰り返す投資家はきわめて多い。
人は認知バイアスの罠にはまりやすく、だからこそ、失敗事例は学びの最高の材料となる。投資をする以上、バフェットやマンガーといった最高の投資家でもさえも、失敗からは逃れられない。
それを重々わかったうえで、いかに失敗と上手に仲良く付き合っていけるかが、長く賢く投資を続ける秘訣であり、ひいては儲けにもつながる。そのことを、本書は説得力を持って教えてくれる。
(書籍編集1部 沖本健二)