自立型人材を育てるための心得
第4回 Lunch time ビジネスワークアウト《イベントレポート》

ランチを食べながら「知的筋力」を鍛えるフライヤーの「Lunch timeビジネスワークアウト」ウェビナー。2021年1月19日(火)のお昼の時間帯に第4回が行なわれました。リラックスしたムードの無料オンラインセミナーに、今回もたくさんの方がご参加くださいました。
メインスピーカーは株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリストの荒木博行です。本記事では、当日のセミナーの様子をダイジェストで再構成してお届けします。
荒木博行:荒木博行:本日のテーマは「自立型人材」です。組織における自立をブレイクダウンしてみると、次の3つの問いに収れんされます。
・今の組織における重要な課題は何か?
・その重要課題を解決するために、何をすればいいか?
・その解決策について自分がどのような貢献をすべきか?
つまり、多くの経営者が考えている「自立型人材」の要素は、次の3つです。
・問題発見:自分で問いを考え
・問題解決:自分で答えを出し
・解決策実行:自分でその答えを実行に導く行動ができる
「自立」の対義語は「依存」です。自立型人材であるためには、会社と対等なのか、それとも会社に依存している状態なのか、ということを考える必要があるともいえるでしょう。

それでは、flierで配信されている6冊の要約をベースに、自立型人材について考えていきましょう。
1.質問責任


1冊目は、『カイシャインの心得』(山田理、大和書房)です。この本には、次のようなことが書かれています。
「メンバーは、経営者やマネジャーに対して、わからないこと、納得できないことを質問できる。裏を返せば、質問しないということは、納得している、理解しているということだ。質問したり異議を唱えたりしないのに会社のルールを破る人は、厳しく追及される」
この本から学べることの一つは、「質問」がオープンに交わされる風土をつくることの重要性です。そうでなければ、裏での根回しが行われたり、意見が飲み込まれてしまったりするでしょう。質問をしにくい環境は、自立型の組織だとはいえません。
チェックポイント:あなたの組織では、「質問」がどれだけ交わされているか?
2.プリミティブな問いを立てさせる


『問い続ける力』(石川善樹、筑摩書房)には、「一流と呼ばれる人は、プリミティブな問いを立てる傾向にある」と書かれています。
プリミティブな問いとは、「~とは何か」といった根本的な問いのこと。『カイシャインの心得』からの学びと組み合わせると、職場内で根本的な問いがどれだけ交わされているかが非常に重要だといえます。
自分は組織の歯車の一部だと思っている人は、本質的な問いを立てようとは思わないはずです。自立型人材を育てるためには、本質的な問いがどんどん提起されるような組織を作っていかなければなりません。
チェックポイント:あなたの職場で交わされている問いに、「根源的な問い」はあるか?
3. 安全基地であるための9つの要件


次は、『セキュアベース・リーダーシップ』(ジョージ・コーリーザー、スーザン・ゴールズワージー、ダンカン・クーム、東方雅美訳、プレジデント社)です。
タイトルにもなっている「セキュアベース」とは、安全基地のこと。本書では、リーダー自身がメンバーにとっての「セキュアベース」でなければならないと説かれています。
著者らは、世界中の企業幹部にインタビューやアンケートを行い、セキュアベース・リーダーの9つの特性(安全基地であるための9つの要件)を次のように特定しました。
・冷静でいること
・人として受け入れること
・可能性を見通すこと
・傾聴し、質問すること
・力強いメッセージを発信すること
・プラス面にフォーカスすること
・リスクをとるように促すこと
・内発的動機で動かすこと
・いつでも話せることを示すこと
安全基地がないと、根源的な問いを提起する勇気は出ないはずです。あなたがリーダーなら、自立型人材をむやみに求める前に、「自分はメンバーにとってのセキュアベースになれているか?」と自問してみていただきたいと思います。
チェックポイント:あなたの組織のリーダーは、「安全基地」として機能しているか?
4. 心理的安全性×仕事の基準


次は、『心理的安全性のつくりかた』(石井遼介、日本能率協会マネジメントセンター)。本書には、「仕事の基準」と「心理的安全性」について、次のように書かれています。
「『仕事の基準』と『心理的安全性』でマトリクスで描き、職場を4象限に分けて考えてみよう。心理的安全性が高いが、仕事の基準が低いのが、和気あいあいとしているが仕事の充実感はない、『ヌルい職場』だ」
一方で、「仕事の基準」が高く、「心理的安全性」の低い職場は、「キツい職場」と定義されます。キツい職場でメンバーが萎縮してしまうと、一人ひとりの判断で自立的に動くことができず、自立的人材が育ちにくくなります。
リーダーがセキュアベースとなり、どんな質問も交わせるような心理的安全性を確保するだけでなく、仕事に対する期待値を高く持ち続けることもまた重要な要素。目指すべきは、4象限のうち「心理的安全性」と「仕事の基準」がともに高い「学習して成長する職場」です。
チェックポイント:あなたの職場は「心理的安全性」と「仕事の基準」を両立しているか?
5.まずは上位層のマインドセットから


『全員経営者マインドセット』(吉田行宏、クロスメディア・パブリッシング)には、次のようなことが書かれています。
「多くの経営者やリーダーにとっては、自ら成長してくれる部下より、組織にマイナスの影響を及ぼす可能性のある部下のほうが気にかかってしまう」
「組織全体のマインドセットを向上させるには、『2割の上位層のマインドセットをさらに上げる場をつくる』ほうが効果的だ」
今この環境で自立できていない人には、どうしても目がいってしまうもの。ですが、人が人に与える影響は計り知れません。ならば優先順位としては、既に自立している2割をさらに引き立て、増やしていくような働きかけをすることのほうが高くなるのです。
チェックポイント:あなたの組織で「自立」している社員は2割いるか?
6.自分の心が何を求めているか


最後に、世界100万部突破の名著『学習する組織』の入門編である『「学習する組織」入門』(小田理一郎、英治出版)です。
この本では、『学習する組織』に登場する「自己マスタリー」という言葉について、「自分が心から求めている結果や未来を生み出すために、自分の能力と意識を、絶えず伸ばし続けるディシプリン」と定義しています。
つまり「自己マスタリー」とは、会社の課題を自分ごととしてとらえて、それを解決するために取り組むことだと解釈できます。自立型人材の定義とよく似ていますよね。
会社と個人が対等の関係であるためには、会社の課題と個人の課題がリンクしている必要があります。会社にとっての自立型人材であろうとするなら、まず「あなたは何者なのか」「何をしたい人なのか」を把握する必要があるといえるでしょう。
チェックポイント:あなたの組織の目標を一方的に個人に押し付けていないか?
6つのポイントからあなたやあなたの組織を見てみよう
ここまで、自立型人材を考えるための6つのポイントを紹介してきました。

今日の「ビジネスワークアウト」として、みなさんにもぜひ自分や自分の組織に当てはめて、「自立度」をチェックしてみていただければ幸いです。
flierのゴールドプランに登録すると、今回紹介した本の要約を含め、flierで公開されているすべての要約が読み放題になります。この機会にぜひご利用ください。
「Lunch time ビジネスワークアウト」は、今後も定期的に開催予定です。次回もお楽しみに!
荒木博行(あらき ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリスト、株式会社ニューズピックス NewsPicksエバンジェリスト、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、株式会社絵本ナビ社外監査役。
著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。