組織の未来を左右する従業員エンゲージメント
第8回 Lunch time ビジネスワークアウト 【イベントレポート】

ランチを食べながら「知的筋力」を鍛えるフライヤーの「Lunch timeビジネスワークアウト」ウェビナー。2021年5月19日(水)のお昼の時間帯に第8回が行われました。リラックスしたムードの無料オンラインセミナーに、今回もたくさんの方がご参加くださいました。
メインスピーカーは株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリストの荒木博行さんです。本記事では、当日のセミナーの様子をダイジェストで再構成してお届けします。
最近よく耳にするようになった、「エンゲージメント」という言葉。ウイリス・タワーズワトソン社の定義によると、エンゲージメントとは「従業員の一人ひとりが企業の掲げる戦略・目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲」を意味するとのことです。
では、flierで配信されている6冊の要約をベースに、従業員エンゲージメントについて考えていきましょう。
1.『組織の未来はエンゲージメントで決まる』


1冊目の『組織の未来はエンゲージメントで決まる』(新居佳英/松林博文、英治出版)では、「エンゲージメントを高めるための第一歩は、自社のエンゲージメントの『見える化』である」といったことが書かれています。
見える化の具体的な方法として挙げられているのは、「あなたは現在の職場を親しい友人や家族におすすめしたいですか」と従業員に質問し、10点満点で評価してもらうというもの。全体のうち「推奨者」(9~10点)の割合から「批判者」(0~6点)の割合を引いた数字が、エンゲージメントを示す指標となります。
エンゲージメント向上に取り組むなら、こういった調査をもとに、まずは現状を数値で把握してみましょう。「当社の従業員のエンゲージメントは高いはずだ」と思っていたのに、蓋を開けてみれば「批判者」が多数だった……という結果になるかもしれません。
チェックポイント:エンゲージメントを数値で把握しているか?
2.『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』


2冊目は『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』(ロッシェル・カップ、クロスメディア・パブリッシング )です。著者は本書で、日本人のエンゲージメントレベルは世界平均よりも大幅に低いと指摘します。
その理由の一つとして挙げているのは、マイクロマネジメントに陥りがちであること。マイクロマネジメントをされると、部下にとっては「組織=上司」になり、上司の存在が大きくなりすぎてしまいます。その結果、のびのび働けず、社内のコミュニケーションが滞り、成果も出ないという悪循環に陥るのです。
チェックポイント:リーダーの存在が組織のすべてになっていないか?
3.『VUCA時代の仕事のキホン』


次は、『VUCA時代の仕事のキホン』(河野英太郎、PHP研究所)です。本書では、理想のリーダー像として、自分には才能がなくても、自分以外のメンバーに最大限の力を発揮させることで結果を出す人が挙げられています。
では、どうすれば自分以外のメンバーの能力を引き出せるのか。著者は、メンバーと話し、その人のやりたいことやキャリアビジョン、仕事に対する価値観を知っておくことが重要だといいます。
何によってエンゲージメントが高まるかは、人それぞれ異なります。だからこそ1on1などを通して、相手の価値観を把握しておくことが欠かせないのです。
チェックポイント:メンバーの価値観を把握しているか?
4. 『ウィニングカルチャー』


次は、『ウィニングカルチャー』(中竹竜二、ダイヤモンド社)。本書には、次のようなことが書かれています。
「事実に対する一人ひとりの感情、その集積が組織文化である」
「一人ひとりの変化なしに、組織文化は変容しない」
「組織文化の変革においては、中にいる一人ひとりが自分らしさを出し、恐れずに本音を語り合うことが最初の一歩となる」
その組織は、自分らしさを恐れずに出せる環境でしょうか。1on1などを通して相手の価値観を知るにしても、心理的安全性が築けていなければ、参考になるような回答は得られないでしょう。エンゲージメントを高めるために、まずは「らしさ」を出せる環境を整えましょう。
チェックポイント:「らしさ」を知ることができているか?
5.『楽しくない仕事は、なぜ楽しくないのか?』


『楽しくない仕事は、なぜ楽しくないのか?』(土屋裕介/小屋一雄、プレジデント社)には、次のようなことが書かれています。
「組織として助け合いの文化を醸成するうえで重要なのが『多様性』だ」
「何かしらのハンデを背負った人がチームに参加することで、共感的な理解と対話が促され、『失敗を許さない組織』から『失敗から学ぶ組織』になる」
同質性の高い組織においては、「失敗できない」という緊張感が生まれがちです。一方、みんながそれぞれハンデを背負っていたり、多様性があったりすると、「失敗してもいい」「外れ値もOKだ」という雰囲気が自然と生まれ、仕事の生産性が上がります。
上司が弱みを見せたり、会議であえてくだらない意見を言ってみたりするのも、「失敗を許さない組織」を変えるうえで大いに役立つでしょう。
チェックポイント:組織の中に多様性はあるか?
6.『チームワーキング』


最後に、『チームワーキング』(中原淳/田中聡、日本能率協会マネジメントセンター )を紹介しましょう。著者は、成果が出ないチームは初期のアクションを最重要視する一方で、成果の出るチームはチームを「全員でリードするもの」「常に想定外の変化をする、動的でダイナミックなもの」とみなすといいます。
外部環境は常に変化するものであるということを忘れてはいけません。変化の激しい時代だからこそ、最初のプランに固執することなく、メンバー全員がそれぞれ考え、自発的に行動していく必要があります。そのためにも、エンゲージメントが高いメンバーが集まっているかどうかが、成果を出すチームの要件になるのです。
チェックポイント:組織は動的に変化することを認識しているか?
6つのポイントからエンゲージメントについて考えてみよう

ここまで、エンゲージメントを考えるための6つのポイントを紹介してきました。今日の「ビジネスワークアウト」として、みなさんにもぜひ自分や自分の組織に当てはめて、エンゲージメントを考えてみていただければ幸いです。
flierのゴールドプランに登録すると、今回紹介した本の要約を含め、flierで公開されているすべての要約が読み放題になります。この機会にぜひご利用ください。
「Lunch time ビジネスワークアウト」は、今後も定期的に開催予定です。次回もお楽しみに!
荒木博行(あらき ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリスト、株式会社ニューズピックス NewsPicksエバンジェリスト、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、株式会社絵本ナビ社外監査役、株式会社NOKIOO スクラ事業アドバイザー。
著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。