「自分の理想に近づくためのキャリアデザイン」を考える6冊
第9回 Lunch time ビジネスワークアウト 【イベントレポート】

ランチを食べながら「知的筋力」を鍛えるフライヤーの「Lunch timeビジネスワークアウト」ウェビナー。2021年6月16日(水)のお昼の時間帯に第9回が行われました。リラックスしたムードの無料オンラインセミナーに、今回もたくさんの方がご参加くださいました。
メインスピーカーは株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリストの荒木博行さんです。本記事では、当日のセミナーの様子をダイジェストで再構成してお届けします。
現代のキャリア形成において、「延びる寿命、延びる勤続年数」「変わる公的制度」「先が読めないテクノロジーの進化」の3つから目をそらすことはできません。
特に影響が大きいのは、「先が読めないテクノロジーの進化」でしょう。新型コロナウイルスの流行によって、それぞれの業種・職種に求められるスキルセットは大きく変わりました。スキルがすぐに陳腐化してしまう時代にあって、同じことをし続けるリスクは極めて大きくなっています。
そんな時代において、私たちはいかにキャリアを形成していくべきか――flierで配信されている6冊の要約をベースに考えていきましょう。
1.『転職2.0』


1冊目の『転職2.0』(村上臣、SBクリエイティブ )で著者は、「1人が3~4回転職するのが当たり前の時代が来る」「そのような状況では、ネットワークが大きな武器となる」といったことを指摘しています。
ネットワークを考えるうえでは、アメリカの社会学者、マーク・グラノヴェッターが提案した「ストロングタイズ:強い絆」と「ウィークタイズ:弱い絆」の分類が役立つでしょう。
彼の研究では、ストロングタイズに頼って情報収集をした人より、ウィークタイズから情報を集めた人のほうが、望ましいキャリアを実現していることがわかっています。ストロングタイズから得られる情報は限定的になってしまいがちだからでしょう。
ウィークタイズは、常にメンテナンスし続けなければ途切れてしまうもの。ウィークタイズを結び、維持するためには、家庭や職場以外のサードプレイスを複数持っておくとよいでしょう。
チェックポイント:ゆるいつながりをメンテナンスできているか?
2.『転職の思考法』


2冊目は『転職の思考法』(北野唯我、ダイヤモンド社)です。著者は本書で、「どんな人間でありたいか」「どんな状態でありたいか」に重きを置く“beingタイプ”の人は、「緊張と弛緩のバランス」を意識すべきだといいます。
ここ半年のあいだに仕事で強い緊張感を抱いた場面を書き出してみて、いい緊張感が3つ未満の場合は、難しい業務や未経験の業務にチャレンジするとよい。一方、悪い緊張感が10以上あるなら、転職を検討せよ――これが著者の提案です。
「悪い緊張感」を覚えるシーンがあまりに多いと、心身ともに疲弊してしまいます。その一方で、いい緊張感を覚えるシーンが少なすぎると、成長は望めません。今いる環境は、あなたにとって甘すぎたり、厳しすぎたりするものでないか、チェックしてみませんか。
チェックポイント:良い緊張感を味わえているか?
3.『マーケターのように生きろ』


次は、『マーケターのように生きろ』(井上大輔、東洋経済新報社)です。本書で著者は、「マーケター思考=相手の視点に立って物事を考えること」の重要性を説きます。
キャリアを考える際、既存の視点から抜け出せずに、自分の強みや魅力が見出せなくなってしまっている人は多いかもしれません。そのときに大事になってくるのは、マーケティングのように、「相手」の視点を意識すること。自分自身をあたかも相手の視点に立って見つめるようにすることで、思わぬ価値を再発見することができるのです。
相手の視点に立つカギは、憑依することです。たとえば上司の視点に立つとするならば、その人の1日の活動をスケジュールを見ながら徹底的にリアルにイメージしてみることは、ベタな手ですが有効です。そして、その上司の視野から自分を見つめ直してみると、初めて自分自身を客観的に見るということに近づいていくのだと思います。
小説を読む、ということは、そのように他人の人生に憑依するトレーニングと言えるのかもしれませんね。
チェックポイント:相手の視点で自分を見つめているか?
4. 『生きがいについて』


次は、『生きがいについて』(神谷美恵子、みすず書房)。本書には、次のようなことが書かれています。
「どんなに苦労の多い仕事でも『自分でなければできない仕事である』と感ずるだけで、人は生きがいをおぼえる」
キャリア形成において、「この仕事は自分でなければできない」という“壮大な勘違い”は欠かせないもの。実際は自分がいなくても仕事は回るはずですが、この勘違いをする瞬間は尊いものです。
あなたがリーダーなら、メンバーに対して「この仕事は自分でなければできない」と思ってもらえる声かけを積極的に行いましょう。その人の仕事ぶりをよく見つめ、「この仕事はあなたにしかできません」と心からの言葉を伝え、相手に実感させることこそ、リーダーの仕事なのです。
チェックポイント:「自分でなければできない仕事」と認識していることはあるか?
5.『LIFESPAN(ライフスパン)』


『LIFESPAN(ライフスパン)』(デビッド・A・シンクレア/マシュー・D・ラプラント、東洋経済新報社)には、私たち人類について、「100歳になっても現在の50歳なみの活動レベルを保てる時代がやってくる」といったことが書かれています。
その上で著者が指摘するのは、地球温暖化の防止や感染症の増加への対処などといった課題に、私たちは当事者として向き合わざるを得なくなるということ。今まで「孫の世代の課題だから」と言って目をそらしていた課題の当事者になるのです。
キャリアを考える上でも、息の長いイシューに向き合っていくことは重要です。なぜなら、こうしたイシューに積極的に取り組んだ経験は、これからのキャリア形成において、大きな強みになるから。サステナブルでないビジネスに携わっている人は、時間の使い方やキャリアを見直してみてもいいでしょう。
チェックポイント:キャリアのスコープ内に社会的課題は入っているか?
6.『藁を手に旅に出よう』


最後に私の著書、寓話や昔話の例を使いながらキャリアについて考えていく『藁を手に旅に出よう』(荒木博行、文藝春秋)から、キャリアにおける2つの努力について紹介できればと思います。
2つの努力とはすなわち、「どのフィールドで頑張るかを戦略的に考える努力」と「実際にそのフィールドで行う努力」です。童話『うさぎと亀』をこの観点から見てみましょう。『うさぎと亀』に登場する亀は一般的に努力家と評価されますが、視点を変えれば、「どのフィールドで頑張るかを戦略的に考える努力」を放棄した愚か者だと言えるかもしれません。
ひたむきな努力の重要性は、言うまでもありません。それ以上に、自分が活躍できるフィールドを選ぶための努力を、決して怠ってはならないのです。
チェックポイント:どこで頑張るのかを考える努力をしているか?
6つのポイントからキャリアデザインについて考えてみよう

ここまで、キャリアデザインを考えるための6つのポイントを紹介してきました。
今日の「ビジネスワークアウト」として、みなさんにもぜひ自分に当てはめて、キャリアデザインについて考えてみていただければ幸いです。
flierのゴールドプランに登録すると、今回紹介した本の要約を含め、flierで公開されているすべての要約が読み放題になります。この機会にぜひご利用ください。
「Lunch time ビジネスワークアウト」は、今後も定期的に開催予定です。次回もお楽しみに!
荒木博行(あらき ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長、株式会社フライヤーアドバイザー兼エバンジェリスト、株式会社ニューズピックス NewsPicksエバンジェリスト、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、株式会社絵本ナビ社外監査役、株式会社NOKIOO スクラ事業アドバイザー。
著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。