『同志少女よ、敵を撃て』で話題の「本屋大賞」はどんな賞?
「小説」と「発掘」部門、フライヤーで読める作品も

『同志少女よ、敵を撃て』はお読みになりましたか? 4月6日に発表された「2022年本屋大賞」に選ばれ、全国の書店やメディアで話題になっています。
今回で19回目となる本屋大賞、その始まりは約20年前、「書店店頭に活気を取り戻したい」という熱意ある書店員らの取り組みがきっかけでした。回を重ね、今では書店、出版業界の一大イベントとしてすっかり定着しました。
本屋大賞の経緯や今回の受賞作とともに、フライヤーにある関連書の要約をご紹介します。
(フライヤー主催のビジネス書グランプリの結果に関する記事はこちら)
第1回大賞は『博士の愛した数式』
本屋大賞は、「全国の書店員がいちばん売りたい本を、投票によって選ぶ賞」として創設され、2004年に第1回が発表されました。栄えある最初の大賞に選ばれたのは、小川洋子さん作『博士の愛した数式』(新潮社)。お読みになったり、映画化された作品をご覧になったりした方も多いのではないでしょうか。
「商品である本と顧客である読者を最も知る立場にいる書店員が、企業の枠や日常の利益を超えて交流し、広く一般市民に対して本当にお奨めしたい書籍の情報を啓発する」という書店員の熱意によって始まった本屋大賞。次第に賛同する書店や店員が増え、注目度も高まってきました。受賞作品は重版されたり、ドラマ化されたりして、大きな話題を呼んでいます。
『同志少女よ、敵を撃て』のあらすじ
第19回となった2022年本屋大賞は、逢坂冬馬さんの『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)でした。
新刊書を扱う書店で働く書店員が、過去一年に読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び、一次投票、二次投票を経て順位が決まる仕組みとなっています。
今回1位となった『同志少女よ、敵を撃て』のあらすじは下記のとおりです。

「翻訳小説」と「発掘」の部門も
本屋大賞で注目すべきは、大賞だけではありません。次点の2位以下10位まで、いずれも血の通った、読み応えのある作品ばかりです。
このほか、翻訳小説の中から「これぞ!」という本を書店員が選んで投票した「翻訳小説部門」もあります。このたび11回目を迎えた同部門は『三十の反撃』(ソン・ウォンピョン(著)、矢島暁子(訳)、祥伝社)が1位となりました。
また、既刊本市場の活性化を狙った「発掘部門」は、過去に出版された本のうち、時代を超えて残る本や、今読み返しても面白いと書店員が思った本が選ばれています。刺激的で知的好奇心をくすぐる作品が毎年数十冊、リストに掲載されています。
フライヤーにある関連書
この「発掘部門」の中から、フライヤーに要約のある作品をいくつかご紹介します。
2014年本屋大賞【発掘部門】


本書に全力で向き合えば、とても受け止めきれない、重苦しい思いを抱えることになるだろう。しかし、たとえそうであったとしても、今この本を読めることは幸運である。困難な状況下に置かれている人、「なぜ生きるのか」と悩んだことのあるすべての人に、心からお薦めしたい1冊だ。
(要約者レビューより抜粋)
2012年本屋大賞【発掘部門】


働くことそのものに、苦難や過酷な運命を克服し、人生を明るく希望あふれるものにする力が秘められている――そのような著者の主張は、ともすれば時代に逆行しているように映るかもしれない。
しかし不透明な時代においては、力強く未来を見据え、自らの道を開拓していく心の強さが求められているのもまた確かである。京セラやKDDIという日本でも有数の事業を立ち上げ、ここまで発展させた男の生き様から学び取れることは多い。「ブラック企業」の問題が叫ばれる今日だからこそ、あえて手にとってみてほしい一冊である。
(要約者レビューより抜粋)
2008年本屋大賞【発掘部門】


本書は、南北戦争から混乱の再建時代(リコンストラクション)にかけ、主人公スカーレット・オハラの激しい生きざまとロマンスを描く一大巨編である。国を二分した戦争の敗者側となった南部には、綿花の大農園を営む白人貴族文化があった。スカーレットも、南部のレディとして華やかな毎日を送っていたが、戦火と北軍の略奪によって全てを奪われ、絶望的な飢えと貧困に苦しむことになる。戦後、黒人は解放された一方で、南部の白人は法的な保護も受けづらくなり、悪名高いKKKに入る者もいた。誇り高い南部の白人たちは、その誇りのために貧しさにあえいだ。しかし、スカーレットは、現実的な考え方と激しい気性で、恥ずかし気もなく金儲けに精を出し、南部社会に後ろ指をさされながらも3度の結婚をする。
奴隷制を美化している、といった批判も受ける本書だが、南北戦争の敗者の歴史、戦争の風と共に去った「南部文化」を深部まで描き出しており、まさにアメリカを代表する小説のひとつであるといえるだろう。
(要約者レビューより抜粋)
(冒頭の写真は早川書房提供)