ファッション×シェアリングエコノミー、エアークローゼット急成長の理由
感動をお客様に届ける仕組みに迫る

ファッションのシェアリングエコノミーサービスairCloset(エアークローゼット)。2018年2月にローンチしてから会員数は15万人を突破。プロのスタイリストが選んだ洋服が自宅に届くという、新たな「服と人」との感動の出会いの機会をつくり出しています。エアークローゼットが注目され急成長を遂げている理由とは? その世界観の背景に迫ります。

サービスの起点は、ファッションで「ワクワクする出会い」を生み出すこと

エアークローゼットとは、どのようなサービスなのでしょうか。

一言でいうと、「ワクワクするファッションとの出会いによって、ライフスタイルを豊かにする」を実現するサービスです。その手段として選んだのがファッションレンタルです。これまでファッションレンタルというと、冠婚葬祭など非日常の服がほとんど。これは、使う機会が少ないけれど高価な服という、経済合理性の観点からでした。

これに対し、私たちのエアークローゼットがめざすのは、日常の中で定期的にワクワクをつくること。特徴は、日本で初めて月額制で普段着に特化した、借り放題のサービスという点。洋服の返却期限はなく、好きなだけ着たあとは、届いたときと同じ箱に入れて返送するだけ。お客様がほしい服を選ぶのではなく、スタイリストが、人力で個々のお客様に合うものを選定し、提案します。これが、思わぬ素敵な服との出会いにつながります。

こうしたサービスが成り立つのは、IT技術の向上によるところが大きいですね。お客さんへのリーチ、スタイリストさんの服の選定、そして物流まわりの効率化が図られるようになりました。サービス開始以降、物流企業の寺田倉庫様、クリーニング店「ホワイト急便」の中園ホールディングス様との連携により、在庫管理から回収後のクリーニング手続きまでを一貫して行ってきました。
先日2018年4月からは物流拠点を移転し、大和ハウス工業様のDPL市川で「Intelligent Logistics Center PROTO(インテリジェント・ロジスティクス・センター・プロト)」の次世代物流プラットフォームに参画しています。AI・IoT・ロボットを活用した新しいシェアリングモデルの物流施設で、新たに物流オペレーションを構築しています。

エアークローゼットが事業としてもサービスとしても注目され、急成長している理由は何だとお考えですか。

ありがたいことに、メディアが積極的に取り上げてくださっている影響も大きいと思います。私たちがメッセージとして打ち出しているのは、次の3点です。1つはシェアでファッション領域を初めて開拓しているという点。2つ目は普段着のレンタルが日本初という唯一性、新規性です。3つ目はファッションのキュレーションというモデル。

ファッションレンタルのエアークローゼットのほかにも、2つの事業を展開しています。プロのスタイリストと直接対話しながら、洋服をその場で借りられる実店舗型の「airCloset×ABLE(エアークローゼットエイブル)」。そして、洋服を自宅で試着し、気に入ったアイテムを購入できるパーソナルショッピングアプリ「pickss(ピックス)」です。

どのサービスにも共通するのがパーソナルスタイリング。これを可能にするために、「スタイリング提供システム」というシステムを内製で開発し、特許を取得しました。すべて起点になっているのは、お客様にワクワク感を感じていただく、というところです。

パーソナルスタイリングという点に着目した理由は?

スマホの普及で、価値観の変化が起きていると気づいたからです。1つは、個の力がこれまで以上に強くなり、マス発信から個人の発信へと影響力が移っていること。すると、個に応じた「パーソナルであること」の価値は今後ますます高まっていくことが予想されます。
モノよりも、コトや体験へと価値が移っているのも変化の1つです。

そして、お金の価値よりも、限られた時間の価値を最大化しようという方向へ進んでいる。ECサイトによってショッピングに費やす移動コストは減りましたが、自分に合う服を探す時間も短縮したいというニーズは満たせていない。もちろん、服を見て回る時間を楽しみたいのならいいのですが、服探しの検索や迷う時間を短縮したいという「時短志向」のニーズに応えたいと思ったのです。

大事にしているのは、お客様の「満足」の先にある、「感動」をつくること。お客様のニーズに応えれば「満足」はしていただけます。ですが、「感動」を生み出すには、お客様が言語化できていない期待や願いを叶える必要があります。
なので顧客ヒアリングでは、「何がほしいですか」とは問いません。あくまでお客様のことを知るためのツールとして活用しています。どんな生活を送っているのか、普段どんなことを考えているのか。こうした問いの回答から、まるで友人のサプライズパーティーの企画を練るように、「こうしたらもっと喜んでくれるんじゃないか」と考えるんです。

つくりたい未来を細部までイメージし、メンバーにシェアする

顧客の感動につながる機会を見出すために、普段から意識していることはありましたか。

自分の思い描く世界が広がっていることを、徹底的にイメージすることです。色みやにおいなど、できるだけ細部まで。 創業時はシェアリングエコノミーという概念も、今ほどは日常で浸透していなかった。周囲にファッションレンタルをやるというと、「そんなの無理」といわれたこともありました。

ですが、それはあくまで意見。未来に関する意見や予測は、その時点ではいずれも正しいんです。なので、「そういう見方もあるんだな」と受け止めて、自分たちで実際にやってみて、めざす未来を現実化できるのか、確かめていくしかない。 そう思えたのも、エアークローゼットがあれば生活が絶対に豊かになる、必ず受け入れられると、最初から明確にイメージできていたからです。

シェアリングエコノミーのビジネスモデルは、リソースさえあればいくらでも後から競合が真似できます。ですが、どんな未来をつくりたいのかという世界観は、簡単に真似できません。特にリソースが限られているスタートアップにとっては、めざす世界観を実現しようという意識が非常に重要です。社内のメンバー一人ひとりが、サービスに対してどれだけ本気になれるか。 能力の差はどんなに大きくても2倍~5倍くらいですが、意識の差は100倍にも1000倍にもなる。だからこそ、メンバーに思いやビジョンを人一倍共有していきたいと思っているんです。

ビジョンを社内で共有するために具体的にどんな方法をとっていますか。

大事なのは、エアークローゼットの行動指針9 Heartsにもとづいたマインドセットを身につけてもらうこと。毎月、9 Heartsにひもづく目標を、キーワードにして提示しています。例えば、最近だと「劇的変化」「圧倒的やり抜き力」「とにかく楽しむ」「生産性3倍」といった、シンプルなものです。
キーワードを提示すると、会議や普段の会話でも、「その施策って、劇的変化につながりますね!」などと日常的に使われるようになります。すると、めざす世界観を実現するための考え方が、次第にメンバーの人格にまで染み渡って、その集合として文化がつくられていきます。

私はもともとチーム戦が好きで。社内のメンバーと同じ方向に向かえているかは、お客さんのことを考えるのと同じくらい大事にしているんです。そうした想いから、メンバー全員参加の週次ミーティングでは、必ず30分程度私の考えを話す時間をつくってもらっています。

ミーティングルームなど至るところに9 Heartsが飾られており、エアークローゼットの行動指針としていかに大事にされているかがうかがえた。指針の最初には「お客様の感動が第一」と刻まれている。

シェアリングエコノミーサービスは信頼関係がないと成立しない

今後、シェアリングエコノミーはどのような方向に発展していくとお考えですか。

現在、Eコマースの割合はまだ10%に満たない程度。リアル店舗と並存しながらも、ネットを介したモノやサービスの貸し借り、そしてそれを仲介するサービスの割合は、ある一定程度まで高まっていくと思います。
シェアリングエコノミーサービスで面白いと感じるのは、その合理性はもちろん、信頼関係なしに成立しえないという点です。インターネットが普及する前は、日本では匿名性の高いコミュニティが築かれていました。ですが、スマホの普及で実名を出すことのハードルが下がり、ネットを介したやりとりの信頼性が一気に高まっていったのです。

相手を信頼できるから、ネットを通じて仕事を依頼したり家を貸したりできますものね。

シェアリングエコノミーの発展においては、モノやサービスのつくり手に、きちんと還元され、より良いものを生み出し続けられる環境づくりが非常に大事だと思っています。エアークローゼットが重視するのも、つくり手が一生懸命つくった服が、出会うべくして出会ったという人のもとに届くこと。仕入れも、卸売りから一括ではなく、ファッションブランドと一社一社コミュニケーションをとってお取引をしているのは、つくり手のことを深く知り、つくり手に認めていただけるプラットフォームをめざしたいという思いがあるからです。

今後のビジョンをお聞かせください。

出会いの幅を広げるという意味では、アクセサリーなどの雑貨とのコラボレーションや、レディースだけでなくメンズやキッズ、マタニティ、シニアなどへの進出を考えています。

まずは、日本市場でしっかり足場を固めてからになりますが、将来的には海外展開をめざしています。服というモノのシェアだけではなく、日本のファッション文化自体も世界にシェアしたい。スタイリング提供システムを開発したのも、世界のどこにスタイリストがいてもスタイリングができる状態にしたいと考えたからです。
現時点ですでに、コペンハーゲン在住の日本人スタイリストが活躍しています。エアークローゼットの世界観とともに、ファッションの着こなしとトレンドを世界にシェアしていけたらと思います。

天沼 聰(あまぬま さとし)

エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO

ゴールドスミス・カレッジ(ロンドン大学)卒業後、2003年にアビームコンサルティングに入社。2011年楽天に転じてグローバルマネージャーを経験。2014年ノイエジーク(現エアークローゼット)を設立、2015年2月に国内初のファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」を開始。プロのスタイリストによるパーソナルスタイリングサービス提供事業を根幹に、その他ファッションレンタルショップ「airCloset×ABLE(エアークローゼットエイブル)」、パーソナルショッピングアプリ「pickss(ピックス)」を展開している。

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文責:松尾 美里 (2018/05/14)

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