丸亀製麺はなぜうどん業界でトップになれたのか?
ハワイでの大成功につながった常識破りの海外戦略に迫る

丸亀製麺はなぜうどん業界でトップになれたのか?

うどん業界でトップをひた走っている丸亀製麺。その成功の秘訣を明らかにしたのが、『丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?』 (祥伝社)です。

丸亀製麺を手掛けるのは、炭火焼鳥のとりどーるなど、国内で10以上もの業態をもつトリドールホールディングス。創業者の粟田貴也社長の秘書として、その成長を支えてきた著者の小野正誉さんに、ナンバー1ブランドになった「常識破りの戦略」について伺います。

丸亀製麺をうどん業界No1に押し上げた成功要因とは?

── トリドールホールディングスがうどん業界に参入した同時期にはなまるうどんさんが参入されていますし、他の老舗もすでに存在していました。そんな中、丸亀製麺は業界1位に躍り出て、その座を維持されています。うどん業界参入の背景について教えてください。

丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?
丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?
小野正誉
祥伝社
丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?
丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?
著者
小野正誉
出版社
祥伝社

讃岐の本場では、こぢんまりした製麺所が数多く存在します。そこで茹でたての麺が食べられると、瀬戸大橋の開通を機に、何度かうどんブームが起きました。値段は一杯100~200円と手ごろ。決して豪華なものではありません。けれども、全国からお客さんが押し寄せてズラリと行列ができている。この理由は何なんだろうと。

トリドールホールディングスの社長粟田も何度か現地に足を運ぶなか、お客様は「感動体験」を求めて足を運んでいるのでは、と気づいたといいます。お客様が絶えないのは、手づくりの臨場感を味わえるうえに、茹でたての麺がやみつきになるから。これを讃岐以外でも実現しようと、もともとあった焼き鳥のとりどーるに加え、新たに丸亀製麺を立ち上げることになったのです。


── 丸亀製麺の成功要因は何ですか。

結果論になりますが、これまで飲食業界で成長を遂げる際の王道とされていたチェーンオペレーション理論とは真逆をいったことかもしれません。
どんな業種でも「商売である以上、いかに高い売上を上げ、コストを削減するか」に注力し、しのぎを削っています。効率よく利益を上げるなら、セントラルキッチンでまとめてつくって、店舗では簡単な調理だけというオペレーションが一番。そのほうが少人数のスタッフで運営でき、人件費もおさえられますから。

それに対し、丸亀製麺は、讃岐うどんの製麺所の臨場感を再現するためには製麺機を置き店舗でうどん生地を作ることは譲れないと考えました。製麺機を各店舗に設置すれば、初期費用はもちろん、水道光熱費もかかる。また、うどんづくりもレジ打ちもスタッフが行いますので、人件費やトレーニング費用もかさみます。出店時には「こんな非効率な方法は上手くいくはずがない」と批判されたこともあったといいます。

もちろん利益を出すことは大事ですが、丸亀製麺にとって優先すべきは、讃岐の本場の製麺所を徹底的に再現し、あの感動体験をお客様に味わっていただくこと。そのためならあえて非効率を貫いてでも、人のぬくもりを感じられるお店をつくろう。そんな信念を貫いてきたことが他店との競争を回避させ、お客様の支持につながったのだと思います。

── ご著書では、「効率化すべきところはとことん効率化」とありました。たとえば国内売上No.1の羽田空港店では、店内のお客様の歩数が最小になるような動線にして、うまく行列を解消しています。このように「効率化できるところと非効率を貫くところ」の見極めが的確なのも、成功要因の1つではないかと。これが可能な理由は何でしょうか。

経営の意思決定において「ブレない」部分があるからでしょうか。よく、売上が低迷する
と、商品単価を上げたり、営業時間を長くしたり、サイドメニューを増やしたりと売り手側の発想で改善を図るケースがあります。もちろんよいことではあるのですが、中には顧客の視点からブレてしまうこともあります。トリドールホールディングスには、「すべては、お客様のよろこびのために。」という理念があり、すべてその理念がベースになっています。新たな方針を打ち出す際には、必ずこの理念に照らし合わせているのです。だから効率化すべきところかどうかも、お客様主体で判断できるのだと思います。


マニュアルは最小限。裁量が大きいと目の前の業務が「手仕事」になる

── 全国展開を急ピッチで進めながらも、その姿勢を維持できた秘訣は何ですか。

現場のパートナースタッフの皆さんがお客様の喜ぶ姿にダイレクトにふれているからだと思います。丸亀製麺では、各地域のことに詳しいパート・アルバイトの人たちをパートナースタッフと呼び、彼らに店を任せています。重視しているのは、パートナースタッフ一人一人の判断。お客様が喜ぶことなら、自分たちの裁量で実行できます。

これはマニュアルに従うより大変かもしれません。ですが、自分で工夫できる余地が大きければ大きいほど、目の前の仕事が「心の通った手仕事」になっていき、やりがいを感じられるのです。現在は、麺職人(※注1)の育成に力を入れており、麺職人をめざすべく技術を高めることがさらなるやりがいにつながっているパートナーさんもいます。

このように、現場での創意工夫の幅、モチベーションを高める機会が相まって、「ここは非効率でも貫くべき」という点を、常に現場で守れているのではないでしょうか。
(※注1)厳しいトレーニングを積み、丸亀製麵がめざすコシのあるおいしい麵を打つための技術を習得した製麵マスターのこと。

なぜ海外初店舗がハワイだったのか? 常識破りの海外戦略

── 海外1号店はハワイと伺いました。飲食店が初めて海外進出するとしたら、比較的近い中国や韓国などアジア諸国を選ぶのが主流なので、意外に感じました。

候補地の選定では、粟田の現地での直感が決め手だったと聞いています。ハワイの視察中にワイキキの中心部で、ある空き物件を見つけたとき、そこに繁盛する店の光景がありありと浮かんだそうです。もともとハワイは観光客の数が多く、現地での日本食が高かった。ここに丸亀製麺を出せばニーズはあると踏んだ。出店を即決し、そこから急ピッチで準備を進め、2011年4月にワイキキ店がオープンしました。

ワイキキ店は開店後すぐに、連日行列ができる人気店へ。これをきっかけに、各国に準備会社を設立し、いまでは台湾や東南アジア、ヨーロッパなど世界14の国と地域に213店舗展開するに至っています。(丸亀製麺のみ 2018年9月末現在)


まずは3店舗をオープン。めざすのは徹底的なローカライズ。

── ハワイを皮切りに海外展開で次々に成功をおさめている理由は何でしょうか。

1つは、「まずは3店舗出店する」 という考えがベースにあること。1店舗だけでは、立地の問題などもあり、その国で受け入れられるかどうかを判断しづらいからです。

これは非常に合理的な戦略であると思います。たとえば、もしセントラルキッチンが必要ならば、「ここに工場を建てたのだから、腹をくくって50店舗出そう」などと、最初から大きなリスクをとることになるかもしれません。
新規出店にかかる投資だけならそれほど大きくなく、もし結果が出なくても傷は大きくない。そして、そこで得た学びは他国での出店に活かせるノウハウにしていく。この戦略を複数の国で同時展開しています。

2つ目の成功要因は「徹底的なローカライズ」 です。たとえば、ハワイで好評なのは、天ぷらが200円ほどのリーズナブルな値段で食べられること。ワイキキ店では、定番にくわえてマッシュルームやアスパラガスの天ぷらなどを揃えており、調味料はチリペッパー、ケチャップを用意しています。うどんメニューも各国の趣向に合わせたものが用意されています。このように、徹底して現地の人に好まれるようなカスタマイズをしています。

── 国や地域ごとに味や食べ方が自由だと、ブランドイメージの毀損につながるという懸念はありませんか。

我々が商売をさせていただく海外において「日本食はこう」と押し付けるのは売り手側の勝手な発想だと思います。おいしいかどうかは現地のお客様が決めることですし、大事なのはお客様に日常的にご利用いただき、末永くご愛顧いただくこと。だから固定観念に縛られず、柔軟にその国に合わせていこうというのが丸亀製麺のスタンスです。

── お客様の喜びのために大事なところはブレずに、海外では徹底してローカライズするなど柔軟に――。そのバランスが素晴らしいと感じました。

本当にほしいものは何かとお客様に尋ねたとしても、それを口に出して教えてくれることはまずありません。真のニーズが目の前で形になったときに飛びつくものだと思います。ニーズをつかむには、常にアンテナを高く立てなくてはいけない。流行っている店にはどんどんふれ、そこから感じたことを自分たちの店舗に活かす必要があるのではと思います。

お客様の嗜好が多様化し、ビジネスを取り巻く環境の変化が激しいいま、「変化できる企業」だけが生き残る時代になったといっていいでしょう。
粟田がよくいうのは、「時代の変化よりも速く変化していこう」ということ。トリドールホールディングスでは丸亀製麺というブランドを大事に育てながらも、新たなフィールドを開拓していく予定です。競争相手は、外食店舗だけではありません。総菜やお弁当などを家庭で食べる中食需要を取り込んでいくなど、柔軟に対応していく必要があると思います。「食を主軸に」というのは変わらない。それでいて新しいライフスタイルを提案する企業へと進化を遂げていきたいと考えています。

丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?
丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?
小野正誉
祥伝社
丸亀製麺はなぜNo.1になれたのか?
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著者
小野正誉
出版社
祥伝社

小野 正誉(おの まさとも)

株式会社トリドールホールディングス 経営企画本部 社長秘書・IR担当。神戸大学経済学部卒業後、大手企業に就職するも1年で退社。その後、外食企業で店舗マネージャー、広報・PR担当、経営企画室長、取締役などを歴任。2011年より「丸亀製麺」を展開する株式会社トリドールホールディングスに勤務。転職してわずか3年で社長秘書に抜擢。入社後7年の間、国内外に1,500店舗以上を展開するグローバルカンパニーに至るまでの成長の軌跡を間近に体験する。著書に『メモで未来を変える技術』 (サンライズパブリッシング)。

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文責:松尾 美里 (2018/11/07)

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