なぜいまB.LEAGUEがおもしろいのか?
次世代のスポーツビジネスのかたちがここにある

なぜいまB.LEAGUEがおもしろいのか?

「B.LEAGUE」(日本の男子プロバスケットボールのトップリーグ)は2016年9月、日本で野球、サッカーに続く第3の団体競技プロスポーツとして始動しました。開幕戦ではスタンドを観客が埋め尽くし、2年間で年間入場者数50%増の250万人、リーグ売上10倍の50億円を達成。その勢いは3年目に入った現在も続いています。

なぜB.LEAGUEはここまで躍進することができたのでしょうか? このたび『稼ぐがすべて』(あさ出版)を上梓されたB.LEAGUE常務理事・事務局長の葦原一正さんに、お話を伺いました。

まずは稼がないと意味がない

── 『稼ぐがすべて』の出版はバスケットボール業界に限らず、スポーツ業界全体にとっても大きなインパクトを与えたように感じます。あらためて本書を執筆された動機をお聞かせください。

稼ぐがすべて
稼ぐがすべて
葦原一正
あさ出版
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稼ぐがすべて
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著者
葦原一正
出版社
あさ出版
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なんだか金の亡者みたいなタイトルですけど(笑)、『稼ぐがすべて』というのは、あくまで「稼ぐことからすべてがはじまる」っていう意味なんです。稼がないで、なにが社会貢献、世の普及、競技力の向上なのか。「普及さえすればいずれは稼げる」っていう考え方が、いままでのスポーツ業界が抱えていた一番の問題です。まずはビジネスモデルがないといけない。ちゃんとしたビジネスモデルがないのに、綺麗事を言っても意味がないんです。



B.LEAGUEを立ち上げるうえでは、ビジネスモデルの構築を徹底的に意識しました。そのおかげもあって、まだ始まって2年ちょっとですが、すでにアジアの中で一定の存在感を示しているリーグになっています。先日FIBAアジアチャンピオンズカップがバンコクでおこなわれたのですが、現地に行ったスタッフの報告だと、コート上のパフォーマンスとしても、ビジネスとしても、B.LEAGUEがすごく注目されているようです。ゆくゆくはB.LEAGUEをアジアの人たちが憧れるステージにしたいですね。

BREAK THE BOADERする組織でありつづけるために

── B.LEAGUEは「BREAK THE BOADER」をスローガンとして掲げています。そしてそのスローガン通りに、革新的な取り組みを次々と実現されています。逆に軌道に乗ってきたからこその障害は?

よく「バスケ関係者に抵抗勢力がいるんじゃないか」と聞かれるんですが、そういう意味での改革のやりにくさというよりも、むしろ自分たち自身に課題があると思っています。もっと自分たちから率先して、いろんな想いを発信していかなければならない。そうしないと周りも共鳴しません。

これまでのやり方をコピペする部分があってもいいんです。だけど常に新しいことをやっていく必要がある。すべてを新しくする必要はないけど、前例を壊しつづけることが重要です。組織としてもそういう社内的な空気、ドライバーをつくっていかなければなりません。

── 「新しいことに挑戦していく」ということの他に、B.LEAGUEとして大切にしている価値観はありますか。



やはり外から刺激を受けつづけるという姿勢ですね。最近意識しているのが、スポーツ業界以外の人たちと会うこと。やはり外部からの刺激がないと人は変わりません。

あと海外をもうちょっと見たほうがいいと思っていて、今年はB.LEAGUEとして海外出張費の予算を増やしました。外部から刺激を受けることは大事です。人間って結局、環境にとって形成される生き物なので。

── 海外でとくに注目されているところはありますか。

ビジネスっていう観点では、バスケにかかわらずアメリカですね。アメリカのスポーツ以外だと、最近おもしろかったのはカバディ。カバディの中継映像を見せてもらったんですけど、カメラワークがうまいから、すごくおもしろくて。結局は素材をどうやって扱うか次第だなと感じました。

極論を言えば、お客さんが入らなくても、いいコンテンツは強いんです。これからはマイナースポーツも勉強しなければと思っています。日本にいるとなかなかこういう発想が出てこない。

テクノロジーありきの話ではダメ

あと最近すごく気になっているのが、テクノロジーを駆使した新しいスポーツ。例えば、今度HADOをやりにいこうかなと思っています。これはAR(拡張現実)の技術を使って、ドッチボールみたいにかめはめ波を出して戦うんです。

── ARといえば、『稼ぐがすべて』もARに対応していますよね。 (注)ARを使って本書内の動画をすべて閲覧すると、B.LEAGUE FINAL 2018-19の観戦チケットプレゼントに応募できる。応募は2019年2月28日まで。

稼ぐがすべて
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著者
葦原一正
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とはいえ新しいテクノロジーならなんでも使えばいいという話でもなくて。私はテクノロジーありきの話が一番ダメだと捉えています。「こんな技術があるからこれやりましょう」とか、ニーズではなくシーズから考えてしまう人が多い。「世の中にこんなニーズがあるから、テクノロジーを使いましょう」っていう議論になかなかならないんです。

何事もニーズありきでやるべきことを話したほうがいいです。AIとかVRとかを見て、そこから「なにをやろう?」っていう発想になっちゃダメだと思っています。

全員がOKするような運営をしたらダメになる

── 『稼ぐがすべて』ではB.LEAGUEの強みとして、協会、リーグ、クラブの権益が統合されていることが挙げられます。全体最適や意思決定がしやすいなど数多くのメリットがあるとされていますが、逆にデメリットを感じたことはありますか。

おっしゃる通りで、やっぱり難しいところもあります。協会/リーグに機能を集約すると、クラブの現場がやりづらくなってしまう。やはりお客様と直接向き合っているのはクラブ側ですから。どこまで協会/リーグ側が力をもつのかは難しいところで、そのバランスはわからない。それこそ走りながら考えています。

── クラブと対立することもありますか?

最近はないですけどね。当然なにかを決めると、損する人と得する人に分かれるので、そこは難しいです。でも全員のOKをとるような運営にしたら、B.LEAGUEはダメになります。最大公約数になった瞬間、もうそれは正しくないんですよ。だから常に「べき論」ファースト。賛成と反対のどちらも出たとしても「べき論」でいく。それがリーグ運営の一番の生命線です。そこが崩れたら4流リーグになってしまう。


── 葦原さんからはB.LEAGUEをこれからどう発展させていきたいと思っていますか。

私はスポーツ業界に10年いるんですが、スポーツはやはりツールだと思っています。スポーツを通して、なにをやりたいのかが大事になってくる。

B.LEAGUEの年間売上が50億円いったときに、一度立ち止まってみたんです。稼ぐことでなにがしたいのか。語弊を恐れずに言うと、選手たちの年俸も、結果的に上がるのはいいんですけど、そのためだけに自分の人生を捧げたいわけではありません。世の中に少しでも役に立ちたいという想いがある。

お金を稼いで人に「かっこいい」っていわれる幸せと、他人に感謝されたり喜んでもらったりして「ありがとう」といわれる幸せの2つがあるとしたら、私は後者を選びたい。どちらも結局は自己満足なんですが、なんかそっちのほうがいい人そうじゃないですか(笑)

本では書かなかったんですが、僕はじつはお寺の息子なんですよ。小さい頃から「悪いことはするな」とか「人のためにやれ」とかよく言われてました。だからなのか、「世の中のためになにかしろ」といまも言われているような気がしていて。『稼ぐがすべて』というタイトルの印象からか、金の亡者みたいに思われてますけど……。

「夢をもて」という言葉ほど酷なものはない

── 生き方や志という点で、葦原さんに影響を与えた本はありますか?

アマゾン、インディオからの伝言
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南 研子
ほんの木
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アマゾン、インディオからの伝言
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著者
南 研子
出版社
ほんの木
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1冊を選ぶとしたら『アマゾン、インディオからの伝言』ですね。なんでこの本がすごいかっていうと、私はそもそも「夢」って言葉がそこまで好きじゃないんです。「夢がないとダメ」っていうのは、ある意味で正しいんですけど、「夢をもて」という言葉ほど、子どもにとって酷な言葉はありません。大人だって大したことをやってないのに、そこを差し置いて言うのはどうなのかなと。



この本に衝撃を受けたのは、アマゾンのインディオの文法では未来形や過去形がないらしいんです。日常をひたすら生きている。じゃあ彼ら彼女らの人生が充実していないかというと、めちゃくちゃ充実している。朝日新聞の「天声人語」でこの本のことを知ったんですが、そのときの天声人語の切り抜きは、いまもずっと手帳に入れて持ち歩きつづけています。大体20年ぐらいですかね。

── お守りみたいですね!

文字もなければ年齢も数えないから、みんないつまでも若々しい。泣く、笑うという感情表現はあるんですが、幸せとか不幸せというややこしい概念はない。過去形もないから、過去に悔むこともないし、後悔もない。すべては「いま」だからストレスも引きずらない。

引っ越すと大体のものを捨てるんですけど、この本だけはずっと書棚にあります。2~3回引っ越しても残っています。これからもきっと残りつづけるでしょう。


葦原さんがつねに持ち歩きつづけている『天声人語』の切り抜き

自分たちがスポーツ業界の「外圧」になる

── 最後になりますが、葦原さんはB.LEAGUEのさらなる発展はもちろんのこと、日本のスポーツ文化そのものの発展をめざしているように見受けられます。その原体験はどこにあるのでしょうか。

自分はずっと野球をやってきました。「じゃあなんでバスケやってるの」となるんですが、バスケは新しいリーグだから、新しいことがやりやすいんです。新しいモデルをつくって、それを成功させたときに、少しでも日本のスポーツ界に影響を与えられたら、という想いがあります。

内側から変えることには限界があります。海外のスポーツも、結局は外圧で変わっている。よく「メジャーリーグすごい」って言われますが、メジャーリーグが変わったきっかけもストライキです。全部そう。外側からしか、物事の本質って変わらないんです。

── B.LEAGUEがどんどん魅力的になって、「外圧」として変えていく?

「外圧」という言葉は適切ではないかもしれませんが、そういう意味でいうと、B.LEAGUEはまだまだ「外圧」になれていません。もっと結果を出していかなければならない。「10年で野球やサッカーを超えよう」といってるんですが、超えることは目的じゃなくてあくまで手段。とはいえ実績がなければ、なにをいっても意味がない。だからそこはやり抜きます。

B.LEAGUEが結果を出して、「日本のスポーツ業界のメカニズムはおかしい」という議論が起きれば、私のスポーツ人生はそれで十分です。せめてそこまではやっていきたいですね。


葦原 一正 (あしはら かずまさ)

公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボール(B.LEAGUE)常務理事・事務局長

公益財団法人日本バスケットボール協会(JBA)理事

一般社団法人ジャパン・バスケットボールリーグ(B3)理事

B.MARKETING株式会社取締役

1977年東京都生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科卒業。2003年、外資系戦略コンサルティング会社「アーサー・D・リトル(ジャパン)」入社。

2007年、プロ野球チーム「オリックス・バファローズ(正式名称:オリックス野球クラブ)」に入社。主に事業戦略立案、新ブランド戦略立案などを担当。パ・リーグ6球団共同出資会社「パシフィックリーグマーケティング」にてセールス&マーケティングディレクター兼務。

2012年、新規参入した「横浜DeNAベイスターズ」に入社。主に事業戦略立案、プロモーション関連などを担当。

2014年、「フィールドマネジメント」入社。

2015年、「公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」入社。男子プロバスケ新リーグB.LEAGUE立ち上げに参画。リーグの経営戦略立案、ビジョンの策定から、マーケティング、営業、広報…各部門の総括リーダーとして事務局の陣頭指揮にあたる。本書が初の著作。

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文責:石渡翔 (2018/12/27)

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