「朝1時間」のモーニングルーティンで人生が変わる!
朝活第一人者・池田千恵さんが語る「朝時間活用」の秘訣

「朝の時間を有意義に活用したい!」
そんなふうに思うフライヤー読者の方が多いためか、8月のフライヤー有料会員による月間ランキングでも1位に輝いた『「朝1時間」ですべてが変わるモーニングルーティン』(日本実業出版社)。
著者は、26年間にわたって朝活を続け、朝専用手帳をプロデュースするなど活躍してきた朝活第一人者です。ご著書では、朝1時間の「モーニングルーティン」を伝授してくださいました。
有意義な人生を送るために、朝の時間をどう活用すればよいのでしょうか? フライヤーの井手が池田さんにその秘訣を聞きました。
朝1時間の「モーニングルーティン」が注目されているワケ
井手:池田さんのご著書『「朝1時間」ですべてが変わるモーニングルーティン』は、フライヤー読者から非常に読まれていました。これは、「朝に何かをやった方がいいんだろうけど何やったらいいかわからない」という人が多いということですかね?池田:そうですね。そして、コロナで生活リズムやいつものパターンが崩れてしまい、悩まれている人が多いようです。在宅勤務だと割とダラダラしてしまうという人もいるでしょう。自分を律するためのルールがないと、人って、ついつい楽な方にいってしまいがちなんですね。そこに危機感を持って、本書を読んでくださった方も多いようですね。
井手:そんななか、朝の1時間で何をするべきかというのが、本書のテーマの1つですね。
池田:まずは、朝1時間を、前半30分と後半30分に分けて考えます。
前半30分で、1日のタスクの優先順位を決めます。今日は何をどこまでやるべきなのか、何に時間を投資するべきなのかを明確にする時間ですね。
つづいて後半30分は、将来への「種まき」の時間です。緊急じゃないけれど重要なことについて、30分でも時間を使うことで、素敵な未来に到達するまでの距離が縮まるのではないかなと思っています。こういった未来への投資の時間は、忙しさに追われているとなかなか取れないものです。そこを意識的に30分作りましょうという提案です。
井手:なるほど。朝の方がそうした時間をとりやすいということですか?池田:夜型の方も多いと思うので夜でももちろんいいんですが、経験上、朝の方が、頭がちゃんと働くんですよね。朝は前向きになれますし、脳科学的にも、網膜に早く光を浴びることでセロトニンが分泌されてプラスの考え方ができると言われています。
夜だと、「こんなことやっても無駄だ」などと後ろ向きな気持ちになってしまうことが多いと思います。これはなぜかというと、夜は脳の中に書き込みが多い状態で、キャパオーバーしているから。それでは生産的なことが考えづらいんです。ですが、寝ることでそれがリセットされるので、朝は頭の中で前日のことが整理された状態になり、前向きに思考できるようになるのです。
井手:しかも、この朝の習慣を、たまにやるのではなく「ルーティン化」しようというのが池田さんの提案ですね?池田:そうですね。大事なのは、迷いなく進めるということです。早起きしたくないときって、早起きをしなくていい理由をベッドで考えていませんか? 起きてからやることが決まっていないと、それにより挫折してしまいがち。ですが、朝やることを決めておけば、そういうことにはならないんです。
2週間ぐらい経てば習慣化も定着しますので、そうなればあとは淡々とやるのみです。



なぜ「種まき」を「モーニングルーティン」に組み込むのか?
井手:池田さんは朝起きてから、どういう流れでこのルーティンを行っていくのでしょうか?池田:私は基本的に朝4時に起きて化粧をし、朝ごはんを食べ、5時には会社に行くのが日課です。そして6時か6時半ぐらいにすぐに仕事に入れる状態を整えた段階でモーニングルーティンに入ります。そして7時台には仕事をスタートさせるという流れです。
ただし、現在4歳になる息子を育てているので、寝かしつけに時間がかかって朝4時に起きられなかったり、朝4時に起きても息子が一緒に起き出したりする場合もあります。その場合は息子が保育園に行く前の7時くらいまでは一緒に遊ぶようにして、そのあと朝8時〜9時の1時間をモーニングルーティンタイムにしています。
井手:タスク分けをしたらそのまま仕事に入った方が流れとしてはよさそうですが、タスク分けの後に「種まき」タイムを設けているのは、何かこだわりがあるのでしょうか?池田:それは、精神的に充実感を得るためです。自分が将来に向けて何も投資できていないという不安感や焦燥感に襲われるのは、今何も手をつけていないからなんです。将来のための行動が大事だと思っているけどついつい後回しにして、結局何もできていない――。それが自己否定につながってしまいます。
「種まき」は、よい人生を送るための取り組み。それを、朝のちょっとの時間でも進められたという気持ちになるだけで、一日の始まりがとても有意義なものになります。こうした大事な時間を朝のはじめにとれていることがポイントです。
これはバケツの石と水にたとえることができます。バケツに大きい石(大事なこと)を入れてから水を注ぐと、水があふれ出ることはありません。ですが、水が入っている状態で石を後から入れると、キャパオーバーで溢れてしまうんですね。だから、大きい石(=種まき)を最初にバケツに入れることが重要です。
井手:夜だとバケツの水がパンパンになってしまっていると。池田:そうなんです。忙しくてキャパオーバーになっている人は、大事なことを後回しにしたツケが回ってきている可能性があります。なので朝に種まきをすれば、「大事なことに手をつけられている自分はエライ!」と、自分を承認しやすくなるはずです。

タスクの「4色のボールペンで色分け」がもたらすメリットとは?
井手:実際にモーニングルーティンを取り入れている方々からは、どのような声が集まっていますか?池田:大事なことは何かという優先順位を明確にすることができたという声を、数多くいただいていますね。
ToDoリストって、何となく頭に浮かんだことをそのまま書き出すことが多くありませんか。モーニングルーティンでは、リストに列挙した内容それぞれの重要性や優先度を4色のボールペンで色分けして視覚化していきます。これによって、「やらなくてもいいことにどれだけ時間を使っていたかがわかった」、「物事の本質が見えてきた」という感想をもつ方が多くいらっしゃるようです。
井手:可視化することは重要ですよね。どうしてもGoogleカレンダーにスケジュールがキチキチに入ってパンクしそうになることもありますが、その対処方法としてとても効果的だと思いました。池田:タスクをこなすだけで精一杯だと、結局本質が見えなくなってしまいます。本当にこのタスクが必要なのか、と。だから、その優先度を色でグラデーションとして分けて、目に見えるようにするのがポイントです。
井手:たしかに、その視覚化の作業も夜には向いていない気がしますね。疲れたところで明日のタスクの整理をするのは難しいですから。
池田:もちろん、正直なところ、慣れるまでは面倒な作業ではあるんです。ただ、面倒なことを先にやっておいてしまえば、始業してからは優先順位の高いタスクから迷いなくささっとこなすだけになります。そうすることでスピーディーに仕事をこなせるんです。
井手:思い返せば朝は圧倒的にダラダラしている可能性が高いですよね。自分も朝7時に起きて、10時に始業するまで何をやれたかというとゴミ捨てぐらい(笑)。みんな「忙しい」と言いながら、朝の3時間はなぜムダに過ごしてしまうんでしょうか。
池田:同じダラダラするにしても、ダラダラすると決めてそうしているならよいことなんです。私も、息子が前日に早く寝てくれなかった翌日は、事前に二度寝すると決めて二度寝します。“戦略的二度寝”ですね(笑)。
“戦略的先送り”とか“戦略的ダラダラ”というのはあってもいいんです。ただ何の目的もなくダラダラして3時間経ってしまった、というのとは大違いですよね。
井手:池田さんのお話を伺っていると、『「朝1時間」ですべてが変わるモーニングルーティンは「早起き本」』ではなくて、「朝の時間の使い方を書いた本」なのだと気づかされました。池田:そうなんです、睡眠時間を削ることを推奨している本でもないですし。寝ることは本当に大事ですから。
朝型でも夜型でも、起きてからの時間の使い方を考えましょう、という提案なんです。朝は誰にでも毎日平等に訪れますから。
井手:それをお聞きすると、さらに前向きになれますね。若い頃は「自分はこれからどうなりたいのか」といったことを考える機会はありましたが、歳を重ねるごとに、そうした機会が減ってきているのかもしれませんね。未来への「種まき」をぜひやってみたいと思います!池田:自分の本当にやりたいことが会社以外にもあると思うんです。自分の将来をどうしたいのか、ゼロベースで考えられるいい機会だと思います。早起きに限らず取り入れられる秘訣をまとめましたので、本書を読んで、「これはいいな」と思うところから実践してみていただければ嬉しいです。


プロフィール:
池田千恵(いけだ ちえ)
朝イチ業務改革コンサルタント。二度の大学受験失敗を機に早起きに目覚め、半年の早朝勉強で慶應義塾大学総合政策学部に入学。外食ベンチャー企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て、2009年に『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』(マガジンハウス)を刊行。ベストセラーとなり、「朝活の第一人者」と呼ばれるようになる。夜型から朝型に変えた実体験と多くの人の早起き習慣化を指導した実績をもとに、2010年より朝専用手帳『朝活手帳』をプロデュース。10年連続で発売する人気手帳となる。「朝1時間」の業務改革による生産性向上、働き方改革のための手法を企業に指導しているほか、個人に向けてはキャリアに迷ったとき自分の将来を真面目に楽しく語り、学びたい人向けの朝活コミュニティ「朝キャリ」を主宰。2020年9月現在4歳となる男児を育てるワーキングマザー。
Twitter、Instagram @ikedachie