
「好きを仕事にしよう」 「強みを活かして働くのが大事」 正論だけど、こういわれてモヤモヤしたことはありませんか。やりたいことも強みも自分ではわからない。そもそも自信がない。そんな悩みを解決し、ゲームのように楽しく「強み」を見つけ、理想の未来のためのアクションプランをたてられるのが、『適職の地図』(かんき出版)です。
本書の著者であり、強み発掘コンサルタントの土谷愛さんに、「適職の地図」で理想の未来を叶える方法をお聞きします。
── 『適職の地図』はどんな方に向けて書かれた一冊ですか。
主に2種類の読者を想定していました。まずは、自分のやりたいことがわからない方。そして、転職や副業、起業などに興味があるけれど自分の強みがわからず、一歩を踏み出す自信をもてない方です。
この数年で副業やリモートワークが広がり、働き方も多様化してきました。また、SNSで影響力をもち広告収益を得るインフルエンサーもいるように、仕事の選択肢は確実に広がっています。
とはいえ、いざ自由に働き方を選べるといわれても、やりたいことや強みがわからない方はたくさんいます。それもそのはず、私たちは学生の頃に客観的な自己分析の方法を学ばずに、「なんとなく」進学先や就職先を決めてしまうことが多いからです。
そうしたなかで、「やりたいことがわからない」「挑戦するのが怖い」と不安を抱えている方がいます。かつての私自身もそうでした。「やりたいこと迷子」の大人が、大切にしたい価値観や強みに気づいて、一歩踏み出せるようにと願って、本書を執筆しました。



── 「やりたいこと迷子」の大人が多い理由は何だとお考えですか。
世の中で、「適職」や「やりたいこと」のハードルが高くなっているからではないかと思います。やりたいことというと、1つに絞って継続すべきとか、人に誇れるものでなければならないと思いがち。本来やりたいことは大きな夢だけでなくていいし、途中で変わってもかまわない。大きな夢にすべきだと自分を縛っていると、「やりたいこと探し」から抜け出せなくてなってしまいます。
やりたいことはもっとライトでいい。それを叶えていくなかで、自分への信頼がたまっていき、少しずつ大きな目標を描けるようになると思います。
『適職の地図』では、適職を「理想の人生を叶える仕事」、やりたいことを「理想の未来を実現するための手段」とだけ定義して、あとはなんでもOKとしています。
── 「適職クエスト」という7日間のゲームを通じて、やりたいこと、強み、適職を手にするためのプランが具体化されていきワクワクしました。このメソッドで特に大事にされたポイントは何ですか。
心がけたことは2つあります。1つは、読んで終わりにならずとにかく「楽しい自己分析」ができることです。7日間で地図を完成させていくゲーム形式にしたのも、ワークをたっぷり盛り込んだのも、楽しみながら実践してほしかったから。やりたいことが見えても、それを実現するまでのプランづくりは大変です。やりたいことを明確にするところから、日々のアクションに落とし込むところまでスモールステップで進められるようにしました。
2つめは、強みを細分化して再定義し、読者に「自分にも強みがある」と体感してもらえるようにしたことです。とくに「後天性の強み」については、「営業目標150%達成」のように高く評価された実績や、取得が難しい資格をイメージするかもしれません。ですが、強みを「やりたいことの達成に有利にはたらく特徴」ととらえると、日々の業務で積みあがっていく経験も十分強みになると実感できるでしょう。

── 土谷さんは、人見知りからトップセールスになり、いまは起業してお客様の強み発掘を支援されています。これまでを振り返って、土谷さんにとって一番「変化」の後押しになったものは何でしたか。
「本当の自己分析」で自分を正しく知ったことです。変化のきっかけは2つあり、1つは、売上ビリの営業社員だった頃のことです。当時プレゼンが上達せず悩んでいた私に対する同僚のささいな一言がきっかけで、「自分の強み」に気づく機会がありました。「君は喋るのはうまくないけど、人の話を聞くのはすごく上手だよね」という言葉でした。この一言をきっかけに、プレゼンの練習をするよりも、お客様の話をたくさん聞く営業スタイルに。みるみるうちに営業成績が伸びていきました。初めて社内で1位になったときの感動は今でも覚えています。
もう1つのきっかけは、27歳で会社員をやめて28歳で開業届を出したときでした。自分が成果を出しやすい条件を自問したら、一人でマイペースに働ける環境が性に合っていると気づきました。それならチームで進めていく会社組織にいるより、起業したほうがよいと決断できたんです。起業後はもちろん大変なこともありましたが、それでも今は、「人生でいちばん自分に合った働き方ができている」と日々実感しています。
このようなエピソードからも、自分の強みや価値観の自己理解があってこそ、自分で自分をもっと輝かせられるようになると確信しましたね。
── 『適職の地図』は就活、転職、副業、起業など、いろいろな選択肢で活かせますが、「いまの職場で得られる強み」に目を向けるきっかけも与えてくれます。「入社して2、3年が経ち仕事に慣れてきたが、成長実感をもちづらい」と悩む若手社員には、土谷さんならどんなアドバイスをされますか。
成長実感をもてないときは、過去の振り返りをしていないことが多いんです。たとえば社会人3年目なら、3年間でできるようになったこと、積み上げてきたものが必ずあります。ビジネスメールを送れるようになったとか、お客様との会話がスムーズにできるとか。
1年前の悩みを思い返すと「笑える失敗」ってありませんか。それって、今はその悩みを乗り越えるためのスキルがついている、つまり前に進めているということですよね。
── たしかに、それなら小さくても成長した経験が思い浮かびます。
会社にいると目先の目標に追われます。来期には新たな目標が掲げられ、達成したことがあってもリセットされてしまう。そのため、目標と現状との間に生まれたギャップに目が行きがちです。そんなときこそ、まずはこれまで乗り越えてきたことや達成したことを意識的に振り返ってみてください。たったそれだけでも成長実感が得られるはずです。

── 「適職クエスト」はチームのメンバーの強みを引き出すことにも活かせそうです。やりたいことによって何が強みになるかは変わりますが、「強みで成果を出すチーム」をつくるためには、どうするとよいでしょうか。
チームで達成すべき目標があるけれど、個人ではあまり本気になれないときってありますよね。それは、理想の未来がメンバーそれぞれでも、まずは今のチームで成果を出すことのメリットを腹落ちできていないからです。
私が会社員で営業部のマネージャーをしていたときも、カフェや帰り道などで、部下のメンバーの理想の未来を聞くようにしていました。会社の枠をとっぱらってどんな生活をしたいのかと。
たとえば「将来コピーライターになりたい」というメンバーに対しては、そのためにどんなスキルが必要になるかを尋ねてみる。すると、「人がモノを買いたくなるようなワーディングのスキルを身につけたい」という答えが。「じゃあ商談をたくさんこなして、どの言葉が効くのか試してみよう!」と声をかけると、メンバーは商談に積極的になり、自然とチームの成績も上がっていきます。
こんなふうに、個人の理想とチームの目標につながりが見いだせたら、あとは自発的に動いてくれる。上司や先輩の立場にある人は、部下や後輩に、理想の未来を尋ねてみるといいのではないでしょうか。「目の前の仕事の先に自分の理想の未来がある」と思えて初めて、前向きに自分の特徴を「強み」に変えて取り組めるようになると思います。
── 土谷さんご自身が「この本に出合って人生観が変わった!」という本は何ですか。
いまの自分に大きな影響を与えてきた一冊は『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)です。アドラー心理学を哲人と青年の対話形式で学べる大ベストセラーですが、とくに印象的だったのは「目的論」です。
「目的論」は、人は何らかの目的があって今の状況を作り出しているとする考え方です。私はこの本に出合うまで、今の自分がうまくいかないのは家庭環境や学生時代の恵まれなかった経験など、なんでも過去のせいにしていました。でも、目的論を知って、現状と過去には関係がないのだと衝撃を受けました。けれど逆に言えば、行動を変えていけばいつからでも自分を変えられる。このシンプルな考え方が私にとって希望になりました。
だからこそ、『適職の地図』も、「自分が行きたい理想の未来」を目的地に設定して、今ある自分の特徴をどのように活かしていくかを前向きに考えていけるような構成にこだわりました。
── 最後に、土谷さんの今後のビジョンを教えてください。
私自身がずっと「自信を持てない大人」で、それを抜け出した経験があるからこそ、世の中に「自信をもって生きる大人」を増やしたいと心底思っています。自己分析メソッドを講座や書籍、WEB記事などで発信し、強みの発掘を支援しているのもそのためです。
また、自信を持って生きる大人を増やすためには、子どもの頃からの教育が大事だと思っています。これからは子どもや子育て中の親世代に向けても、自己肯定感の向上や強み発掘につながる発信をしていきたいですね。


土谷愛(つちたに あい)
強み発掘コンサルタント。社会人向け自己分析講座「アドバンテージゲーム」主宰。
売上ビリの落ちこぼれ営業時代、ひょんなことから「自分の強み」を見つけて社内1位、最年少管理職に。広告業界で約600本の記事制作を担当し、多くの顧客や部下と接し「人の強みを見つける力」を磨く。
2018年、退職後に始めたブログで「強み発掘オタクがあなたの強み見つけます」という相談サービスを開始したところ、申し込みが殺到。「誰にでも輝く強みがある」という信念のもと、自己分析・強みの収益化・SNS発信などをテーマにオンライン講座を続々と開講。自分探しに迷う20〜30代の会社員や主婦が口コミで集まり、総受講者500名超、公式メルマガの読者は累計7000名を突破。
著書に『特別なスキルがなくてもできる 月収+10万円 こっそり副業術』(日本能率協会マネジメントセンター)。独自の強み発掘×収益化メソッドが話題となり、発売後半年で8刷、Amazonランキング7冠。フジテレビ「ノンストップ!」出演など、活躍の場を広げている。