【検証】アップルウォッチは「買い」か?
本から占うポスト・ジョブズ時代のアップル


米アップルの腕時計型のウェアラブル端末、アップルウォッチが2015年4月24日にいよいよ発売となる。
タブレット端末のときと同じように、発表直後は「スマートフォンがあるから要らない」などの声も聞かれたが、蓋をあけてみると予約が殺到。商品の出荷まで1カ月以上待たされる状況になっているという。
とは言え、現段階では流行りもの好きの一部のアップルマニアが購入しているのも事実。「一体どうやって使えばいいか分からない」「アップルも今回ばかりは成功できないのでは」という見方をする人も少なくない。
特にアップルウォッチはジョブズ亡きあとのアップルが市場に送り込む、まったく新しいデバイスだ。iPhoneやiPadとは異なり、すでに成功した製品のブラッシュアップではない点が、消費者に不安を抱かせている面もあるだろう。
果たして、ジョブズ亡きあとのアップルは、これからも世界を変えていけるのだろうか。
今回はこれまでアップルについて書かれた書籍の歴史を辿ることで、アップルウォッチの成否を占ってみたい。

アップル本の歴史を紐解く
まずご紹介したいのが、アップル社内を無制限で取材できた唯一のジャーナリストであり、世界的なベンチャーキャピタリストでもあるマイケル・モーリッツが著した、アップル本の「原点」であり「原典」。
アップルⅠ・Ⅱなど既にレガシーとなった製品の開発までを中心に描いているが、「世界を変えてやる」と意気込むジョブズのベンチャースピリットが表れており、アップル本のなかでも最も熱量が感じられる一冊。


ジョブズ本の登場
一度はアップルを追放されたジョブズだったが、同社の危機的状況を救うべく、1996年に復帰。その後、アップルはiMacやiPodのヒットによって驚異的な回復を見せ、ジョブズ個人の創造性やプレゼンテーションスキルなどに注目が集まった。
発明の天才と称されるジョブズはけっして聖人ではない。他人を完膚なきまでに罵倒するなど荒々しい一面も持つ。尖ったキャラクターを持つジョブズは、なんとマンガにもなっている。
ポスト・ジョブズ本
2011年にジョブズが膵臓がんで亡くなると、世界一のイノベーターを失ったアップルの将来を悲観する書籍が多数発表されるようになった。
かつては経営者同士も仲が良かったとされるグーグルとは、スマートフォン市場で争うようになってから関係が悪化。サムスンとの法廷闘争も続くなか、Android陣営の優勢を伝える本が増えていく。
実はアップル製品には日本企業が供給する部品がかなりの割合を占めている。日本企業にとってアップルと手を組むメリット、そしてリスクとは?


伝説的なジョブズのiPhone発表プレゼンを受け、グーグルのアンドロイド開発チームは打ちひしがれるも、そこからiPhoneに肩を並べるまでに成長。熾烈なドッグファイトが繰り広げられる。


アップルの現CEOティム・クックが「寝言だ」と名指しで批判したと言われる本書。しかし本書の細部にわたる調査や分析は現経営陣が陥っている苦境を白日の下に晒している。


本当に残したもの、組織・製品・デザイン
ジョブズ亡きあと、いくつかの本が指摘していたような失速の傾向は確かに見られたものの、相変わらず業績は好調で株価も最高値を更新している。ジョブズが残した遺産、アップルの組織としての優位性、という切り口の書籍が相次いで出版されるようになった。
なかでもアップルの天才デザイナー、ジョナサン・アイブはジョブズの精神を理解しているだけでなく、いまやジョブズよりも欠かせない重要人物としてますます注目が集まっている。






結論「アップルウォッチ」は期待を裏切らない

ジョブズの後を継いだ現アップルCEOのティム・クックは、ジョブズを超えられないのではないかと多くのメディアが疑問を投げかけている。元々管理畑の人間で、多くの人が彼は計数に強いこととゲイであることしか知らない。
しかし、デザインには素晴らしいデザイナー、アイブがいる。先の『ジョナサン・アイブ』を読めば分かるとおり、デザイン主導で生み出されたアップル製品は単なる電子機器を超えた芸術品であり、その開発を担う社内外の組織は十分に整備されている。ゆえに、今ではジョブズ後もアップルは世界を変える製品を産み出せるはず、という見方も強くなってきた。
アップルウォッチを手にした人がそのことを再証明してくれると期待したい。