まずは、日本を代表するSF作家・小松左京が1963年に発表した本作。冷戦がまだ「ホット」な時代を舞台に、ひりつくような各国間の「競争」のなかで生まれた未曾有のウイルスが、人類そのものを崩壊させていくさまを描きます。死の前には国家も、ヒトであることさえも無意味となる無常観。それでも、人間の理性やモラルへの信頼がかすかに残ります。
現代作家・高嶋哲夫氏は、今の私たちと「パラレルにあり得る」社会の姿を非常なリアリティをもって表現しています。新型インフルエンザを舞台としたノンフィクションであるかのような臨場感。強い既視感を覚える対策、止まらない感染拡大、生々しい人間感情。現実と交叉するかのようで、人びとがどこに連れて行かれるのか結末まで見逃せない作品です。
最後に紹介するのは、カミュによる不朽の名作。上記2つより静かな作品ながら、現代人の行動と対比しつつ読むと、70年経っても人間の本質は変わらないことがわかります。まさに不条理の世界ですが、危機とたたかう人びとの誠実さと、死の恐怖を忘却してでも明日を生き延びようとする人間の「したたかさ」に、未来への一歩が託されているように感じます。
これらに描かれた危機は、あくまでフィクションです。それを「現実はここまでひどくならない」と考えるか、「現実よりマシな世界だ」と捉えるか。いずれにせよ、あなたにとっての「現実」がより色濃く、鮮明に見えるようになるはず。要約をひとつの道しるべとしながら、ゆっくりと文学に浸ってみませんか。